112 / 120
4章
【111】
しおりを挟む次の週の休日にはまたラトリアがガイウス邸に呼ばれて、シェルシエルと一緒に向かったみたい。
レンズを色々用意して試して見るみたいね。
ルーシ、カシウス、リドーにアルはハマールお供でカタスティマ・ジューイットへ。
「緊張するなぁ」
リドーは終始そわそわ。
「大丈夫だよ。ジューイットさんはおらにも親切な方達だから」
手綱を引きながらハマールが言う。
今日の馬車は帆っ被りの庶民的なヤツなので操縦席との会話も容易。
ハマールは子供受けが良い。
ポッチャリおじさんで目付きも優しいし、厳しい事言わないからね。
相変わらず、その点でエイミーに怒られてるみたいだけど。
「着いただ」
店の脇に馬車を止める。
店の外観には思ったより反応しないリドー。
「前までは何度か来た事あるから」
なるほど。
「入った途端弟子にしてくれとか叫ばないでくれよ?」
「いわねぇよ。ってか喋れる気がしねぇ」
こんなにも緊張してるの見ると、助力してあげたくなって来るわね。
「手、握っててあげようか?」
アルも同じ様に思ったのか、そう言うとリドーの顔が赤くなる。
「いいし!必要ねぇは。 ‥‥でも、いざって時は頼む‥‥」
「うん!」
だいぶ弱気になってる彼には、きつ目の口調で断っても笑顔なアルが心強く見てたのかもしれないわね。
「いらっしゃいませ」
いつもの様にラプシモが店番をしている。
店を構えてはいるが、基本貴族や軍の受注がメインだから偶発的に来店する客は少ない。
なのでラプシモも作業している事が多く、今もカウンターで何やら縫い物をしていた。
「あら、お久しぶりです」
ホントいつぶりだろう。
カシウスと来るのは2度目だけど、その後2人とも何度かは来ているはず。
「ロンギリオンの具合はどうですか?」
「とてもいいよ。毎日触ってるからとっくに体の一部みたいだ」
「それはさぞ先祖も喜んでると思います。今日はどう言ったご用件で?」
「それは‥‥」
「俺が鍛冶師目指してるから連れて来てくれたんです」
一瞬カシウスがリドーを見ると、意を決した様に自ら話出す。
何気にアルがリドーの手をそっと触れている。
「あらあら、それはそれは」
「作品を見て回ってもいいですか?」
「ええ、勿論」
「ありがとうございます!」
リドーが商品を見て回るのにアルが着いていく。
「お友達ですか?」
「ああ。学園で同じクラスなんだ」
「なら由緒ある家柄のご子息様なんですね」
「いや、どうだろう。聞いた事ないな」
ラプシモが首を傾げる。
「ボク達bクラスだから貴族とかじゃないはずだよ」
「そうなんですね」
貴族がbクラスなんて珍しいはずなのにラプシモはビックリしない。
ガイウスさんなら子供を一般クラスに入れるとか、あり得ると思ったのかな。
「お二人の品はお見せになって無いのですか?」
「見せたよ。ロンギリオンもディアボロスも、とても感動していた様だった」
「なら、ウチに並べてる品なんて見劣りしてしまうんじゃないかしら」
「そんな事ないだろ」
「そうだ。良い腕だってロジバールさんも誉めてるだよ」
「ありがとうございます。でも見栄えする様な品ではないと思いますよ」
確かにルーシ達の得物の様な目立つ一点物とかは置いて無いけど、どれも良い品な気はするわ。
「見栄えは関係ないんじゃないかな。あいつが見て、弟子に成りたいって思うか判断すると思うよ」
「そう言う事ですか‥‥ ちょっと外しますね」
ラプシモが奥に引っ込む。
ってかサンペリエ家は仲介しないって約束なのに。
口が滑ったって感じじゃないはね。仲介したって程でもないっちゃないけど。
気持ちは分かるから、最悪ハマールを脅して口止めしましょ。
「いらっしゃい」
シディも一緒に戻ってきた。
彼は挨拶も早々にリドーのもとへ向かうと、品の説明でもしてるのかな、リドーが手に取った物を見ながら2人で喋ってる。
「シディさんと話が合うみたい」
アルは詳しくないし、蚊帳の外になっちゃうからって気を効かせて戻ってきた。
「シディはあんな見た目だから怖がられちゃうんだけど、面倒見の良い奴なんですよ」
「リドーも柄悪いけど、真面目な奴だよ。意外と素直だし」
「カシウス様は友達として言うってるだけで、当家が関わってる訳じゃないだ。だからサンペリエ家に配慮なんてしないで判断して欲しいだす」
ハマールのフォロー。
いつもボケボケのくせにこう言う時は頼りになる男。
エイミーにも分かって貰いたいものだわ。
リドーとシディが戻って来るとアルがまたリドーの側に寄る。
「あの‥‥ 俺、鍛冶師に成りたくて、今見せて貰って‥‥ やっぱりジューイットさんはスゲェなって思って‥‥ そう思える人の弟子に成りたくて‥‥ だから‥‥ 俺を弟子にして下さい」
精一杯さか伝わるセリフだった。
誠実さも伝わったと思う。
ラプシモとシディは顔を合わせ、ラプシモが頷く。
「任せるわ」って言っている様に見えた。
「すまない、さっきは一緒に見て回りながら審査させて貰ったんだ」
「え?」
リドーの何処を審査したんだろう。
彼もそう言う反応だ。
「品を見る時の着眼点は悪くないし、良い目をしていると思う」
お、好評価じゃない。
「人柄は彼らの存在で保証されていると思って良いだろう」
アタシ達が着いて来て正解ね。
「ただ、こちらの事情で住み込ませる事は出来ないし、ろくな手当も出せないんだ」
「そんなの当てにしてないです。住む所だって自分で探します!」
もし弟子になったら学園は退学する?
そしたら寮も出る事に成っちゃうわよね。
住み込みじゃなくて給料も貰えないんじゃ暮すのも儘ならないでしょう。
「それは良くない。学園はちゃんと通っておいた方が良い」
「私もシディも卒業してるのよ。特別行事で成果を見せるのって王都ではとても重要なの」
特別行事は3年生がやる、体育祭と文化祭が合体した様な行事。
体育会系はトーナメントやったり、文系は研究やら製作物を展示したりするのを一般開放する就職活動の一環ね。
たぶんシディ達はそこで作品展示して先祖の七光りだけじゃないって事を見せ付けたんでしょう。
「3年に成った時、製作の手助けするから今は店番手伝ってくれないか?」
ん、これはOKすれば弟子への第一歩を踏み出せるって事じゃないか?
「勿論!」
リドーは即答だ。
「ただ、休日は終日だし、出来れば平日の夜もお願いしたいのだけど‥‥」
ラプシモがお腹を擦りながら言う。
「実はね、私、身重なの」
なんと!それはおめでたいわ。
みんな口々におめでとうと伝える。
「ありがとうございます。シディも私も注文受けてるから正直店番がしんどくて」
「分かりました。平日も夜とは言わず手伝いに来ます!」
「それはダメよ、退学になってしまうわ。学業に支障ない程度でいいから」
「なら授業が終わったら直ぐに駆け付けます」
お店は結構夜遅くまでやっているらしい。
「それって門限大丈夫なのか?」
寮の門限て授業終わってから2時間位って言ってたかな。
「バイトならちゃんと届出出せば大丈夫なはずだは」
「うん。僕もそう教わってるよ」
なら大丈夫か。
早速明日から始めるで話が纏まり、アタシ達は店を出る。
リドーは深々と頭を下げながら扉を閉める。
「いやぁ、マジ嬉しい」
「リドー君良かったね」
「ああ。アル、みんなもありがとな」
リドー、達成感を加味してますって顔してるけど、まだまだ序の口よ。
「腹減ったな。どっかでご飯にしないか?」
「ならボクの住んでる所で食べようよ!」
「そう言えば、ルーシの所で飯食う約束してたな」
「そんな約束してたのか?」
「うん。寮は無理だし、カシウス君のお家も無理だと思ってたからルーシ君のお家しか集まれないかもって話した事あったんだよ」
「そうなんだ。ルー兄の家って近くまでしか行った事無かったな。オレもトーラさんの料理食べてみたいや」
「うん!美味しいよ」
「それじゃぁ決まりだな。ハマール、連れていってくれるか?」
「承知しましただ」
トーラカフェは昼の営業時間中場を過ぎていて落ち着いている。
忙しい時間にお邪魔しないで済んで良かったわ。
「いらっしゃいませ、あ、ルーシ君お帰り」
「あ、可愛い!」
アルはカフェの制服見て目を輝かせてる。
彼って給仕服がお好きな様ね。
トーラスカフェの制服は白のコックシャツに紺と白のストライプのエプロンとスカーフ。
紺のベレー帽みたいなの被って、ボトムは自由だけどだいたいみんな紺系統を着ている。
特出した衣装じゃないけど、セルヴィの少しヒラヒラするスカートと合わせてるのは確かに可愛く見える。
「ルーシ君のお友達?」
「はい、同級生です。ここのご飯が美味しいってルーシ君が言ってたから連れて来て貰いました」
「嬉しい、ありがとう。好きな席に座ってね。お母ぁさん!」
セルヴィが厨房に引っ込み、戻って来るとチェイオさんも一緒だった。
「ルーシの友達だって?あまり料理は残って無いけど、ゆっくりしていって頂戴」
チェリオさんはそう言うと直ぐに厨房に戻る。
元々昼はメニューが少ない上に時間的に既に売り切れている物ばかりで、選ぶとかなく料理が運ばれて来た。
いい感じに煮詰まったポークシチューと、耳を落としたバケットにベーコンとスクランブルエッグを挟んだサンドイッチ。
それに余ったパンの耳で作られたラスクだ。
「余り物でごめんなさいね」
「そんな事無いです。とても美味しいです」
「ありがとう。サンドイッチとラスクはルーシ君の提案で作る様に成ったのよ」
「カシウスの家のサンドイッチをまねしたんだ」
「ウチの?」
耳を落としてる所ね。
コスト的にサンペリエ家と同じパンとは行かないけど、他ではしない手間を加えてる。
「このお菓子旨いな」
「それはパンの耳が勿体ないからってナナチャが考えたんだよ」
アタシは提案しただけなんだけどね。
「旨いからウチでも作って貰おうかな」
「セルヴィ、カシウスにレシピ教えてもいい?」
「ええ、勿論よ」
「ってか料理まで考えるとかナナチャって何モンだ?」
「ナナチャは賢いんだよ」
「ああ。ナナチャは確かに賢い」
ルーシとカシウスが賢いだけで凌ごうとする。
「‥‥まぁ、確かに賢いわな」
凌げた。
他人の従魔には干渉しないって風習、連れてるペットに感心を持ちすぎない程度の物かと思ってたけど、結構助けられてる気がする。
カフェの営業時間が過ぎてしまったが、チェリオさんのご厚意で居させて貰えてる。
と言うか、トーラ親子も加わってる。
ルーシが友達連れてくるの初めてだから歓迎してくれて、自家製ポテチも出してくれた。
「ルーシから話は聞いてたから初めて会う気がしないねぇ」
とチェリオさん。
ルーシは皆の事を良くここで話してた。
カシウスにもトーラ親子の話はした事あったかな。
カシウスに対してタメ口効いてるのは彼の希望ね。
「あの、その服可愛いですね」
アルがチェリオに言う。
彼女はセルヴィと同じ制服のボトムがズボンで、失礼ながら容姿的にも可愛いって感じじゃない。
アルはアタシと違うモノの見方をする子なんだろう。
「アルってそう言う服好きなのな」
「うん。可愛い服着れる仕事したいかも」
「ならウチで働いたらどうだい?」
「いいんですか?」
「卒業する頃、まだ興味があったらおいでなさいな」
「はい!」
アルにも取り敢えずの目標が出来たのかな。
その後、平日の授業が終わるとリドーはカシウス達の馬車に乗せて貰ってカタスティマ・ジューイットに向かい、休日は徒歩で通ってるみたい。
ラトリアとシェルシエルはレンズの試作が出来ると平日休日関わらずガイウス邸に行ってる。
ガイウスさんが逆に魔素が見えるレンズも作れるんじゃないかって前のめりに成ってるらしい。
今日はそんなんで皆、馬車で行ってしまったので正門までルーシとアルだけになってしまった。
「みんな忙しそうだね」
ちょっと寂しい気もするわね。
「僕もバイトしようかな」
「トーラ・カフェで?」
「そうだね。折角誘って頂いたんだし、出来たらいいな」
「じゃぁボク、帰ったら聞いて見るよ」
「ありがとう。ボクも寮に申請してみる」
2人は正門でバイバイして足早に帰路に着いた。
0
お気に入りに追加
22
あなたにおすすめの小説

ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~
にくなまず
ファンタジー
今年から冒険者生活を開始した主人公で【ソロ】と言う適正のノア(15才)。
その適正の為、戦闘・日々の行動を基本的に1人で行わなければなりません。
そこで元上級冒険者の両親と猛特訓を行い、チート級の戦闘力と数々のスキルを持つ事になります。
『悠々自適にぶらり旅』
を目指す″つもり″の彼でしたが、開始早々から波乱に満ちた冒険者生活が待っていました。

ダンジョンマスターはフェンリルくんとのスローライフをご希望です
ゆるり
ファンタジー
リュウセイは死んだと思った次の瞬間、神と名乗る人物に究極の選択を迫られ、ダンジョンマスターとして転生することになった。
ダンジョンマスターは一体の特別な魔物を相棒とする。だが、それは自分の意志では選べないらしい。
もふもふ好きのリュウセイが、癒やしになる相棒が生まれることを望んだ結果——なんと強い魔物の代表格であるフェンリルが誕生した!
リルと名付けたフェンリルに慕われることに喜びを感じ、リュウセイはこの幸せを保つために、ダンジョンを強くしていこうと決意したのだが——
「え、リル、凄すぎるだろ……」
『マスターのためにがんばっただけだよー』
リュウセイががんばらなくても、仲間たちが強すぎるから問題ない!?
だが、リルたちはほのぼのとした雰囲気で何気なく騒動を巻き起こし——
リルたちに振り回され、リュウセイは笑いに満ちた波乱万丈を楽しんでいく。
——きっとこれもスローライフの一種になるはず! ……だよな?
******
基本はダンジョンマスター視点。
時々フェンリルのリルくん視点で展開していきます。
リルくん視点はタイトルに『リルくん』を付けます。
カクヨム様で先行公開しております。

転売屋(テンバイヤー)は相場スキルで財を成す
エルリア
ファンタジー
【祝!第17回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞!】
転売屋(テンバイヤー)が異世界に飛ばされたらチートスキルを手にしていた!
元の世界では疎まれていても、こっちの世界なら問題なし。
相場スキルを駆使して目指せ夢のマイショップ!
ふとしたことで異世界に飛ばされた中年が、青年となってお金儲けに走ります。
お金は全てを解決する、それはどの世界においても同じ事。
金金金の主人公が、授かった相場スキルで私利私欲の為に稼ぎまくります。
結婚しても別居して私は楽しくくらしたいので、どうぞ好きな女性を作ってください
シンさん
ファンタジー
サナス伯爵の娘、ニーナは隣国のアルデーテ王国の王太子との婚約が決まる。
国に行ったはいいけど、王都から程遠い別邸に放置され、1度も会いに来る事はない。
溺愛する女性がいるとの噂も!
それって最高!好きでもない男の子供をつくらなくていいかもしれないし。
それに私は、最初から別居して楽しく暮らしたかったんだから!
そんな別居願望たっぷりの伯爵令嬢と王子の恋愛ストーリー
最後まで書きあがっていますので、随時更新します。
表紙はエブリスタでBeeさんに描いて頂きました!綺麗なイラストが沢山ございます。リンク貼らせていただきました。

乙女ゲームの悪役令嬢に転生したけど何もしなかったらヒロインがイジメを自演し始めたのでお望み通りにしてあげました。魔法で(°∀°)
ラララキヲ
ファンタジー
乙女ゲームのラスボスになって死ぬ悪役令嬢に転生したけれど、中身が転生者な時点で既に乙女ゲームは破綻していると思うの。だからわたくしはわたくしのままに生きるわ。
……それなのにヒロインさんがイジメを自演し始めた。ゲームのストーリーを展開したいと言う事はヒロインさんはわたくしが死ぬ事をお望みね?なら、わたくしも戦いますわ。
でも、わたくしも暇じゃないので魔法でね。
ヒロイン「私はホラー映画の主人公か?!」
『見えない何か』に襲われるヒロインは────
※作中『イジメ』という表現が出てきますがこの作品はイジメを肯定するものではありません※
※作中、『イジメ』は、していません。生死をかけた戦いです※
◇テンプレ乙女ゲーム舞台転生。
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げてます。

獅子姫の婿殿
七辻ゆゆ
ファンタジー
ドラゴンのいる辺境グランノットに、王と踊り子の間に生まれた王子リエレは婿としてやってきた。
歓迎されるはずもないと思っていたが、獅子姫ヴェネッダは大変に好意的、素直、あけっぴろげ、それはそれで思惑のあるリエレは困ってしまう。
「初めまして、婿殿。……うん? いや、ちょっと待って。話には聞いていたがとんでもなく美形だな」
「……お初にお目にかかる」
唖然としていたリエレがどうにか挨拶すると、彼女は大きく口を開いて笑った。
「皆、見てくれ! 私の夫はなんと美しいのだろう!」

スキル喰らい(スキルイーター)がヤバすぎた 他人のスキルを食らって底辺から最強に駆け上がる
けんたん
ファンタジー
レイ・ユーグナイト 貴族の三男で産まれたおれは、12の成人の儀を受けたら家を出ないと行けなかった だが俺には誰にも言ってない秘密があった 前世の記憶があることだ
俺は10才になったら現代知識と貴族の子供が受ける継承の義で受け継ぐであろうスキルでスローライフの夢をみる
だが本来受け継ぐであろう親のスキルを何一つ受け継ぐことなく能無しとされひどい扱いを受けることになる だが実はスキルは受け継がなかったが俺にだけ見えるユニークスキル スキル喰らいで俺は密かに強くなり 俺に対してひどい扱いをしたやつを見返すことを心に誓った
本当の仲間ではないと勇者パーティから追放されたので、銀髪ケモミミ美少女と異世界でスローライフします。
なつめ猫
ファンタジー
田中一馬は、40歳のIT会社の社員として働いていた。
しかし、異世界ガルドランドに魔王を倒す勇者として召喚されてしまい容姿が17歳まで若返ってしまう。
探しにきた兵士に連れられ王城で、同郷の人間とパーティを組むことになる。
だが【勇者】の称号を持っていなかった一馬は、お荷物扱いにされてしまう。
――ただアイテムボックスのスキルを持っていた事もあり勇者パーティの荷物持ちでパーティに参加することになるが……。
Sランク冒険者となった事で、田中一馬は仲間に殺されかける。
Sランク冒険者に与えられるアイテムボックスの袋。
それを手に入れるまで田中一馬は利用されていたのだった。
失意の内に意識を失った一馬の脳裏に
――チュートリアルが完了しました。
と、いうシステムメッセージが流れる。
それは、田中一馬が40歳まで独身のまま人生の半分を注ぎこんで鍛え上げたアルドガルド・オンラインの最強セーブデータを手に入れた瞬間であった!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる