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2章

【63】王都に帰って来たけれど

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「ダメ、見付からないわ。結構遠くまで見回ったんだけど‥‥」

 リネットの声色から焦りを感じる。
 ヴィオラが変な気を起こすんじゃないかって心配なのね。

「そう。とりあえず諦めるしかないわね」

 逆にニコラはいたって冷静だ。

「ヴィオラのスキルだったら馬も速く走れる様に出来るのかもしれないわ」
「そんなの聞いたことないわよ?」
「あの子、そう言うの話したからないじゃない。まぁ可能性の話だけど」
「だったらもっと遠くまで探して見る!」
「無駄よ。最短距離でセドの故郷に向かったかも分からないし、だとしたら探すには広すぎるわ」

 既にルーシとアタシの念話が届く限界まで見回っている。

「依頼全うして王都帰って、ジークリットさんに全土のギルドに捜索願い出して貰いましょ」
「教会も協力するよう掛け合います」

 とニーダさん。

「でも、もし何かあったら‥‥」
「大丈夫よ。ヴィオラも故郷に行くって言ってたんだし、変な気起こすつもりはないと思うわ。それよりも先にアナタが変になってしまうわよ」

 スキルを使用するのに体力も魔力も必要ないらしいけど、度が過ぎれば何らかの影響があるのかな?
 リネットの顔を見るとそう思える。

「リネット、ヴィオラの事も心配だけど、リネットの事も大事だよ?」

 とルーシ。

「分かったわ‥‥」

 セドリックの故郷が北の方ってのは知ってるけど、詳しくは知らない。
 故郷の話をしたがらない人だったから。
 その上、ヴィオラが知ってるのかも分からないんじゃ、闇雲過ぎる。

「移動手段を考えておかないと」

 車だけ残された馬車は放棄して、徒歩でディチカまで行くしか無いのかしら。

「教会に連絡して馬を連れて来て貰いましょうか」

 ニーダさんの案。

「そうですね。それしかないですね」
「ニコラいい?」
「どうしたの?ルーシ」
「ボクのスキルまたレベルアップしたんだ」

 それはアタシも初耳ね。

「へぇ、すごいじゃない」

 地竜戦で延々修復してたからなのかな。
 いつもなら食い付きの良いニコラも今はそれ所ではないって雰囲気だ。

「生き物も変化させられる様になったから何かを馬出来るかも」

 なるほど、それでこのタイミングでレベルアップの話をしたわけか。

「やって見るね」

 ルーシはしゃがみ、地面に指を付ける。
 たぶん蟻かなんかの虫が居たのでしょう、彼の指先からぼわっと馬が現れた。

「すごい!」

 みんなこれで移動問題解決かと思ったが、その馬は地面に腹を付けてジタバタするだけだった。

「色々試してみる必要がありそうね」

 とニコラ。
 とりあえず、可愛そうなので馬は元の姿に戻してあげる。



 調査隊が来るまでの間、みんなが色々な生物を捕まえて来てはルーシが馬に変えてみた。
 ただ待ってるだけより気が楽なんでしょう、みんな率先して手伝ってくれた。

 結局、四足歩行じゃない生き物は動く事も出来なかった。
 生き物事態が馬に変えられた事を理解出来てないのが一番の原因だと思われたので、あまり変化の少ない鹿で試して見た。

「ダメね。動きに問題無さそうだけど、言う事聞かないわ」

 そもそも、普通に馬でも野生で暮らしてたら人の言う事なんか聞かないんじゃないかな。
 ここはアタシが一肌脱ぎますか。

「ミュー」
「え、ナナチャいいの?」
「どうしたの?」
「ナナチャが馬になってくれるって」

 最初っからアタシがやれば良かったんだろうけど、色々試してみて危険じゃ無さそうなのが分かったから立候補する勇気が出たのよね。

「じゃぁ、ナナチャ、行くよ」
   「うん。この際1人でも馬車引ける様ないかついのに変えちゃって」
   「わかった」

 一瞬で視界が高くなる。
 痛みも何もなかった。
 これじゃぁ普通の動物じゃ何が起きたのか分かりようがないわ。

「ずいぶんおっきな馬にしたわね」

 自分で見える限りでは、ばん馬ばりにいかつそう。

「大丈夫?」
「ブフフン」

 鳴き声まで変わっちゃった。
 少し歩いて見る。

「違和感無さそうね」

 違和感がないのが違和感て感じかな。
 ちょっと慣らして馬車引いて見よう。


 しばらく練習していると調査隊が空から降りてきた。
 3人。みんな背中に翼がある。

 ビックスさん、ニーダさんと何やら話しているけど、アタシは遠くで馬車に繋がれているので聞き取れない。
 馬になって、ウサギの時より耳が悪くなってるみたい。

 長い時間掛けて調査隊が一人一人と話をして行く。

「ボク達がここに残れないから詳しく話して欲しいんだって」


 事情聴取は半日掛かった。
 最後もまたビックスさんとニーダさんが話をしている。

「お待たせしました。なるべく速く戻りたいので、これから出発しても宜しいですか?」

 王都まで2週間以上かかるのよね。

   「アタシ達も早く帰りたいからルーシとリネットが協力してくれたら徹夜で走るわよ」

 そのむねをルーシに伝えて貰らうとみんな了承してくれた。

「すごく跳ねるからみんなちゃんと掴まっててね」
「舌噛まないように」

 調査隊が見えなくなるまで進んでからリネットのスキルで馬車を軽くして貰って、全速力で走り出す。





「申し訳ありません、私にもポーションを分けて貰えませんか‥‥」

 走り始めて1時間位たった頃の始めての休憩。
 体力が尽きかけたので1度止まってポーションを飲ませてもらっていると、ビックスさんがそう言って来た。

 普通だったら1日かかる距離を1時間で進んだから馬車の中はとんでもない事になってるんだと思う。
 腰を擦ってるのはビックスさんだけじゃない。

 この調子なら徹夜無しでも良さそうね。
 皆がゆっくり体を休められる時間は作ってあげるから、それ以外は頑張って耐えてね。




「とてつもない速さでしたね。あっという間でした」

 ショートカットもしてるから王都には3日で着いた。
 スピードは誉めてくれたけど、2度と乗りたくなさそうな顔をしている。

 まずは教会にビックスさん達とディオ達を送りましょう。

「どこか先に寄りたい所はありますか?教会に着いたら軟禁されると思いますので」

 軟禁て、そんな事する権力が教会何かにあるの?って思ったんだけど、誰も主張しない。
 異端審問なんて在るくらいだから変な事じゃないのかな。

「それじゃぁ、1ヶ所いいですか?」

 ディオが寄りたがったのはカタスティマ・ジューイット。
 スムカが住み込みで働いてたお店‥‥
 側の空き地に馬車を止め、みんな降りていく。

「ルーシ、馬車見ててくれる?」
「うん。分かった」

 防犯上、誰かが馬車に残ってなきゃならないって言うテイの良い理由でルーシは残された。
 たぶんスムカの事を報告に行ったんだと思う。
 今後セドとヴィオラの事を話さなきゃならない場面が幾つかあるから、少しでもルーシを辛い事から遠ざけてくれたんでしょう。
 ありがたいわ。

 ルーシと2人っ切りになるのも久しぶりな気がする。

   「このままパーティー解散しちゃうのかな‥‥」

 とルーシに念話で話し掛ける。

   「うん。リネットは帰らなきゃだもんね」
   「そうよね。2人は元々抜けるつもりだったものね」

 少し間が空く。

   「アタシ達、どうしよっか。またガイウスさんの所にお世話になる?」
   「分かんない。ちょっと考えていい?」
   「そうね。時間はあまり無いけど、今すぐ決めれる話じゃないわね。トーラ・イン戻ったら2人と話し合って見ましょ」
   「うん」

 しばらくするとみんなが戻って来た。

「お待たせしました」

 空気は重い。まぁ当然か。

「教会までお願いします」

 馬車を走らせる。

「ワタシ達はギルドに寄ったり、用事済ませてから出頭しますね」
「畏まりました」
「お世話になりました。ディオ達も」
「こちらこそ有難う御座いました」

 そうして4人とはお別れし、アタシ達はギルドに向かう。
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