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2章

【53】パーティーの決断

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 『王家の痣』については御家の都合もあるので他言無用との事。
 そもそも誰も言ったりしないだろうけどね。

 カシウス本人は何だかよく分からない加護よりも、もう一つのスキルの練度を高める方に力を注いでる。

 受紋から1年はたったけど、毎日練習しているのにレベルアップはまだしてない。
 たぶん各スキルで経験値の増加もレベルアップに必要な量とか違うんでしょうね。



 最近、なんだかリネットの様子がおかしい。
 事ある事に教会に行っている。
 今までもパーティーの中では1番教会に通う子だったけど、頻度が違う。

「リネット、最近何かあった?」

 流石にみんな気付いていたみたいでトーラカフェで夕食中にニコラが聞いた。

「うん‥‥ 実話ね、パーティー抜けて田舎に帰ろうかと思うの」

 え、それは急ね。
仕送りしてるのは知ってたけど、何でかしら。

「それって冒険者は続けるの?」
「ううん。実家の牧場手伝うわ」
「リネットって体の弱い妹さんの治療費と、ポーション代の為に冒険者なったのよね?」

 とニコラ。
そう言う理由だったんだ‥‥

「そっちは大分貯金貯まったから大丈夫みたいで、両親もいい歳だから人手が欲しいみたいなの」
「そっか‥‥」
「どうしてもとは言われて無いんけど」
「でも、帰ろうと思ってるのよね?」
「‥‥うん、そうね。皆には申し訳ないんだけど」

 家庭の事情なら引き留める訳にも行かないか。

「丁度いいってのは言い方悪いけど」

 とニコラが切り出す。

「ワタシも抜けようかと思ってた所なの」
「え、なんで?」

 こっちこそ寝耳に水な如くみんなビックリする。

「資金も貯まったのと、魔力も体力も衰えて来てるから、研究に専念しようかと思ってるの」

 そんな、衰えるって歳でもないだろうに。

「そっか‥‥ まぁ、辞めようと思ってるのを無理に引き止めても怪我しかねないからな」

 あっさりしている様だけど、実際上の空で出来るような職業ではないからね。

「抜けるって言ってるワタシが提案するのも筋違いなんだけど」

 またもやニコラが切り出す。

「この際、解散しない?」
「は?それはあなたが言う事?」

 これには流石にヴィオラも口を挟む。

「そうなんだけどね、ワタシの都合で『二つ持ち』のみのパーティーって決めたじゃない?」
「偶然私達が揃ったから成り立ってた訳だしね」

 アタシとルーシの周りにはいっぱい居て実感無いけど、『二つ持ち』は希なこと。

「セドリックはどう思う?」
「そうだな‥‥ 3人でAランク維持するのも大変だし、他のメンバー募集するにも、やっぱり『二つ持ち』は枷だから、抜けるんだったら解散で良いんじゃないかな」
「解散した後はどうするの?」
「新しいパーティー作ってもいいね」
「そしたらわたしはそのパーティーに入るわ」

 ヴィオラはそうよね。

「ルーシは、どう?」
「ボクは‥‥」

 ルーシは戸惑ってる。
 普通そうよね。セド達が決断早すぎるのよ。

「ガイウスさんは君を学園に入れたい見たいだけど」
「うん、知ってる」

 そう言えば、あと数ヶ月で入試があるんだっけ。

「ルーシは学園に入りたい?」
「うん。学園に行ってみたい。でも、それまでの間セドのパーティーに居ちゃダメかな‥‥」
「もちろんいいよ。入学までパーティー組もう」
「卒業してまた戻って来てもいいんだしね」
「うん!」

 ヴィオラの一言にルーシは笑顔になった。

「それじゃぁ、早速明日手続きしにギルドに行きましょうか」



 翌日ギルドに出向くと、受付にはレイニーが居た。

「あら、皆さん。受付にご用ですか?」

 受付は新規か初心者くらいしか来ないから珍しがっている。

「パーティー解散の手続きをしたいのよ」
「え?あ、はい‥‥ 少々お待ちください」

 いつも冷静なレイニーでも面食らってたどたどしくなってる。

「皆さん、すみません、長室行きましょうか」

 なんだろう。解散には面談が必要なのかしら?
 レイニー同伴でギルド長室に向かう。

「どうぞ」

 レイニーがノックすると中からジークリットさんの声がした。

「ツインブレスの皆さんがいらっしゃったのですが‥‥」
「おお、入ってくれ‥‥ ん?どうかしたのか?」

 ジークリットさんは待ってたかの様な口調だったが、レイニーの様子がおかしいのを見ていぶかしむ。

「‥‥皆さん、解散されるそうです」 
「は?」


 長室に入り事情を説明する。

「なるほどね。まぁ、辞めたい奴は事故起こすからなぁ」

 結局セドとおんなじような事を言う。

「ごめんなさいね。急で」
「いや、こう言った話はだいたい急だから。でも、参ったな」

 ジークリットさんが頭をかく。

「丁度お前達指名の依頼が入った所なんだよ」
「それはタイミング悪いわね。ちなみにどんな依頼?」
「教会の神父の護衛だ。長距離で出発は明明後日」
「すごく急じゃない?」
「教会さんにも事情があるんだと思うが、あまりにも急だからウチとしても難色示してる。ただ、メルヴィル司教の推薦だから相談しようと思ってたんだよ」

 メルヴィルさんにはお世話になってるから受けるのはやぶさかではないけど、それはアタシとルーシの話よね。

「受けないとギルドの評判に関わるんじゃない?」
「まぁな。他の教会関係者より融通は利くけどな」

 親子だからって馴れ合える立場じゃ無いわよね。お互いに。

「因みに、費用は全部教会持ちだから手ぶらでもなんとかなるっちゃなるは」
「そう。セド、どうする?」
「俺はいいけど、ニコラとリネットはどうだい?」
「ワタシは急ぎって訳じゃないから依頼終わってからでも大丈夫よ」
「私も大丈夫」
「なら、これを最後の仕事にしようか」


 こうしてツインプレス最後の依頼が始まった。
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