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4章

【112】連休の予定

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「お姉ちゃんの眼鏡が完成したの」

 みんなでガイウス邸行った時から3ヶ月位たったかな。

「特別行事の準備に間に合って良かったわ」

 2年生は行事の設営等々で忙しくなるみたいで、伏せ目がちのままじゃ危ないし、怒られたりしないかってシェルシエルは心配してたみたい。
 因みに1年生はその間休みで、それが明日から。

「昨日の夜、寮で会ったけど似合ってて可愛かったよ」
「そうなだ。楽しみだね」

 みんなで教室出て、既に待っているだろう馬車に向かう。
 アルとリドーは大荷物。
 2人とも今日からカタスティマ・ジューイットに泊まり込むんだとか。

「アル君て別の所でも働いてるんでしょ?」
「うん」

 トーラ・カフェね。

「女将さんがお腹大きくなって大変だから休日手伝って貰ってるんだは」
「カフェは平日の夜だけだから」
「でもあたし達は休みだけど平日はどうするの?」
「夜はカフェに行くよ」
「凄い忙しくしてるのね」
「楽しいよ。カタスティマの女将さんがいっぱいスカートくれたんだ」

 そのスカートを代る代る着てカフェで働くのが嬉しいみたい。

「お待たせ」

 テルティアとラトリアが遅れて到着。
 ちゃんと前向いて歩いてくるラトリア、ハツラツとしてキラキラしてる様に見える。

「眼鏡似合ってるね」

 視界全体を網羅出来そうな大きな丸眼鏡。
 着ける人選びそうなヤツだけど、ラトリアは整った顔立ちだから違和感がない。
 寧ろキレのある美人さんだから丸みが出て可愛さが出てきてる。

「ありがとう、ルーシ君‥‥」

 物静かな性格までは変わらない。
 でもちゃんとルーシの顔見て微笑んでる。
 これはラトリア、モテ出すわね。きっと。

「ルーシ君て、凄く綺麗な顔してたんだね」

 初めて知ったみたいな言い草ね。
 魂みたいなのはピンボール位の大きさって言ってたかな。それなら眉間辺りが見えなかっただけだろうに。
 まぁ確かにルーシの顔は特段見ない様にしてた節はあったけども。

「そろそろ行きませんと遅くなってしまいますよ」

 今日のお迎えはエイミラット。
 彼女は子供達の雑談を遮って急かす。
 ハマールだと落ち着くまで待ってくれるんだけど、後に予定のあるリドーやアルには彼女みたいな方が有難いんじゃないかな。
 わざわざ送ってくれるのに早く行こうとは言い辛いものね。

「それじゃぁ、ラトリアはまた明日。皆は再来週ね」

 いつもより大きくてグレードの低い馬車に乗ってテルティア達は帰っていく。

「あたし達も帰りましょうか」

 いつもはアルも一緒だったから、この3人で帰るのは初めてね。

「シェルシエルは故郷に帰らないの?」
「そうね、お姉ちゃん1人だと心配だから帰るとしても一緒にかな」

 それだと準備期間から撤去期間までの7日間王都に居て、5日間しか帰省出来ないって事になる。
 でも、5日間は確実に予定があるって事よね。
 アタシとルーシは何しよう。
 ガイウス邸に行って稽古して貰おうかしら。
それならシェルシエルも誘おうかな。

「私なら1人でも大丈夫よ。1年の時も1人だったし」
「ミュー」
「ナナチャがラトリアは美人で可愛らしいから1人にならない方がいいって」
「あら、ありがとう」
「あら、あたしは?」
「ミュー」
「シェルシエルは大丈夫だって」
「なによそれ。じゃぁね」

 シェルシエルが頬を膨らませて挨拶もそこそこに先に行ってしまう。
 シェルシエルは軽口を叩ける娘なのに予想以上の反応ね。
傷付けちゃったかな。か、焼きもちか。
 どちらにしても稽古に誘えなかった。
 明日辺り、テルティアとラトリア伝いで誘って貰えばいっか。

「ナナチャが、可愛いから茶化しちゃったんだって。ごめんねって伝えておいて欲しいって」
「分かったわ、伝えておくね。 ‥‥後、ルーシ君」

 ラトリアが急に改まる。

「あのね、どうしてだかも、どうなってしまうのかも分からないのだけど‥‥」

 それにちょっとどもってるし、また伏せ目がちになっちゃってる。

「珠って普通、1人に1つしか見えないんだけど‥‥」

 珠ってラトリアが見えるって言う、魂の事かな?

「何故かルーシ君にはそれが何個も、沢山くっついたのが見えたの」
「どう言う事?」
「分からない。ナナチャちゃんのも2つがくっついて、ひょうたんみたいな形に成ってるの」

 何じゃそりゃ?
 良く分かんないんだけど、ラトリア自身も理解してない事だから深くは聞かなかった。
 ルーシの顔が見られなかったのはそれが異様過ぎた所為みたいね。

「ごめんね、不安にさせたい訳じゃないのだけど伝え無ないのも駄目かなって思ってたの」
「うん、あんまり気にしないね。ありがとう」

 ルーシの笑顔にラトリアも笑顔でなって、小さく手を振りながらシェルシエルの元に走って行った。



 ルーシの魂が何個もくっついてるって、もしかして666個だったりするのかな。
 アタシの2個くっついてるってのが、ウサギとドラゴンのキメラだからってのが関係してるならルーシの方は‥‥ って思ったのよね。

 そんな事考えながら帰ってたら、トーラ・カフェの側でアルと鉢合わせた。

「ジューイットさんのお家に荷物置かせて貰って来たの」

 今日は平日だから荷物置いたらカフェで働くって行ってた様な気がしなくもない。

「じゃぁ、一緒に行こ」

 最近は良く2人で帰る事が多い。
カフェの入口から入ってただいまして、アルが奥に着替えに行ってルーシは自分の部屋に帰る。
 今日もそんな感じになる予定だった。


「ルーシ君、お帰りなさいですう」

 そこに居て欲しくない2人組。

「知り合い?」
「うん」

 ナミルとコリティスだ。
 2人の事は好きだし、別の所で偶然再会するなら喜べるんだけど‥‥

 アルが、特にナミルの格好を見て不安そうにしてる。

「ルーシ、待ってたにゃ」

 やっぱり。
 ここに居るって事は用事があるからなのは、一瞬で理解出来る。

 みそぎ終了時の条件。
 たまに協力するからって事で延長を免れたって所もあるのよね。
 都合悪かったら断れるんだけど、そしたらどうせ心情悪くなるんでしょ?
 しかも連休で学園通ってるからって言い訳も出来ないし。それ狙って来たの?

「ボクの部屋に行こ」

 ナミルの格好は只の飲食店では目を引き過ぎる。
 それじゃ盗み聞きされかねないとルーシが気を効かせたんだけど、アルは「僕も入った事ない部屋にこんな卑猥な女を連れ込むの?」とでも言いたげな表情を向けてきてる。
 逆にセルヴィは事も無げに会計して、しれっと軽く会釈した。
 彼女達に面識があったか覚えてないけど、ナミルとコリティスの話はセルヴィに聞かせてたから、彼女の事だから察してくれたのかも。


「ここがルーシ君のお部屋ですかあ」
「ベッドに座ってもいいにゃ?」
「うん。いいよ」
「男の子の部屋って感じにゃね」
「そうですかあ?荷物多いけどちゃんと整理されてますよお」

 ルーシの部屋は元客室の中では1番広い。
 とは言っても1人客用の部屋なので大きな差があるわけでもないし整理はしてるけど、人の3倍荷物が多いので足の踏み場は少ない。

「セドリックとヴィオラの荷物預かってるから」
「‥‥それにしても、ルーシ背ぇ伸びたにゃね」

 この内容を広げても良い事ないと気付いたのか、ナミルが話題を変えてくれた。

「本当ですう。前は私と同じ位だったのにい」
「それは無いにゃ。前からコリティスが1番チビだったにゃ」

 コリティスも乗っかって2人で一瞬起きた暗い雰囲気を払拭してくれる。有難い。
 でも、そろそろ断捨離しなくちゃかな。
 セドリックもヴィオラも帰って来ないんだし‥‥
 ちょっと話題にし辛いんだけどね。

「最近凄く背が伸びてるんだ」

 アルのスキルジュースのお陰もあると思う。
 成長期だから飲まなくてもそこそこは伸びるだろうけど、ルーシもカシウスも急激に伸びたのはスキルジュースの効果なんじゃないかな。
 元は水らしいんだけど、少し黄色くて酸味があるとか。レモン水みたいな感じ?
 アルはいつも持参して来てくれるからどう作ってるのかは見た事ないし、教えてもくれないのよね。

 その後もなんだかんだ久しぶりなので談笑しちゃってるけど、2人の用件は何かしら。
 このまま雑談だけで夜がふけてしまいそう。
 そうなったらアルが有らぬ疑いを持って仕舞いそうだわ。

「2人は今日は何しに来たの?」

 ルーシがアタシの思いをくんで切り出してくれる。

「あのお、ルーシ君に今回の業務に加わって貰いたくてえ」

 そうでしょうよ。

「どんな事するの?」
「詳細は了承して貰えないと話せないんですよお」
「遠めの場所に急ぎで着きたくて、期間は1週間ちょっとだと思うにゃ」

 守秘義務みたいなのがあるんだろうから仕方ないけど、ふわっとしてるわねぇ。
 要はアタシが必要って事よね。
 期間もだいたいだろうけど休みの間で済みそうね。

「早ければ早いだけ良くって、出来れば今からが良いのにゃ」

 滅茶苦茶急じゃないの。

「でも、ガイウスさんに言わないといけないし」

 ガイウスさんはルーシの後見人だし、休暇中に泊まりに来ると思ってるだろうから流石に何も言わずには出られない。

「それなら教会から使い出させるから大丈夫にゃ」

 何でそんなに急いでるかは今の段階では教えてくれないんだろうなぁ。
 しかも急いでるのに断ったらメチャクチャ心情悪そう。
 この娘達が悪い訳じゃないんだけど、ちょっとムカつく。

「ならいいよ」

 ルーシは素直に了承する。
 たぶんそれが正解。アタシだったらごねまくったと思う。

「良かった。そしたら早速出発にゃ。」
「その前に着替えさせて」
「そうですよねえ、外で待ってますねえ」


 ルーシは着替え終えると1度カフェへ立ち寄る。

「セルヴィ、これから出掛けて来る」
「‥‥そう。行ってらっしゃい」

 セルヴィはやっぱり分かってるみたいね。

「え、ルーシ君出掛けちゃうの?」
「うん」
「さっきの人達と?」

 アルは何も知らないから物凄く心配そうに駆け寄って来た。

「直ぐ帰って来る?」
「1週間ちょっとって言ってた」
「そんなに!?」
「アルちゃん、ルーシ君はお仕事行くのだからそれくらいにしてね」
「‥‥はい」
「私達も仕事しなくちゃ。ルーシ君、気を付けてね」
「うん。行ってきます」

 外に出ると馬の無い馬車にナミル達が乗って待っている。

「さぁ、出発にゃ」

 最初っからアタシに引かせるつもりだったって事?

「もう1人居たんですけど、その方に馬を譲って教会に連絡しに行って貰いましたあ」

 なるほど、そう言う事ね。
 それならブーブー言って無いで馬になろうかな。

 ルーシがアタシに振れると、スッと視線がが高くなる。
 視界も広がって300度近くて自分の身体が馬に変身したのが分かる。
 この感覚、久しぶりだからちょっと変な気分。

「それじゃぁ、気を取り直して出発にゃ。北東から出て北に向かってにゃ」

 ベネルかロル方向か。
 立ち止まってても仕方ないし、移動しながら詳しい内容聞きましょっと。
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