転生竜と賢者の石な少年

ツワ木とろ

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4章

【99】午後のお茶

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「いかがされましたか?」

 みんなで謁見の間に戻るとセバスチャンさんが足早に近付いて来る。

「何か不手際でも御座いましたでしょうか」
「いいえ。終了したの」
「え、誠か?」

 みんな驚いている。

「ええ、お父様。無事に終わりました」
「もっと時間の掛かるものだと思っていた」
「ポーションを使いましたから」

 自然治癒に任せてたら1日たっても終わらないんじゃないかな。
 プットリーはルーシの秘密スキルをちゃんと黙っててくれた。

「アピちゃんももう火を吹けるの?」
「ええ、テルティア姉様。アピ、見せて上げて」

 アピがプットリーの頭の上に乗り移り、上に向かって火を吹く。

「おお!素晴らしい。だか、頭の上に乗らせるのは良くないな」
「そうですよ。髪が乱れて仕舞いますから」

 そう言う事じゃないんだけどって表情でユニウス王がミウレット妃を見てる。

「お披露目パーティーをしないといけませんね」

 ミウレット妃が掌を合わせて楽しそうに言う。
 貴族って言ったらパーティー好きなイメージ。
 彼女もそれに外れないのでしょう。

「そんな事しなくてもいいですよ」

 プットリーはあまり好きではない様子。

「そうは行きませんよ。義務みたいなものなのですから」
「そうだ。諸公に知らしめる為にも披露はしなければならない」

 そもそも跡継ぎとしての説得力を増す為なんだもの、お披露目しなくちゃ意味ないわ。
 プットリーもそれは分かっているようで、気乗りしない表情で頷いてる。

「ガイウス様もいらして下さいね」
「勿論です」
「テルティアとカシウスもね」
「うん」
「ルー兄様もいらして下さい」

 とプットリーが言うとセバスチャンさんが口を挟む

「恐れながら発言しても宜しいでしょうか」
「セバスチャン、どうした?」
「はい。披露会となりますと諸貴族様を招待する事になります」
「そうだな」
「恐縮ですが、その場にルーシ様をお招きするのは如何なものかと‥‥」
「どうして?」

 プットリーが食いぎみに食い掛かる。

「ルーシ様は爵位をお持ちでも、そのご子息様でも御座いませんので」
「でもガイウス叔父様が後見人ではありませんか」
「いくら血縁関係を否定されても公的な場にお連れになっては要らぬ噂が立ちかねません」
「‥‥だったら、アピの成長に協力して頂いた功労者としてではダメですか?」
「プットリー、ボクなら大丈夫だよ」

 ルーシがプットリーを止める。

「でも、それではあんまりです‥‥」
「ボクもナナチャもそう言うの苦手だから」
「ルーシ様、申し訳ありません」

 セバスチャンさんの言い分も分かるし、アタシ達に貴族のマナーなんて分からないからお呼ばれされても困っちゃうし迷惑掛けちゃう。
 セバスチャンさんが悪役演じてくれて断る手間も省けて助かっちゃった。

「セバスチャンの言い分だと、この後夕食を共にするのも憚られるのか?」

 とユニウス王。

「はい。その方が宜しいかと」
「そんな!」

 プットリーがまた声をあげる。
 ご飯くらい良さそうだけど、アタシには分からないシガラミがあるのでしょう。

「お茶をご一緒する位なら宜しいでしょ?」
「プライベートな部屋でなければ宜しいかと存じます」

 ミウレット妃の提案にセバスチャンさんが頷く。

「なら中庭でどうだ?あそこならアピとナナチャを遊ばせる事も出来よう」
「畏まりました。直ぐに準備致します」
「まともな礼も出来なくて済まないが、茶を馳走させてくれ」

 内密なのがみんなにとって都合が良いのだから、全然構わない。アタシ達にとっても都合が良いしね。
 ルーシが実力で目立つのは良いけど、他人の権威でってのは悪目立ちするから嫌。でも内々には繋がってたいって思うアタシは我が儘かしら。


 中庭は謁見の間をサイドの扉から出て廊下を奥に進むと、ちょうど真裏にあった。
 四方を通路に囲まれてて、真ん中に噴水がある。
 お城は5階建てなのか、中庭を囲う廊下がそこまでは見える。
 天井ないし飛んで見れば分かるんでしょうけど。
 謁見の間で王様達が登場した入口の逆側が中庭からは見えないから、間に1部屋あるのかもしれない。
 お城なんて初めてだから探索したいのだけど、ダメよねきっと。
 このウズウズはアピと戯れて晴らそうかしら。



「あまり高く飛んでは駄目ですよ」

 プットリーがそんな事言うのもあって大人の身長位の高さに抑えてる。
 飛んで競争したり、空中でじゃれあったり、そんな事出来る仲間居なかったから楽しいわ。

「もう仲良くなったのね」

 ミウレット妃がこっちを見て微笑んでる。
 みんなはくっつけた丸テーブル2つを囲んでお茶をすすってる。
 おやつは、あれマカロンかな。
 いいなぁ。ガイウス邸でもあんなの出ない。
 流石王宮のアフタヌーンティーって感じね。
 ルーシも笑顔だし、馴染めてるみたいで良かったわ。

 じゃれあってて思ったのだけれど、アピはまだ火の扱いに慣れてないわね。
 まぁ当たり前なんだけど、たまにちょこっと漏れちゃってるのよ。
 その内なんとかなると思うけど、今の内に教えられる事は教えておいてあげたいな。
 ルーシに頼んで貰おう。

「アピはまだ火の扱いに慣れて無くて、無意識に少し火を吐いてしまったりしているみたいなので、ナナチャが練習をさせたいみたいです」

 ルーシが王様に伝えてくれる。

「従魔とはそんなにもハッキリ意志が通じ合うモノなのか」
「いいえ、お父様。ルー兄様とナナチャちゃんは特別です」
「もう何年も一緒だからスキルの熟練度があがっているんじゃないかな」

 ガイウスさんがフォローを入れてくれる。

「なるほどな。分かった。セバスチャン、何か良い手はあるか?」
「それでしたら先程の火鉢と煤避けの布をお持ちしましょう」

 それだと的が小さい気もするけど、しょうがないか。
それでやれるだけ遣ってみよう。

「それなら火鉢を斜めに置いて、その後ろに布を壁みたいに張って欲しいです」
「畏まりました」

 ルーシの指定に王様が頷いたのを確認してからセバスチャンさんは動き出す。

「ミュー」

 待ってる間にアピに何したいか伝えとく。

「クルルゥ」

 たぶん伝わってるわ。


 準備は直ぐに済んだので早速お手本を見せようかしら。
 ルーシとプットリー。それにカルデッティが側に来ている。
 一応、主の指示で火を吐くってのも一緒に練習しちゃう。
 吐くって言っても色んな種類の火があるからね。

「ミュミュー」(アタシがまず遣るから見てて)
「クルルゥ」(わかったぁ)

 フィーリングだけどそんな会話をして、火鉢から2メートル位離れた所から始める。

   「ルーシ、火球、石火、蛇火、火炎の順番でお願い」
   「分かった」

 ルーシが咳払いをする。
常に指示出してる訳じゃないのに、人に見られてて緊張してるのかな。
 可愛いわぁ。それに普通の子の反応って感じが何だか嬉しい。

「ナナチャ『火球』!」

 大きく口を開いて一瞬口に溜める様な感覚で単発で吐き出す。
 ソフトボール位の火の球が火鉢に飛んで弾ける。

「凄い」
「プットリー、アピもやってみて」
「はい‥‥アピ、『火球』を」

 プットリーが祈る様な手の組み方しながら言う。
 呼び名はアタシ達が勝手に決めただけだから違ってもいいんだけどね。
 後で伝えといて貰おっかな。
 アピがアタシの真似をして放たれた火の球は、ゴルフボール程の大きさだったけどちゃんと火鉢の中に収まった。

「ミューミュー」(凄いじゃない。センスあるわ)
「クルクルルゥ」(でもナナチャのより小さい)
「ミュミュミュー」
「ナナチャちゃんは何て言っているのですか?」
「アピの事誉めてる。でもアピがナナチャより火の球が小さいって嘆いてるから、体格が違うからだよって。これから成長したらもっとおっきなの作れる様になるよって言ってあげてる」
「そうなのですね。ナナチャちゃん、アピを気遣ってくれて有り難う。」

 プットリーが頭を撫でてくれる。

「クルルゥ」
「アピも有り難うって言ってます」

 アタシにもそう聞こえた。
 プットリーとアピの繋がりも強くなって来てるんじゃない?


 一通り技を見せ終わった頃には空が赤くなっていた。

「陛下、そろそろ」

 セバスチャンさんがユニウス王に言っている。

「分かった。申し訳ないがこの辺でお開きにしよう」

 お茶だけって話だったのに随分お邪魔しちゃったかな。

「名残惜しですが致し方ありませんね」

 ミウレット妃がホントに残念そうにルーシの手を取る。

「またお会いしましょうね」
「はい」

 おやおや?知らない内にミウレット妃とも仲良くなっちゃってるわ。

「それでは、私共はこれにて失礼します」
「ああ。ガイウスも息災でな」
「テルティア、カシウスもまたパーティーでお会いしましょう」
「ルー兄様も学園でお会いするの楽しみにしております」


 赤い空をバックにすると昼間よりもお城が重々しく見える。

「ルーシごめんね。夜のお城見せてあげられなくて」

 そんな約束してたけど、しょうがないわよ。
 テルティアに我が儘言わせる訳にもいかないしね。

「大丈夫だよ。今のお城もカッコ良くて好きだよ。この風景が見られる時間が1番短いだろうからってナナチャも喜んでる」
「そう、それなら良かった。あ、そうだナナチャにお土産があるの」
   お土産?

 テルティアが徐にポケットからハンカチで包まれたモノを取り出し、アタシの前で其を開いてくれる。

「マカロンよ。ナナチャも食べたかだろうと思って」
「ミュー!」
   テルティア、アナタってなんて気の利くいい娘なの!
「ちょっと、ナナチャくすぐったいよ」

 メチャメチャ頬擦りしてあげちゃう。

「凄く喜んですよ」
「分かった、分かったから、早く食べちゃって」

 そうね。常温時間長かったしね。

「夕御飯食べられなくなっちゃうよ」
   あらルーシ、お母さんみたいな事言うわね。
「大丈夫よ。甘い物は別バラよね」

 それって食後の話な気がするけど‥‥気にしないで食べちゃいましょう。

「ミュミュー!」

   美味しい!

 こんな美味しい物を食べられるアタシって最高に幸せなウサギだわ。

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