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4章
【104】体育の授業
しおりを挟む「僕の事はアルって呼んで」
アルことアレクサンダーと一緒に教室に荷物を置いて校庭へ。
1年生全員が既に真ん中の校舎の前に整列している。
まだ時間じゃないはずだけど‥‥
「ごめんなさい、僕の着替えに手間取っちゃって‥‥」
「まだ時間じゃないから構わない。早く列に並びなさい」
10人居る先生の真ん中に立っている女の先生が言う。彼女が主任なのかな。
目付きが鋭いからアルがビビって謝っちゃったけど、やっぱり遅刻じゃなかったわね。
クラスの列に向かう時sクラスの横を通ったんだけど、カシウスの友達以外無反応だった。
貴族は中等部?から学園通ってて知り合いのはずなのにね。
お貴族様の確執かしら。怖い怖い。
列の1番後ろに並ぶ。アルは隣の列の後ろから3番目。
その並びでアルの入試の成績が何となく分かる。
38位かな。200人近くの中でだから優秀な方よね。
「本日は初日なので体力測定をする」
主任の先生が話し出す。口調まで鋭い。
モキート先生が居ない所を見ると、彼の代わりか全員体育教員なのか。
みんな良い体してるから後者かな。
「2クラスづつに別れてまず5項目行い、最後に全体で持久走をする」
「先生、模擬試合をしたいです」
突然スフインが手をあげ注目を浴びる。
見えてないけど、リドーにせがまれたんでしょう。
「お前は話を聞いてなかったのか?これから全体で測定を行うので却下だ」
先生がより厳しい口調で答えたので、スフインの上げた手が弱々しく下ろされる。
ちょっとスフインが可哀想に思える位冷たい言い方だった。
「どうしてもと言うなら人数集めて授業後に私の所に来い。付き合ってやる」
休み時間ならいいんだ。口調程冷たい人じゃない?
子供達が同じ印象持ってなかったら模擬試合は流れるかもね。
校庭の5分の3使って授業が行われる。
残りの敷地は3年生が格闘訓練で使ってる。
3年になるとほぼ選択授業って話だから軍隊志望の子達が訓練しているんでしょう。
で、アタシはと言うと、校庭の片隅で他の従魔達と一緒に隔離されてる。
今回はスキル禁止な授業だからだって。
テイムのスキルなんて測定に何ら支障ないだろうに、体裁の為にとばっちり。
他の従魔達は素直に大人しくしてるわ。
猛禽類が1番多いかな。鷹がほとんどでフクロウもちょっと。
次にイヌ科で、ネコ科もチョロチョロ。
アピの時みたいに意志疎通が出来ない。
種族が違うから?ウサギだったらちゃんと話せるのかしら。
今居る従魔達の反応を見る限り、話せる云々の前に逃げられてしまいそうね。
アタシのウサギの姿を補食対象と見てるのに、竜の雰囲気に恐れをなしている。
それで混乱してるのか近付いて来ない。
避けられるのは寂しいけど、襲って来られるよりはいっか。
ルーシのグループは徒競走から。
見てる限りタイムを録ってる節はないけど、先生がファイル持って書き込んでるからざっくりとランク分けをしているのでしょう。
リドーはダントツトップで走り抜けた。
ただ、確かに早かったけど、他の子が遅かったってのもある。
男女の区別なく5人づつ走っているのでルーシ達とリドーは一緒に走らないし、正解なタイムも出ないんじゃ競いようがないわね。
比べられたら絶対負けないのに。
ルーシは自分の番までカシウスからレクチャーを受けている。
走れはしても徒競走は初めてだから、スタートの仕方が分からない様子。
測定項目全部そうだからカシウスが側に居てくれて良かった。
案の定スタート出遅れて、カシウスに次いで2着になった。
スタートダッシュ決められてれば1位だっただろうに。
ルーシは楽しそう。競争とか初めてだからワクワクしてるのかな、
その後、反復横飛びに立ち幅跳びに垂直跳びと、初めてにしては無難な成績を残して行く。
カシウスもリドーも良い感じで2人はトントンかな。
他のグループを注意して見てないけど、3人とも好成績だと思う。
5項目はボール投げ。
ハンドボール大の5色ある毬を5人同時に投げる。
リドーの記録は35メートルを越えていた。
喜び様からして平均を大きく上回っているんだと思われる。
ルーシとカシウスの番。ルーシは投げ方がぎこちない。
不慣れだものね。20メートル位かな。
それに比べてカシウスは槍を投げ込んでるだけあって40メートルは飛んでいる。
リドーはカシウスの豪腕に目が行ってて、ルーシの記録に気付いてない。
彼なら優劣でバカにしたり、恨めしい表情しそうなものだけど、素直に感心してる様に見えた。
5項目が終了すると、みんな元の場所に戻って来る。
後後は持久走だっけ。
「10分間で何周走れるか測る。結果は自己申告とする。明らかなサバ読みだと判断した場合はそれ相応の報いを受けて貰う」
持久走って言ったら決まった長距離を何分で走れるかを測るもんだと思ってた。
頑張ったって走る時間は変わらないとかどんだけ忍耐力いるのかしら。考えただけで息が苦しい。
「人数的に同じ場所から初められないので、今居る場所が各々の1周ラインで数えなさい。」
ざっくり1周500メートルか。
それを総勢200人弱が同時に走るんじゃ渋滞して本来の実力は出なさそうだけど、その駆引きというか采配とかも判定材料なのかな。
「それでは、初め!」
ほとんどの生徒がジョギング程度の速さで様子を見る中、ルーシは徒競走ばりのスピードでトップに躍り出て一気に差をつける。
やばっ、ルーシの体力だとそのまま走り切ってしまう。
異常な目立ち方しちゃうし、マラソンランナーじゃないんだからスキル使ってるとか思われてしまうかも知れない。
「ルーシ、スピード落として。そんな速さで走る子なんて居ないわ」
「え、でもさっきはみんな走ってたよ」
「それは短い距離だからよ。普通は疲れて長い時間走れないからゆっくり走るものなの。馬だってそうでしょ?」
「そっか。どのくらいで走ればいい?」
「そうね、カシウスに追い付いたら、並んで同じ速度にしたらいいわ」
「うん。わかった」
1周度肝を抜いたけど、その後は群衆の中に紛れて突出しなかったからそんなに目立ってないはず。
危ない危ない。
10分たってカシウスは4周ちょっとか。
リドーもその後ろにぴったり着いて来ていて、終わると直ぐに膝に手を突いてへばってる。
「お前らすごいな」
カシウスは肩で息をしてるけど、もう1回走れそう。
ルーシは回りがへばってるのを見て常識を認識してる。
「お貴族様は体力無いと思ってたよ」
sクラスの連中のほとんどは、疲れない様にゆっくり走ってた。
まぁカシウスも全力じゃなかったっぽいんだけどね。
それでも好成績は残してる。
「毎日訓練してるからな」
「そいつは大したもんだな」
リドーってただのマウンティング男子だと思ってたけど、優越感に浸りたいだけの子ではないのかも。
遅れてスフインがやって来る。彼も手を抜いてた口だ。
「この後模擬試合するだろ?」
「え、するの?怒られたのに」
「休憩時間になら良いって言ってたじゃないか、あの先生」
「そうだけど‥‥」
スフインは心底嫌そうだ。
「オレ達はどちらでも構わないぞ?」
「じゃぁやろうぜ。お前とならいい試合になりそうだ」
以前は嫌らしい感じだったのに、今回は素敵な笑顔をするリドーだった。
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