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2章
【54】道中
しおりを挟む「帰ったらパーティーしよう。」
そんな事を言ってガイウスさんは送り出してくれた。
永遠の別れってわけじゃないけど、このメンバーでは最後って思うと感慨深いわね。
教会の裏に依頼主を迎えに行く。
移動はウチの馬車でらしい。
「初めまして。ビックス・マカンと申します」
「私はニーダ・ウェッジです」
現れたのは初老の男性と壮年期中盤位の女性。
2人ともほっそりしている。
こちらも挨拶を済ませ、早速馬車に乗り込む。
「ルーシさんはとてもお若い様ですけど、おいくつなんですか?」
とニーダさん。
「15才です」
「まぁ、それじゃぁ冒険者に成り立てなんですね」
「始めてから2年たちます」
「まぁ、そんな前から」
ニーダさんは口に手を当てて驚いている。
「教会の定めてる成人年齢には達しているから問題ないですが、珍しいですね」
ビックスさんは特に驚いてない様子。
「そうですね‥‥ ごめんなさい、ウチの子と変わらない歳だからビックリしちゃって」
彼女みたいな反応をする人は新鮮けど、世間一般的にはこれが普通の反応なのよね、きっと。
「皆さんの話は孫達から聞いております。とても優秀なパーティーだとか」
「お孫さん?」
誰かしら。
「はい。ナミルとコリティスをご存知ないですか?」
「え!はい。知ってます。2人のお祖父さんなんですか?」
「はい。ナミルは息子の子で、コリティスは娘の子になります。孫がいつもお世話になっております」
まさかの関係。ナミルとコリティスが従姉妹だったのもビックリだけど、こんな礼儀正しいビックスさんの血が2人に流れてるとは思えない。
いや、待てよ?メルヴィルさんもプライベートだと口調変わるし、彼もその類いなのかも。
「ルーシさんの事は特に誉めてましたよ。若いのにとても優れているとか」
あの2人も若いけどね。
でも、居ない所でで誉められるとか嬉しいわね。
「ディチカにはどう言った目的で向かうのかお伺いしても宜しいですか?」
しばらく雑談してから頃合い見定めてニコラが切り出す。
ギルドの依頼書には護衛としかなく、彼らの目的は書かれていない。
必要無いかもしれないけど知っていた方が便利なはず。
教会的に秘密とかだったら聞けないけど。
「調査です」
ニーダさんが意外とあっさり教えてくれた。
「そんな事の為にわざわざ王都から?」
ヴィオラがいぶかしむ。
もう少し踏み込んでも大丈夫なものか模索している様に見える。
ダメだったとしても、若輩者の粗そうって事でセドかニコラに注意されれば場が収まるだろうと思っての事だと思う。
確かに調査くらいなら、近くの教会とギルド支部で賄えそうなもんだもんね。
「ここで黙って居ても憶測を呼ぶだけですよ。この方々はダフ司教様の信頼も厚い様ですし」
とビックスさんが、逆にニーダさんをたしなめる。
「そうですね‥‥畏まりました。ですが、外では話さない様お願いします」
「分かりました」
簡単な依頼じゃ無さそうな予感。
まぁ、予測はしてたけど。
「私共は異端審問官です。」
声には出さないけど、皆が心の内でざわついたのが分かる。
アタシの記憶だと異端審問官て、何でもかんでも魔女だって言って拷問するヤベー奴らじゃなかったかしら。
「審問官と聞いたら皆さんそんなお顔をされますね」
ビックスさんが顎を撫でながら笑っている。
「無実の者に拷問して罪を着せると思ってらっしゃるのでは無いですか?」
そうね。そんなのに加担したくないとも思ってるわ。
「それは、どこぞの国の昔話に尾ひれが付いて広まってしまった噂ですよ」
「『異端審問官に連れてかれるぞ』って子供の頃に両親に良く言われました。」
とリネット。
「それはそれはヤンチャなお子さんだったんですね。私も良く孫に言っておりました。自分がそうなのに」
そう言ってビックスさんは声を立てて笑う。
彼ら曰く、異端審問官なんて仰々しい名前だけど、任務のほとんどが是正を促したり、改宗を勧めたりなのだとか。
なので、今回もそんな事しに行くらしい。
「拷問なんてしたくも無いですよ」
とニーダさん。
「たまに好戦的な集団と出くわす事があるのでその為に護衛を頼んでおります」
この国の審問官は王都の教会にのみ配属が許されているらしく、全国飛び回っているんだとか。
大変ね。
また雑談に戻る。
「ナミルさん達はお元気ですか?」
アタシ達は彼女達と半年位会ってない。
「ええ。元気ですよ。今は審問官になる為の最終訓練をしています」
「え、彼女達も審問官になるんですか?」
「ええ。元々、出向でギルドに在籍していたわけですから」
「知らなかったです」
「表立って言う事では無いですからね。知っていたのは少数だと思います」
言われてたって信じなかったかも知れないわね。
とてもそんな風には見えないもの。
旅路はマディナに寄ってから東に進む。
次の街まで7日掛かるらしいので1泊して食糧調達。
経費は教会持ちって話だったから良い宿には泊まれないだろうとは思っていたけど、まさかの教会内の宿泊施設だった。
施設って言うより仮眠室に近い。
食事も質素。
食べてはいけない物はないみたいだけど、基本日持ちのする食材ばかりで作られてて、精進料理みたいな品揃え。
名物のお肉食べたかったな。
この旅はずっとこうなのかしら。だとしたら楽しみが減っちゃうな。
次の街なんて運河があったり、大きな湖があったりして観光欲そそる街なのに、やっぱり教会に泊まって必要な物調達してすぐ移動。
また7日掛かるらしい‥‥
「帰りは時間取って、湖でも見に行きましょうか」
ビックスさんが気を使って言ってくれたのが有難い。
ルーシがとても行きたそうにしてたから。
「はい!楽しみだなぁ」
ルーシのワクワクが伝わってくるわ。
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