43 / 120
2章
【42】閑話に近い
しおりを挟む「ご指名入ったわよ」
ニコラが茶化し気味に言う。
ギルドのクエスト掲示板に指名依頼の通達が貼られている。
内容までは書かれて無いけど、指名をわざわざ貼り出すのね。
その方が冒険者のやる気が出るのかな。
「ヴァルキリルのグフリアさんから討伐クエストの応援依頼ですね」
受付はアリアが対応してくれた。
内容はパルイ村付近に発生したダンジョンのボス討伐の応援と緊急時の救助。
そのダンジョンてロジィさんと出会った時のやつじゃないかしら。
報酬はボスの魔石とクエスト報酬の1割。
それって割良いのかしら?
「旨味があるのか分からないわね」
ニコラも同じ事思った位だから割良い事は無さそうね。
「グフリアだから良い様にしてくれてるとは思うけどね」
10日後の日付にパルイ村集合とある。
「あら、受けるなら明日には出ないと間に合わないかも知れないわね」
「受けようと思うけど、いいかな?」
みんな頷く。
「あの時のダンジョンなら気になるし」
「彼女達にはお世話になったしね」
「それじゃぁ、これから旅の準備に入ろうか。ルーシともう1人で、ガイウスさんの所行って、長く出掛ける事伝えて欲しいんだけど」
「ボク1人でも大丈夫だよ。歩いて行けるし」
「それなら助かるよ。宜しくな」
「うん」
各々別れて買い出しに出て、それをセドが馬車で回収していく手はずになってるらしくって、
「最後にガイウス邸寄るから帰りは待っててくれ」
との事。
歩いて行けるとは言っても、ギルドからガイウス邸までは寄り道しないで1時間はかかる。
まぁ急ぎじゃないし、のんびり行きましょ。
馬車を引いてる馬の中には首輪のされているのもちらほら居る。
あれが全部テイムされてるんだとしたら、ホント一般的なスキルだわ。
ルーシのスキルはレアではないし一般職向きって言ってたけども、フィジカル面では冒険者の才能があると思うのよね。
スキルって進化するらしいから、もしかしたらもっと便利なスキルになるかもしれないし。
冒険者で居なくちゃならないとは思わないけど、ウチのメンバーみたいな良い人達と出逢えたのは幸運だし、出来たらずっとルーシと一緒に居て欲しいとは思う。
王都の大半を知らないからあれだけど、こう歩いてても王都でリネットやナミル見たいに体の1部が獣化した人を全然見かけない気がする。
ダンジョン街だったら良よく見かけるのに。
獣化は冒険者向きなのかしら。馬の脚とか持ってたら飛脚に成れそうだけど。
考えてみたら、首から下の獣化は見掛けたけど、頭が変化してる人も居ないなぁ。
ナミルの猫耳は偽物だし。
そんな事考えてたらガイウス邸まで後少し。
普段目に付かない事にも気付けたりして、たまにはのんびり歩くのも良いものね。
ガイウス邸の門に鳩が1羽とまってる。
鳩って冬眠しないのかな。
分からないけど、比較的暖かい気候だから関係無いのかも。
それにしても鳩をよく見るわね。
教会にもいっぱい居たから平和の象徴だったりするのかな。
「おや、ルーシさん。平日お越しとはお珍しい」
出迎えてくれたのはピレティアさん。
「クエストで遠出するから当分帰って来れないの。伝え様と思って、ガイウスさん居る?」
「畏まりました。主人に伝えますのでお上がりになって下さい」
「ルーシ、お帰り。」
リビングで待って居ると、ガイウスさんとロジィさんが入って来た。
「ルーシ殿、いらっしゃいませ」
サンペリエの人達はいつまでも『お帰り』って行ってくれるけど、側付や使用人さん達は拠点を変えてから『いらっしゃい』と言う様になった。
彼らは仕事だから、そこら辺ちゃんと線引きしてて、アタシは好き。
ルーシもアタシも勘違いしないで済むから。
「遠出するんだって?」
「うん。ダンジョン討伐だから着いても時間掛かるんだって」
「そうなのですね。何処に行かれるんですか?」
「パルイ村の近く」
「おお、皆様と出会った場所ですね。お懐かしい」
ウサギの体になったからなのか日付の概念が希薄けど、あれから半年以上はたったのね。
「今日は1人で来たのかい?」
「うん。帰りは迎えに来てくれるって」
「それは良いね。迎えが来るまでお茶しよう」
仕事は大丈夫なのか心配になるけど、サボる口実出来てガイウスさんは嬉しそう。
テルティアとカシウスは学園に行ってるので不在。
おのずと側付きの2人も。
「ルーシは学園に通いたいって思うかい?」
リビングでお茶をしながらそんな事をガイウスさんが切り出す。
そう言えば、前にもそんな事言ってたっけ。
「15歳の年の末に入試があるから受けるといいよ。推薦も出来るしね」
ずいぶん先の話だった。後、2年弱ある。
どうなんだろう、たぶん卒業したら就職に有利とかあるんだろうけど、冒険者で生計たてられてたら必要なさそうよね。
通い出したら平日潰れちゃうし。
「まだ分かんないや」
それもそうよね。
「ガイウス様はルーシ殿がテルティア様とカシウス様と一緒に学園に通って下さったら愉快だとお考えなのです」
なるほど。それは魅力的ね。
友達も増えるかな。
「まだまだ先の話だから頭の片隅にでも置いといてくれたらいいよ」
「ルーシさん。お迎えが参りましたよ」
ピれティアさんが知らせに来てくれたので、3人で玄関に行くとツインブレスのメンバーが外で待っていた。
こう遠目に見ると、スマートな人達ね。
メンバーは特にこれが根性の別れって訳でもないので、
「帰ったら、またみんなでお邪魔します」
と玄関先で挨拶だけして宿に帰る。
「馬が変わってる?」
操縦席の隣でルーシが気付く。
言われて見れば今朝より毛色が濃くて艶やかになってる。
「長旅になるからね。よく休養取ってる馬に変えたんだよ」
馬は馬屋から借り受けてるんだったわね。
「前の子達には頑張って貰ってて、そろそろ休ませたかったから丁度良かった」
アタシのイメージだと、馬って何時間でも猛スピードで走って馬車引っ張るんだと思ってだけどそんな事はない。
人と比べればそりゃ強いし早いけど、ちゃんと疲弊する。
長旅はそれも考慮して、普段より速度が遅くなるし、休憩も沢山取るようになる。
そう考えると、行く前に替えてあげるのはいい判断ね。
「宜しくね」
ルーシが2頭に声を掛ける。
耳がピクピクしてるから伝わってると思う。
トーラインに戻り、チェイオさんとセルヴィにも長く出掛ける事を伝える。
「帰ってきたら、またお話聞かせてね」
「うん」
ここの2人も良くしてくれるし、ルーシとアタシはホント出会いに恵まれてるわ。
0
お気に入りに追加
22
あなたにおすすめの小説
母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)
いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。
全く親父の奴!勝手に消えやがって!
親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。
俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。
母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。
なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな?
なら、出ていくよ!
俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ!
これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。
カクヨム様にて先行掲載中です。
不定期更新です。
アラヒフおばさんのゆるゆる異世界生活
ゼウママ
ファンタジー
50歳目前、突然異世界生活が始まる事に。原因は良く聞く神様のミス。私の身にこんな事が起こるなんて…。
「ごめんなさい!もう戻る事も出来ないから、この世界で楽しく過ごして下さい。」と、言われたのでゆっくり生活をする事にした。
現役看護婦の私のゆっくりとしたどたばた異世界生活が始まった。
ゆっくり更新です。はじめての投稿です。
誤字、脱字等有りましたらご指摘下さい。
転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜
犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。
馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。
大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。
精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。
人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。
公爵家長男はゴミスキルだったので廃嫡後冒険者になる(美味しいモノが狩れるなら文句はない)
音爽(ネソウ)
ファンタジー
記憶持ち転生者は元定食屋の息子。
魔法ありファンタジー異世界に転生した。彼は将軍を父に持つエリートの公爵家の嫡男に生まれかわる。
だが授かった職業スキルが「パンツもぐもぐ」という謎ゴミスキルだった。そんな彼に聖騎士の弟以外家族は冷たい。
見習い騎士にさえなれそうもない長男レオニードは廃嫡後は冒険者として生き抜く決意をする。
「ゴミスキルでも美味しい物を狩れれば満足だ」そんな彼は前世の料理で敵味方の胃袋を掴んで魅了しまくるグルメギャグ。
食うために軍人になりました。
KBT
ファンタジー
ヴァランタイン帝国の片田舎ダウスター領に最下階位の平民の次男として生まれたリクト。
しかし、両親は悩んだ。次男であるリクトには成人しても継ぐ土地がない。
このままではこの子の未来は暗いものになってしまうだろう。
そう思った両親は幼少の頃よりリクトにを鍛え上げる事にした。
父は家の蔵にあったボロボロの指南書を元に剣術を、母は露店に売っていた怪しげな魔導書を元に魔法を教えた。
それから10年の時が経ち、リクトは成人となる15歳を迎えた。
両親の危惧した通り、継ぐ土地のないリクトは食い扶持を稼ぐために、地元の領軍に入隊試験を受けると、両親譲りの剣術と魔法のおかげで最下階級の二等兵として無事に入隊する事ができた。
軍と言っても、のどかな田舎の軍。
リクトは退役するまで地元でのんびり過ごそうと考えていたが、入隊2日目の朝に隣領との戦争が勃発してしまう。
おまけに上官から剣の腕を妬まれて、単独任務を任されてしまった。
その任務の最中、リクトは平民に対する貴族の専横を目の当たりにする。
生まれながらの体制に甘える貴族社会に嫌気が差したリクトは軍人として出世して貴族の専横に対抗する力を得ようと立身出世の道を歩むのだった。
剣と魔法のファンタジー世界で軍人という異色作品をお楽しみください。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
攫われた転生王子は下町でスローライフを満喫中!?
伽羅
ファンタジー
転生したのに、どうやら捨てられたらしい。しかも気がついたら籠に入れられ川に流されている。
このままじゃ死んじゃう!っと思ったら運良く拾われて下町でスローライフを満喫中。
自分が王子と知らないまま、色々ともの作りをしながら新しい人生を楽しく生きている…。
そんな主人公や王宮を取り巻く不穏な空気とは…。
このまま下町でスローライフを送れるのか?
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる