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2章

【65】出頭

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 早朝、目を覚ますとリネットも起きた所だった。

「ナナチャ、おはよう」

 そう言うと寝間着を着て出ていった。

「あれ、リネットは?」

 後に目を覚ましたルーシ。

   「だいぶ前に戻って行ったわよ」
「そっか。おはよう、ナナチャ」

 昨晩は余計な事考えずに眠れたみたい。
 リネットには感謝だわ‥‥

 朝食に向かうと、リネットとニコラが既にテーブルを囲んでいた。

「おはよう」
「おはよう」

 みんな普段と変わらない笑顔で挨拶する。

「朝食済ませたらルーシの部屋の移動しましょうか」

 ルーシ、ヴィオラ、セドの3人とも荷物が多くないし、整頓されていたのでそれ程苦労もせずに移動は済んだ。
 セルヴィが普段から掃除をしてくれて居たので埃も少ない。

「セルヴィはまだ寝てるのかな」
「そうね。落ち着くまでそっとしておきましょ」

 セドとヴィオラの荷物は箱に入れてクローゼットの中へ。
 最後に元ルーシの部屋を軽く清掃して1階に降りる。

 リネットは昨晩の事を何もなかった様に行動しているけど、本当に何もなかったんじゃないかって思えるくらいルーシが普段通りな事に複雑な表情をする時がある。
 アタシにはそんな風に見えた。

「これはサービスだよ」
「ありがとう」

 昼食にはまだ早いのでお茶だけいただく。

「午後にはガイウスさんの所に行かなくちゃね」

 ガイウスさん達にはまだ報告に行っていない。
 気が重いけど、後回しには出来ないわね。

  カラン

「いらっしゃい」

 トーラさんのお店のカフェ側の扉が開く。

「ルーシ君、皆さん」
「エミリーさん?」

 1人かしら。

「ご無沙汰してます」

 ニコラとリネットは1、2度顔を会わせたことがあるくらいだったかしら。
 メルヴィルさんと一緒じゃなく会うのは初めてかも。

「ご飯食べに来たの?」

 教会で会うのと違って一般的な服装をしている。
 プライベートかしら。

「違うの。先日の件で皆さんを迎えに来ました」
「わざわざ迎えに来たの?」
「はい」
「よくここに居るって分かったわね」
「ええ、まぁ‥‥ 火急な用がなければこれから私と一緒に教会へ向かって頂きたいのですが」

 そんなに緊急なの?昨日はそんな感じでもなかったのに。

「でも、ガイウスさんの所に行かないと」
「お約束されてるのですか?」
「そう言う訳じゃないけど、セドリックの事があるし」
「予定はそれだけですか?」
「まぁ、火急って言われると無いわね」
「分かりました。私も同行しても宜しいですか?」
「それは構わないけど、支度するから少し待ってて」

 なる早で支度して、またアタシが馬になって馬車を引く。

「なんでそんなに急ぎなの?」

 荷台でニコラが聞いている。

「皆さんが先日関わった案件が大事になっていて、特にルーシ君がなのですが、即座に出頭した方が心証がいいだろうと言うメルヴィル様のご判断です」

 人間を魔獣に変えちゃったんだもの、大事になるって分かってておかしく無かったわね。

 それに共犯かもしれないサーリアと関わりのあるルーシもディオ違みたいに疑われてるって事かしら。

 参ったわね。

 それにしても、メルヴィルさんがルーシの事を気に掛けてくれて助かるけど、心証心証って教会は裁判所か何かなの?


 ガイウス邸に到着するとピレティアさんが出迎えてくれた。

「皆様、お久しぶりです」
「お久しぶりです。突然の訪問申し訳ありません」
「いえ、約束がなくてもお通しする様申し使っておりますので。ですが、生憎主人は本日外出しておりまして。帰りは夜になる予定で御座います。」

 タイミングが合わなかったわね。

「屋敷でお待ち頂いても構いませんが、いかが致しますか?」
「いえ。流石にそれは申し訳ないので日を改めます」
「畏まりました」
「もし良ければ私が夜に使いに出ましょうか?」

 とエミリー。

「え、私達って夜になっても帰れないの?」
「どうなるのか分からないと思いまして。ただお疲れになられるとは思います」
「なるほどね。後々になるのも失礼だし、一報だけでもお願いしようかしら」
「分かりました。ピレティアさん宜しいですか?」
「畏まりました。主人が帰り次第お伝えしておきますね」
「宜しくお願いします」

 そうして早々にガイウス邸を去った。


 一旦荷台をトーラ・インに預けて、歩いて教会に向かう。
 この教会に来るたんび裏に回ってるわね。
 ここの聖堂ってどんななのかしら。

 エイミーの他に修行僧風な男性も案内に加わり、いつもと逆の通路を進む。
 地下に続く階段がありそちらに案内された。
 地下は、空気が淀んでいて、床に近いと息が苦しい。

 アタシはルーシの肩に飛び乗る。

 石の壁に木の扉、通路の右側にそれが狭い距離で並んでる。
 お世辞にもいい雰囲気とは言えないわね。

「ルーシさんはこちらで」

 奥から4つ目の扉。
 ルーシが扉を開けて入ろうとする。

「あ、従魔は別の部屋です」
   え、別なの?それはダメよ。

 チラッと見えたけど、狭くて窓もないまるで独房じゃない。
 そんな所に1人で入らせなんてさせないわよ。

「シャー!!」

 アタシは威嚇する。
 ルーシとニコラ以外動揺してる。

   別々に閉じ込めて何しようってのよ!

「ルーシ、ちょっと落ち着かせた方がいいわね。」

 とニコラ。

「ナナチャはどこに連れていかれるの?」

 見た目より臆病な案内人。

「あ、あなたの隣の部屋です‥‥」
「部屋を出る時は一緒にして貰えるんですか?」
「勿論です。聞き取りは部屋の中で行いますので、お帰りの際は同伴されて構いません」
「だってナナチャ。だから安心して」

 肩からアタシを下ろし、抱き締めながら頭を撫でてくれる。

 ルーシが想像以上に冷静な対応してビックリ。
 なんだか興奮し過ぎちゃって恥ずかしいわ。

 ルーシが先に独房みたいな所に入るのを見たら、また取り乱しそうなのでアタシが先に隣に入る。

 ルーシが頭を撫でて落ち着かせてくれると、扉が閉められる。
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