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2章
【48】スケルトンフェス
しおりを挟むスジャと護衛班が出発し、戻って来るまでは担当を変えながらダンジョンに潜って過ごした。
警備班もずっとじゃ鈍るし、気も滅入るからね。
スジャ達が明日には戻って来るはずなので、アタシ達の夜勤は今回でお仕舞いの予定。
「すっかりクランの一員みたいなっちゃったわね」
焚き火を囲みながらヴィオラ。
「いいんじゃない?今回だけだし、魔石の分配も楽だもの」
いつの間にか報酬は割り勘にしたらしい。
その方が警備で潜らない時も報酬でるし、後で揉めなくて良いのかな。
警備は日勤も夜勤もだいたい待機。
たまに溢れてくるコボルト退治して、後は寝落ちしないようにお喋りしながら警戒してる。
とは言っても仮眠は交代で取る。
今はルーシとリネットが寝てる。
アタシは好きに寝たり起きたり。獣の特権ね。
「ルーシと出会ってそろそろ1年ね」
もうそんな立つのかぁ。
あ、教会に顔出さなきゃ行けないんだっけ?
「後1ヶ月先だけどね」
以外と詳しいヴィオラ。
「何か変わった事あった?」
サーリア絡みで、監視されるって側面もあってパーティーに加入したんだった。
忘れてたけど。
「何もないな。ルーシは素直でいい子だし、誰かと接触してるって感じもない」
「つけられてるとかも無いものね」
「やっぱり、わたし達が行った時には放棄されてたんじゃない?」
「そうだといいな」
彼女達が来てくれるまで3ヶ月間放置されてたもの。
棄てられてた方が、外に出られた今となっては良いに決まってる。
真面目な話もしたりしながら居ると日が登っり、しばらくして交代のチームが来た。
なのでアタシ達は村に戻って本格的に睡眠。
昼過ぎに目を覚ますと、丁度スジャ達が到着した所だった。
「予定通り帰って来たね。薪は揃ったかい?」
グフリアが出迎える。
「はい。何とか揃いました」
ティチが荷台から下りて言う。
荷台には15センチ位の長さで既に細かく割られた薪が山ほど積まれてる。
「戻って来るまで時間あったので準備終わらせときました」
「おお、やるねぇ」
延々5人で薪割ったのかしら。ホント、やるわね。
「これなら明日から再開出きるな。後はこれの運搬だが、リネット頼めるか?」
「大丈夫よ。私なら1人で運べるから」
今回リネット大活躍だわ。
早速、翌日4層目に向かう。
1層目のミノタウロスはニコラが凍らせるのが定石になってる。
彼女の魔力量なら3割位の消費量で済むらしいけど、潜ってる最中ずっと凍らせてると少しづつ消耗してしまうらしいので、安全な範囲で帰って来なくちゃならない。
それでも普通に潜って帰る分には何ら問題ないとニコラは言ってたわ。
2層目は変わらずサイクロプス達がうずくまっている。
ここだけは通るたんびに心が痛むなぁ。
3層目は作戦なし。スケルトンをボコりまくって進む。
で、その先で休憩ね。
「4層目は1ヶ所づつ潰して行こう」
休憩がてら作戦会議。
ツインブレスが先頭で薪を配って行き、道を作って進む。
「いいけど、ワタシ達は先行で薪配って行った方が効率良くない?」
確かに、ヴァルキュリルが探索している間に次の道作っとくって分担にした方が断然効率いいでしょう。
「それはそうなんだけどね。どれが当たりか分からないから一緒に進もう」
それも一理ある。いきなりそのまんま下層に行けたりするかも知れないもんね。
4層目の坂は余りにも緩やか過ぎて3分の2過ぎた頃には両脇からオーガが寄って来てしまうので、そこから薪を配る羽目になった。
幅4メートル位取って、1メートルピッチで置いていく。
オーガは武器持ちでリーチが長いからそれも考慮した幅。
そうやって作った道を進んで居ると何だかレッドカーペットを歩いてる見たい。
観客は強面の巨漢で殺意剥き出しだけど‥‥
まずは正面の入口に。
ここは入ると先に下って行く階段になってる。
下りた先は3層目と同じか少し狭いかな。
「またスケルトンか」
皆うんざりするほど、ここでもスケルトンがウジャウジャいる。
「やらなきゃ終わらない。皆気合い入れて行くよ!」
グフリアの喝で、3層目と同じ隊列で進む。
反対側までたどり着くと、通路があった。
ただ、人ひとり横歩きで進める程狭い通路で、尚且つ残念な事に手前が上り坂になってない。
1人づつしか通路に入れないし、順番待ち中ずっとスケルトンを叩きのめしてなきゃならない。
これはきついわね。
「全員進むのは手間だね。セドリック達、捜索して来てくれ。 それまであたい達はここで踏ん張るよ!」
そもそも、グフリアの体格だと通路は通れないかも。
セド、ルーシ、ヴィオラ、ニコラ、リネットの順で通る。
ヴァルキュリルはその間ずっと戦ってるだろうから、なるべく早く捜索し終えなきゃ。
50メートル位進むと広場になってた。
そこに首の無い馬に跨がった、これまた首の無い騎手。
小脇に生首抱えてる。
「デュラハンだ」
え、デュラハンなの? 前に見たのと様子が違うんですけど。
生首が目だけ動かしてこちらを凝視する。
ホラーなんですけど。
「ニコラ、魔法頼む!」
そう言って前衛3人がデュラハンを囲み、気を反らせて詠唱の時間を作る。
デュラハンは左脇に抱えてた生首を高く突き上げ、右手の剣と馬の脚で牽制してくる。
馬上でさらに突き上げて視界を広くして攻撃を防いでくる。
「プアトシャハリアライェティドルタクヒルイブラクジャニンフ」
「みんな離れて!」
「『水流』!」
ニコラが唱え終える間近のリネットの合図で3人はデュラハンから距離を取る。
魔法は馬の脚元一帯を水溜まりにして軽く渦を巻いている。
hihiin!
浅い水溜まりを馬は極度に嫌がり、興奮して暴れだす。
その衝撃で生首が地面に転がり、すかさずヴィオラがそれに剣を突き刺す。
生首も体も馬も煙った。
何かあっさり勝っちゃった。
デュラハンて魔獣じゃなくモンスターだと、こんなもんなのかしら?
「他には居ない様だな」
「魔晶石も無さそうだし、ボスじゃなかったのね」
魔晶石?魔石と別モノ?
「下り口ないか探ってみよう」
広場はサッカーグランドくらいしかなく、捜索は直ぐに終わる。
結果、何もない行き止まり。
「ハズレね」
「戻ろう」
「全部あんな感じなのかしら」
「どうだろうね」
「何ヵ所か繋がってるんじゃない?」
「最低でも1つは何かあるでしょ」
横歩きで戻りながらそんな会話をしてた。
結局行ってみなけりゃ分からないのは分かってるんだけどね。
「戻ったよ」
グフリア達はホントにずっと戦ってた見たい。
「どうだった?」
息が上がってる。
「広場になってて行き止まり」
「そうか。じゃぁ戻ろう」
階段の手前の上り坂で一息ついてから4層目に戻り、次は右の階段。
壁伝えに進めば片側警戒しないで済むし、薪も節約出来る。
距離は長くなっちゃうけどね。
階段を下りるとまたもやスケルトン祭り。
「またか‥‥」
心底うんざりそうな声。
それでも進むと反対側は行き止まりだった。
「2手に別れて壁沿い回るよ!」
グフリアが半ばやけくそな指示する。
2手に別れるとなると流石にアタシ達も守られてるだけでは居られないので、レブルとコリティスと一緒に時計回りで下層に下る手段が無いか探りながら戻る。
結局何も発見出来ずに入口に到着。
ここで長めに休憩。
上り坂を登って来れないにしても、側でうごめくスケルトンを完全無視出来る位みんな疲れが溜まってる。
比較的元気なアタシ達が警戒してるから問題はないけどね。
「次の階段に先があったとしても確認だけで終わろうか。」
それが良さそうね。
後ろの絶壁の右側の階段までも、同じ様に壁沿いを進む。
そして、同じ様にスケルトン。
「どんだけいるんだよ‥‥」
これは心折れる。
グフリアも膝に手を置いちゃってるわ。
「ここでお仕舞いなら俺達が戦うよ」
「ああ。頼む。もちろんあたい達もやるけどね」
レブル、コリティスと後3名を真ん中にして前方を左からセド、ルーシ、ヴィオラ。
ルーシのディアボロスはリーチがあるので、3人は広めに間隔をあける。
その後ろ両サイドにニコラとリネット。
2人がダンジョンでカットラスを抜いてるの初めて見るかも。
ルーシがディアボロスで薙ぎ払う。
それだけでボコボコ煙って行くのを見てるとスケルトンが最弱なモンスターに思えてくる。
弱点以外で煙らないのと、『武器持ち』が発生しやすいとか色々って、ゴブリンより1レベル高いらしいけど、ホントかなぁ。
今回は反対側に通路があった。
またあの激狭通路。
そこまでのスケルトンを一掃したらルーシ達はしんがりに移る。
帰りはこっちが先頭だからね。
「レブル達が戻って来るまでここを死守!」
死守って言いすぎな様だけど、散漫になり掛けてるクランメンバーをシャキッとさせる為の言葉。
戦い自体は素振りと変わらないレベルだけど、百回も素振りしたらヘトヘトになるでしょ。
元気なのはルーシだけ。
セド達も疲れて来てるし、ヴァルキュリルの連中は既に何百体相手してるか分からない。
「きゃっ!」
集中力切れてしまったのか、側面の1人が頭蓋骨を破壊しないで切り落としてしまった。
首の無い骸骨は言わば無敵。どこ砕いても襲いかかる。
他のスケルトンが蹴り飛ばしたのか、転がった首を探せないでいる。
「うしろ!」
他の人も伝えは出来ても対処してあげる余裕がない。
緊張感が走る。下手したら1人死ぬわ。
アタシが行くしかないわね。
転がった頭蓋骨まで飛び寄り、尻尾を叩き付けると粉々になり煙った。
「ナナチャ、ナイス!」
やったわ。こいつら火が効かないけど、アタシでも倒せるわ。
アタシも戦力になるって分かったので、尻尾以外の攻撃も試して見た。
1番良かったのは翼。
飛んでるだけで当たれば倒せる。ちょっと痛いんだけどね。
それがわかった後は、特に疲れてる娘を援護して回った。
レブル達が帰って来たわ。
「デュラハンが居ただけで行き止まりだったわ」
最初の場所と同じね。
「わかった。みんな戻るよ!」
「今回はアタシが最前線行くわ。」
「うん。気を付けてね」
スケルトンだったらアタシが1番相性いいかもしれない。
「君の従魔すごいね」
「うん。僕もビックリした」
アタシが誉められても嬉しそうなルーシ。
可愛いわぁ。癒されるわぁ
4層目に戻り、3層目に上がる為の坂の絶壁沿いに帰り道作って上層へ。
「もうスケルトン見たくにゃいにゃ」
そんな事言っても3層目のスケルトンが居なくなる訳もなく。
「ここもお、ナナチャちゃんに頑張って欲しいですう」
この娘達、人任せの味を覚えちゃったわね。
まぁ、疲れてるもの仕方ないか。
今後はスケルトンは全部任されてあげる。
「今後、スケルトンはナナチャが頑張るって」
「頼もしいにゃ」
3層目を進み終えたから、ルーシの頭の上で丸くなってアタシは休憩。
もう動きたくない。張り切り過ぎちゃった。
「お疲れ様」
「うん。明日も頑張るから今は休むね」
1層目の凍ってるミノタウロスの首を氷ごと切断して煙らせてからダンジョンを脱出。
村に帰えろう。
ちなみにダンジョンを出て、村に帰る前に全員の装備をルーシのスキルで直すのが恒例になってる。
「君のスキル、本当に助かるね。ありがとう」
戦闘中に壊れたらきついものね。スケルトンと戦ってる時なんて特に。
帰りの馬車の中でルーシが右の手の甲を触ってた。
うっすら紋が光ってる。
「ルーシ、どうしたの?」
「うん、スキル、変わったみたい」
そう言えばスキルはいっぱい使えばレベルアップする事もあるんだっけ。
「凄いじゃない。どう変わったの?」
「『物の形と大きさを変えられる』」
んー、どう言う事だろ。
小石を岩にしたり、鍋に変えたりみたいな感じかな?。
落ち着いたら色々試して見た方が良さそうね。
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