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3章
3章の終わり
しおりを挟む「あわわわわわ!」
ハマールがアタシの背中で慌てふためいてる。
「なんだよハマール。怖いのか?」
「そりゃそうですよ」
それに比べてカシウスは楽しそうだ。
王都に戻って来ても、時折元気のないルーシをカシウスが気晴らしに誘ってくれた。
それならって事でアタシが提案して、王都から離れた所まで来てドラゴンになって飛んでいるの。
「ルー兄、ナナチャ、もっと飛ばしてよ」
「えー!」
イプノシーの件では、死亡者がいた事もあって、調査隊からの取り調べに時間が掛かった。
それでも審問官の業務中の出来事だし、手をくだした訳じゃないので甘いもんだったんだと思う。
信者達の供述もあったからかな。
アタシ達が訪れた村以外にも2つ近くに隠れ集落があるしく、信者達はそっちで暮らしていたらしい。
亡くなった人と逢わせる見返りとしてキノコ栽培の労働力にされてたとか。
実際には催眠と幻覚で騙されてただけみたいなんだけど‥‥
イプノシーは死んじゃったけど、怪しいキノコの栽培も含めて調査は続いている模様。
ルーシのみそぎ期間が終了したので詳しい話は分からないけど、重要参考人としてセドリックとヴィオラの捜索がギルドに依頼されたらしい。
グフリアの所が面識あるから任されたみたいだから下手な事にはならないと思うけど、ルーシとアタシも複雑な気持ちに陥ってた。
ルーシの部屋にはセドとヴィオラの荷物が残っているから、嫌でも思い出してしまう。
そんな時にカシウスが誘ってくれたので、感謝だわ。
アタシは空中をジェットコースターみたいに急上昇急降下を繰り返す。
「1回転するからしっかり捕まっててって!」
振り落とされない様に前もって伝えてから1回転。
「ひゃっほーっ!」
掴まれてる毛が思いっきり引っ張られて少し痛いけど、ルーシもカシウスも楽しんでくれてる見たいで良かった。
カシウスのテンションが非常に高いのはルーシを気遣っての事なのかも。
それに引っ張られてルーシの陰りも吹き飛んだみたい。
よし、今度はもっと早く回ろうかしら。
「もう勘弁してくれだぁ!」
ハマールの限界が来たので一旦休憩。
アタシも一旦元の姿に戻る。
「ナナチャ凄いな。楽しかったよ」
「ミュー」
「オイラは楽しくなかっただ‥‥」
「ミュー‥‥」
「ハマールは乗らなければ良かったじゃないか」
「次からはそうしますだ」
王都に続く道の無い、草原の丘の上。
そこでアタシを挟んでルーシとカシウスが寝転ぶ。
ハマールはアタシの反対側のカシウスの隣で胡座をかいて座ってる。
他人の往来は全くなく、静かで風が心地良い。
無言で居たら寝てしまいそう。
「ルー兄、もうそろそろ学園の入試なんでしょ?」
カシウスが肘をついてルーシの方を向く。
「うん。入試ってどんな事するのかな」
「わかんない。父さんも姉さんも入試受けてないんだよね」
上流階級の子供はエスカレーター式に進学するので、入試は高等部から入学する一般人のみになる。
「ジークリット伯父さんなら知ってるんじゃないかな」
司教様の息子も一般人扱いなのか。
その頃はメルヴィルさんが司教じゃなかったのかも知れないわね。
「絶対入学出来るって言ってた」
「らしいね。だからクラス分け試験だって言ってたよ」
「カシウスと同じクラスになれるかなぁ」
クラス分けの基準は知らないけど、カシウスはずっと通ってるから学力あるだろうし、ルーシも賢いし勉強して来てるから期待は持てる。
けど、確執やら思惑やらで貴族と一般人が同じクラスになったりするのかしら?
「大丈夫だよ。父さんが根回ししてくれるから」
おっと、そんな事軽々しく言って良いの?
公爵家の口利きだから大丈夫なのかな?
そうだったとしてもルーシの口からは出させない様にしといた方が無難よね。
「でも、さすがに成績悪いとどうにもならないみたいだから。ルー兄なら大丈夫だろうけど‥‥ オレもルー兄と同じクラスになりたいからさ」
「うん。頑張るね」
同じクラスになってずっと一緒に居るのも楽しくていいけど、アタシ的には他のお友達も作って欲しいかなぁ。
「ナナチャ、もう1回飛んでくれるか?」
「ミュー!」
「今度は3回転するって」
「いいね!」
「オイラは遠慮します」
「ミュー」
「下で見てて、カシウスが落ちたら受け止めてあげてだって」
「分かっただ」
「大丈夫だよ、オレ落ちないから」
ちょっとカシウスが不貞腐れる。
「もしもの為だよ。じゃないと3回転はさせられない」
アタシが伝える前にルーシが言ってくれる。
「分かったよ」
「もしもの時はオイラが守りますだよ!」
「ハマールお願いね」
張り切るハマールに笑顔でそう言うと、ルーシはまたアタシをドラゴンに変えて背中に乗り込んだ。
無邪気に楽しむルーシとカシウス。
今日はホントいい日ね。
これからの学園生活もこんな感じだといいなぁ。
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