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3章
【68】初仕事にレッツゴー
しおりを挟む「ルーシ、激しいにゃ。腰壊れちゃう」
「ナミルは言い方が卑猥ですう」
「コリコリの頭ん中がエッチだからそう思うんだにゃ。にゃぁ、ルーシ」
「コリコリ言うなあ!」
荷馬車の上ではしゃぐ2人。
「やっぱ外は気持ちいいにゃ」
ミソギが決まってから、半月程王都の教会に留まっていたので、ずっとまともな口調だった2人は鬱憤が溜まってたんでしょう。
この半月の間にリネットは故郷に帰り、ニコラはツインブレスの馬車を使って旅に出て行った。
なので今アタシが引いてる馬車は教会から支給された荷馬車。
小さくて車輪も2つで屋根もない。ほぼリアカー。
街中でよく見掛けた荷馬車で、目立たない様にって配慮なのだろうけど、それを引くアタシがばん馬ばりなガタイだから逆に目立つ。
「とても立派な馬ですね。良かったらウチの馬2頭と交換しませんか?」
途中立ち寄った農村で村人が声を掛けてきた。
「ボクの従魔なんでダメです」
「そうですか。それは残念。良い仕事してくれそうなのに」
ルーシと一緒なら農業も悪くないかもね。
ずっと馬のままは流石に勘弁だけど。
「すみません、井戸水を汲ませて頂いても宜しいですか?」
コリティスがペンダントを見せながら言う。
「あ、教会の方でしたか。どうぞどうぞ、お好きなだけお汲み下さい」
村人さんが井戸まで案内してくれる。
若目だけど、村長なんですって。
「皆さんはルングスに向かわれるのですか?」
一旦ルングスの教会で話を聞いてから、近くの村に行く事になってる。
ルングスにはスジャが居るけど、会いには行けないだろうなぁ。
「ええ。そうです」
「それなら迂回して行かれた方が良いですよ」
「どうしてですか?」
「それが、ルングス方面の道で最近盗賊が出たらしいんですよ。何でも『魔女狩り』と称して女子供を連れ去って、男は皆殺しにするとか」
「それは恐ろしいですね」
「1人だけ逃げ切れた男が居まして、本当つい最近の事なのでまだ軍も調査に出られて無いんじゃないかな」
「そうなんですね。ご忠告有難う御座います」
「3人共お若いし、おキレイだからくれぐれもお気をつけ下さいね」
「どうしようかにや?」
水を汲み終え、村長にお礼を行って村を出る。
「私キレイだから襲われちゃうらしいですう」
「それはお世辞にゃ。コリティスは女子供の子供の方にゃ」
コリティスが頬を膨らます。
ホントに子供みたい。
「魔女狩りって何?」
とルーシ。
先日、フィンティスともう1人が、魔女認定されたと教会からお布礼が出てた。
フィンティスは『怠惰の魔女』とか命名されて、詳細な似顔絵も貼り出されてる。
魔女認定って何だか指名手配見たいな意味合いな気がする。
もう1人はキチョウって女で『色欲の魔女』。
どこぞの国で何か仕出かした人らしく、似顔絵もまだなかった。
「たしか昔、魔女に懸賞金が掛かってた頃の所業じゃにゃかったかにゃ?」
「そうですう。懸賞金欲しさに誤った方を捕まえたり殺してしまったり、それに乗じて悪さする者が横行したので懸賞金は廃止になって、民間人からは情報提供だけ受け付ける様になったらしいんですよねえ」
「じゃぁ、今でもそれを行ってるのは敬虔な教徒って事?」
なんか、目が虚ろで浮世離れした人を想像しちゃったけど、そんな人だったら怖いわね。
でもアタシ達は教会関係者だから盗賊よりは安全なのかも。
「たぶん違うと思うにゃ。男は殺して、女子供は連れ去ってるって事は奴隷にするつもりなんじゃにゃいかにゃ」
「この国じゃ奴隷は禁止ですから隣国に連れて行かれるんじゃないですかあ?」
「隣の国じゃ禁止じゃないの?」
そう言えば絵本にも奴隷ってたまに出て来てたな。
「教義で定められいる通りかそれ以上の待遇を保証してるなら教会も認めてるにゃ」
どうもアタシが思ってる奴隷のイメージとは違いそう。
「奴隷となる者の承諾は必須だから、人さらいはもっての他にゃ」
なるほど。だから敬虔な教徒ではないと。
村長も盗賊って言ってたわね。
「じゃぁ悪い人達なんだね」
「そうにゃ」
「じゃぁ退治しなきゃだね」
「ん?それは軍の仕事にゃ」
「でも、ボク達もこれから違う悪い人達を退治に行くんでしょ?」
「んー、ちょっと違うかにゃ」
「私達はあ、教えに反している人を注意しに行くんであって、明らかに悪さしてる者を退治しに行く訳じゃないですよお」
「まぁ、相手から仕掛けられたら戦って捕まえたりはするかもしれないけどにゃ」
アタシも良く分かって無いのだけれど、国の法律は法律であって、教義ってのは国際的な法律なのかなと勝手に理解している。
「じゃぁほっとくの?2人共強いのに」
「そう言われるとにゃぁ、冒険者の時は依頼じゃないからって言えたけどにゃぁ」
「物語に出てくる英雄はみんな教徒だったよ?」
教会に通ってる間に読んだ教本には英雄譚が多かった。
その影響をルーシは受けている。
「私は英雄になりたい訳じゃないですけどお、知らんぷりは出来ないですよねえ」
「1人逃げてきたって言うからもう居ないかもしれにゃいにゃ」
「その確認がてら進んで見ましょうかあ。何かあっても無くてもルングスで報告しましょう」
「うん」
ルーシが2人に笑顔を向ける。
と言うことで進む道が決まった。
盗賊が居たのに通りすぎちゃったら駄目だから、ここからはゆっくり進まないとだね。
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