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2章

【55】ディチカに到着

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 ディチカに近付くに連れて2人の目的も少し詳しく話してくれた。

 ディチカから2日程南東に行った先にある森の中にドーナと言う孤児院があって、そこが教義に反する教えを説いているから是正を促しに行くらしい。

「私共はどうしても目立って仕舞いますから、ディチカでは商人を装いますね」

 2人は教会のローブを脱いで、ごく一般的な町民の姿になる。
 噂になって当事者が逃げたり、口裏合わせられたりしたら困るのもあるけど、誤報だった場合の相手の風評被害に配慮してとの事。



 ディチカは王都やマディナの様な大きな塀では囲われてない。
 それなりに大きな街だけど、柵程度。

 重要拠点じゃないからみたいだけど、って事は逆に安全な街って事よね。


 ここでは教会を頼らずに宿泊する。
 一応、商人ってテイなので。
 でも、安い宿の大部屋2部屋でなるべく経費を押さえてる。
 その分てわけでは無いけれど、夕食は繁盛店でその店の高めの商品を頼んでくれた。

 ビックスさんは下戸なのか、少しお酒を嗜むと目をつぶってしまった。
 お年だし、長旅で疲れて居るのかも知れないわね。

「眠って仕舞いましたね。そろそろ帰りましょうか」
「大丈夫よ。彼、寝てないから。それよりもお店に睨まれない様にもう少し何か頼みましょう」

 とニーダさん。
 ホントに寝てないのかしら。寝てるようにしか見えないけど。
 ビックスさんを覗き見ると、耳が小刻みに動いてる。


 しばらくするとビックスさんが目を開き、ニーダさんに耳打ちした。

「反対側の壁際の4人組、飴の話をしているね。別件だけどちょっと行って来ようかと思います」

 アタシにしか漏れ聞こえない位小さな声。

 ってかアタシにも聞こえない位遠くの話し声聞き取ってるなんてどんだけ耳良いのよ。

「ちょっと女性陣に別件のお手伝いをして頂きたいのですが、宜しいですか?もちろん別途で報酬をお支払い致します」
「それは内容を聞いてから決めてもいいのかしら」
「もちろんです。不快な思いをさせてしまうでしょうから断っても構いません」

 ビックスさんがむさい男達の話を聞きに行くから一緒に行って欲しいらしい。
 要はコンパニオンみたいな事しろって事ね。

「嫌よそんなの」

 ヴィオラが間髪入れずに答えた。

「ヴィオラには向かないわね。逆にケンカになっちゃうんじゃない?」

 とニコラ。

「私も得意じゃないな」
「リネットが行ったら相手が盛上りすぎちゃうかもね」

 酔っ払った男共に肉々しいリネット放り込んだら、えらいことになりそうね。

「そうですか」

 ビックスさんはダメ元で聞いたんでしょうね。
残念そうでもないし、粘りもしない。

「ワタシが行くわ」
「え、ニコラ大丈夫なの?触られたりしちゃわない?」
「ワタシはそう言うの何ともないし、それに誰か護衛で行かなきゃならないでしょ」

 確かに断っても誰かしら一緒に行かなきゃならないわね。
 でもそれはセドやルーシでもいいんじゃないの?

「ニコラさん、ありがとうございます」
「ワタシからも条件出してもいいですか?」
「はい。可能な限り善処しますよ」
「追加報酬要らないので一緒に私事の調査をさせて欲しいんです」
「? ええ‥‥ 構いませんよ」

 絶対紋章見せて貰うんだと思う。

「店員さん、このお店で1番上等なお酒頂けますか」

 ビックスさんとニコラはその上等なお酒を受け取ると席を外して、男共の所に向かった。


「ドーナ孤児院をご存知ですか?」

 ニーダさんが給仕の女性を呼び止める。

「はい。森の中にあるって孤児院ですよね」
「そうですね。評判とか聞いた事ありますか?」

 店員が少し怪訝な表情をした。

「あっ私、養子を取ろうと思ってまして。その孤児院に伺うんです。なのでどういう所なのか気になって」
「あ、そうなんですね。孤児院自体の事は知らないですけど、そこ出身の方は真面目だって評判ですよ」
「お知り合いにいらっしゃるのですか?」
「ええ。お客さんだったり、一緒にここで働いてた方も居ました」
「今は働いていらっしゃらない?」
「はい。つい最近、帰って手伝いをするとかで辞めてしまいました」

 戻って手伝いたいって思えるなんていい所なんじゃない。

「素敵ですね。じゃぁ悪い評判も無かったのかしら」
「そうですね‥‥ 悪いって事でもないんですけど、真面目過ぎるって感じでしたね」
「それはどういう所が?」
「施設の教えとかいうのを頑なに守ってましたね。私にはそれがちょっと変に思えたんですけど‥‥ あ、すみません。もういいですか?」
「ええ。長く引き留めてごめんなさい」

 店員は会釈すると別の席に向かった。

「『教え』って気になりますか?」

 とセド。

「そうですねぇ。でも、どこの家庭にも独自のルールはありますから、内容が分からないと何とも言えないですね」



 しばらくするとビックスさん達が帰って来た。

「どうでした?」

 男共はだいぶ飲まされたのか酔い潰れている。

「どうもこの街に飴を卸してる所があるようですね」

 もしかしてポーション飴の事なのかな。

「別件なので教会に連絡入れて指示を仰ぎましょうか」
「それなら早い方がいいですね」
「ええ。宿に戻ったらお願いします」

 そんなこんなでビックスさん達が戻って来たばかりだけど店を出ることになった。

「ニコラ大丈夫だった?変な事されてない?」

 リネットが心配する。

「大丈夫よ。男あしらうの簡単だし」

 悪い女な台詞ね。



 宿に戻るとビックスさんは何やら手紙を書いている。
 それが書き上がった頃、ニーダさんが男部屋に来た。

「調度、書き終えた所です」
「では早速」

 そう言うとニーダさんは窓を開ける。
 すると1羽の鳩が入って来た。
 その鳩の脚に手紙をくくりつけ外に返す。

「伝書鳩が教会以外に来ることあるんですね」

 セドが言う。

 たしか、教会間でしか手紙のやり取り出来ないからみんな教会に脚を運ぶんじゃなかったかしら。

「私のスキルなので普通は教会だけですよ」

 なるほど。スキルってホント色々あるのね。




 それから数日、ディチカに滞在している。

 教会の返事次第でもっと居る事にかもって話だったけど、

「別の者を派遣するそうなので、我々は明日にでも孤児院に向かいましょう」

 飴の方はよく分からないけど、滞在中に孤児院の情報は大して集まらなかった。

 みんな初日の店員さんの話とだいたい同じ。
 ただ、誰に聞いても孤児院出身の知り合いは帰って行ったと言う。
 それが1人の事を言っているのか複数の事を言っているのかまでは分からなかったけど。
 もし複数なんだったらちょっと変だなとは思う。

 明日から出発するので食材調達をしていると見知った顔が居た。

「ミゥー!」
「ナナチャどうしたって?」

 アタシが1番に気づいたのでみんなに声を掛ける。

「ディオ達がいるって」
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