108 / 120
4章
【107】
しおりを挟む「僕、急いでるから」
スフインは挨拶もそこそこに教室を出て行く。
たぶん今までノーパンだろうから気持ち悪いんでしょう。
「あいつ、家遠いのかな」
「いや、俺もスフインも寮だからすぐそこだよ」
3人が教室を出るとアルが待っていた。
「みんなは通い?」
「オレとルー兄はそうだよ」
「俺は寮だ」
「僕も寮だから、リドー君一緒に帰ろっ」
玄関まではカシウスも、正門まではルーシも一緒だけどね。
「寮って何処にあるの?」
「裏門出て直ぐの所だよ」
「なのに正門から下校するのか?」
「裏門は生徒は通行禁止だからな。だりぃけど遠回りしなきゃなんないんだは」
「でも、友達と登下校する時間が出来るから僕は楽しいな」
「‥‥まぁそうだな」
下校時間は全学年一緒だから混雑していて、馬車も順番待ちかな。
家紋付の馬車が優先みたいで家紋無しの馬車の前に割り込んだりしてる。
カシウスのお迎えは家紋無しだから待つか、探しに行くかだけど、テルティアがまだ来てないから取り敢えず待ちね。
「カシウス君は馬車なの?」
アルが驚いている。
そっか、クラス違うからまだ知らないんだっけ。
「こいつ、こんなで王族らしいぜ」
「こんなって何だよ」
「悪い悪い。でも、俺的には誉め言葉だは」
リドーの口調はなんだかジークリットさんに似ているなぁ。
「ルーシ君も御貴族様なののですか?」
「ボクは違うよ」
「貴族だろうがクラスメートだし、同級生なんだから改まった喋り方すんなよ」
リドーが言うなしとも思ったけどカシウスも頷いてるし、逆に彼が言ってくれた方が受け入れ易いかも。
「姉さん待たなきゃだから先に帰っていいぞ」
「ううん、僕達も待ってるよ。リドー君いいでしょ?」
「ああ。折角だしな」
「おやおや、姉に続いて弟まで一般クラスとは、いよいよ破門されたのか?」
嫌みったらしい言葉が投げ掛けられる。
聞き覚えの無い声ね。
振り替えるとニヤニヤした少年と少女が居た。
傍らには大型犬位の大きさの飛竜。
ワイバーンて奴かな。陸上は不慣れなのか拙い動きで歩いてる。
「なんだお前らは!」
リドーが凄む。
「下民の下級生が口を慎め!」
リドーは体育会系なのか、先輩と聞いて口を紡ぐ。
でも、歯を食い縛ってる音がアタシには聞こえた。
「オレの友達に偉そうな口聞くなよ」
今度はカシウスが凄む。
「平民が友達なんて、親子揃って面汚しね。本当に破門になれば良いのに」
少女も残念ながら嫌な奴みたい。
「貴族の友人望めないから平民と仲良しこよししか?」
リドー達の第一印象が可愛く思える位、コイツ等が嫌い。
ってか誰なのよ。貴族なんでしょうけども。
「貴族もなにも、親がそうなだけでオレ達は何の爵位も持ってない平民じゃないか」
カシウスの握り締めた拳にルーシがそっと手を添えている。
それがカシウスの冷静さを留めさせている。
「君はそうかもな。でも僕は既に子爵を受けている」
「世襲で授与された位で偉そうにするなよ格好悪い」
「なんだと」
「しかもそれで言うと後々オレの方が高位になるな」
「それはどうかしら。彼は私と婚約するから公爵の地位も授かるわよ」
「それは飛ぶ鳥の献立じゃないか?」
「筆頭公爵に辺境伯でドラゴンまで使役してたら、次の国王になっちゃうんじゃないかしら」
「おい、めったな事言うもんじゃないぞ」
今のは不敬罪にあたりそうね。
「ふん。行きましょ」
2人は1番上等な馬車に乗って去って行った。
「なんだ今の奴ら」
「嫌な人達だったね。貴族様ってみんなあんな感じなの?」
「いや、アイツ等が特殊なんだよ」
「うん。カシウスのお父さんも伯父さんもすっごく優しい人だもんね」
リドーとアルは、カシウスの伯父さんが貴族なのは察しが付いただろうけど、それが国王の話だとは思っていなさそう。
「カシウス、あの子達は誰なの?」
「男の方がマリスってバカルシエナ辺境伯の長男だ。子爵になったって言ってたからルングス卿なのかな。」
ルングスって1度訪れた事ある街よね。
校長のネイプ司教と関わり深いんじゃなかったかしら。
テルティアとカシウスが楽しいだけの学園生活を送って居なかったのが伺える。
「あ、お待たせ」
テルティアとラトリアが現れた。
ラトリアの伏せ目がちは仕様なのかしら。
「どうかしたの?カシウス機嫌悪そう」
「マリスとアンティパティエが居たんだよ」
察するにアンティパティエってのが女の子の方の名前。
公爵云々言ってたから親戚か?
「あぁ、それは災難ね。だから私は会わないように遅く来てる」
「それ教えといてくれよ」
「ごめんごめん」
リドーにアル、ラトリアの紹介を軽く済ませると2人の馬車が到着した。
お迎えはエイミラットね。
「ルーシは、今日ウチ来る?」
「ううん。今日はこのまま帰るよ」
「そっか。じゃぁみんなまた明日ね」
2人を見送るとラトリアはみんなに向かって会釈して先に行ってしまう。
見てたら別に待ち合わせた見たいで、その子と合流していた。
「あ、あの子同じクラスの子だ。似てるから姉妹なのかなぁ」
とアル。
確か似ている。美人姉妹ね。
妹の方は伏せ目がちじゃない様で、姉の手を引いて歩いて行った。
「ルーシ君てカシウス君のお家に行った事あるの?」
正門まではリドーとアルと一緒に帰る。
その内みんなで下校途中にお茶出来たらいいなぁ。
スクールライフの醍醐味はそこよね。
「別邸なら知ってるよ」
「やっぱり大きいのか?」
「そうだね、おっきいね」
「いいなぁ。行ってみたいなぁ」
「ボクは2人の部屋に行ってみたいな」
「俺達、寮だからな。大した事ないし、規則で人呼ぶの難しいらしいは」
「そっか‥‥」
「それだとカシウス君のお家はもっと厳しいんじゃない?」
「だろうなぁ。そうなるとルーシの家しかないか」
「うん!家に来て。家のご飯美味しいよ」
ルーシが嬉しそうにトーラカフェについて話す。
「そんなんだぁ。じゃぁ今度みんなで時間作ってご飯だけでも食べに行きたいね」
「そん時ゃカシウスの馬車に乗せて貰いたいもんだな」
なんならアタシが引いてってあげてもいいわね。
正門を出て2人とはお別れ。
「また明日ね」
ルーシが先に歩き出し、振り替えるとアルがまた手を振ってくれた。
「いい子達ね」
「うん」
「明日からも楽しみね」
「うん!」
ルーシは軽快な足取りで帰路についた。
0
お気に入りに追加
22
あなたにおすすめの小説
アラヒフおばさんのゆるゆる異世界生活
ゼウママ
ファンタジー
50歳目前、突然異世界生活が始まる事に。原因は良く聞く神様のミス。私の身にこんな事が起こるなんて…。
「ごめんなさい!もう戻る事も出来ないから、この世界で楽しく過ごして下さい。」と、言われたのでゆっくり生活をする事にした。
現役看護婦の私のゆっくりとしたどたばた異世界生活が始まった。
ゆっくり更新です。はじめての投稿です。
誤字、脱字等有りましたらご指摘下さい。
公爵家長男はゴミスキルだったので廃嫡後冒険者になる(美味しいモノが狩れるなら文句はない)
音爽(ネソウ)
ファンタジー
記憶持ち転生者は元定食屋の息子。
魔法ありファンタジー異世界に転生した。彼は将軍を父に持つエリートの公爵家の嫡男に生まれかわる。
だが授かった職業スキルが「パンツもぐもぐ」という謎ゴミスキルだった。そんな彼に聖騎士の弟以外家族は冷たい。
見習い騎士にさえなれそうもない長男レオニードは廃嫡後は冒険者として生き抜く決意をする。
「ゴミスキルでも美味しい物を狩れれば満足だ」そんな彼は前世の料理で敵味方の胃袋を掴んで魅了しまくるグルメギャグ。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
転生貴族の移動領地~家族から見捨てられた三子の俺、万能な【スライド】スキルで最強領地とともに旅をする~
名無し
ファンタジー
とある男爵の三子として転生した主人公スラン。美しい海辺の辺境で暮らしていたが、海賊やモンスターを寄せ付けなかった頼りの父が倒れ、意識不明に陥ってしまう。兄姉もまた、スランの得たスキル【スライド】が外れと見るや、彼を見捨ててライバル貴族に寝返る。だが、そこから【スライド】スキルの真価を知ったスランの逆襲が始まるのであった。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
攫われた転生王子は下町でスローライフを満喫中!?
伽羅
ファンタジー
転生したのに、どうやら捨てられたらしい。しかも気がついたら籠に入れられ川に流されている。
このままじゃ死んじゃう!っと思ったら運良く拾われて下町でスローライフを満喫中。
自分が王子と知らないまま、色々ともの作りをしながら新しい人生を楽しく生きている…。
そんな主人公や王宮を取り巻く不穏な空気とは…。
このまま下町でスローライフを送れるのか?
異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!
夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。
ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。
そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。
視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。
二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。
*カクヨムでも先行更新しております。
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる