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2章
【38】イレギュラーのようです
しおりを挟むまだ遠くに居るそれらもこちらに気付いている。
明らかに体格がホブゴブリンと違う。
タッパは2メートル越えてそう。ガタイもガッチガチなのが遠目でも分かる。
角が2本あり、そして何より体が赤い。
「嘘でしょ、オーガ!?」
1番目の良いリネットが言う。
「オーガって何?」
「鬼人種の上位モンスターよ。デュラハンの1コ上のレベルじゃなかったかしら」
それが3体もいる。
「こんな所に出る様なモンスターじゃないのに‥‥ どうする?逃げる?」
彼らでもそんな選択肢を抱く程のモンスターなのね。
「あっちも気付いてるから逃げるのも厳しいわね。耐性高いから魔法も効き辛いし」
徐々に近づくオーガ達。
右手には木刀の様なモノを持っている。
黒光りしてるからもしかしたら金属かもしれない。
「上の階までおって来られたらパニックになるから、ここでやれるだけの事はしよう」
とセドリック。
「ヴィオラとルーシは左右に分かれて1体づつ引き付けてくれ。倒さなくていいから俺が行くまで凌いでくれ」
鬼人種が連携しないのを見越した作戦ね。
「分かったわ。わたしの剣じゃ通らないから、削れるだけ削っとくけどトドメはお願いね」
「ああ。ニコラとリネットはサポートよろしく」
「魔法も弓矢も子供騙しにしかならないからね」
「注意を反らしてくれるだけでいいよ。撤退のタイミングはニコラに任せる。もし救出が必要だったらリネット頼む」
「「了解」」
「ルーシも無理しないで、攻撃かわすだけでもいいからな」
「うん」
ヴィオラとルーシが外に大きく広がってから前に出る。
2人が前進するタイミングでセドも動くと、オーガは上手いこと3手に別れた。
こちらが動きを見せた事で奴らが間を詰め出す。
「ロジバールさんの攻撃より速いと思いなさい」
と言っていたけど、体がデカくて重い分そうでもない様に思える。
攻撃はその分重いだろうから受けたりしないで避けた方が良さそうね。
「引き付けて、攻撃して来たら大きくかわすのがいいかも」
「うん。わかった」
アタシはルーシの後ろで彼の頭より高めに飛んで待機。
「!」
走りながら振り上げるモーションはゆっくりだったのに、右足を体ごと踏み出し一気に間合いを詰めてきて振り下ろされた木刀が予想以上に速い。
ルーシは横に飛んで避けたけど踏み込み切れなくてかわせた程度。咄嗟にディアボロスの大刃を左脇に向けて振る。
それをオーガは腕でガードする。
普段なら切り落とせていたと思う。
でも、今回は腕に少しめり込んだだけで押し返され、宙に浮いたままだったルーシは吹っ飛ばされて壁に激突した。
「ルーシ!」
「大丈夫!」
ルーシが声張って答えたので、リネットはその場に留まった。
ゴォォ!
bunn!
『火炎』食らわす。
オーガは鬱陶しいと言いたげに左手を振り、炎をかき消す。
その手はアタシの頭上をかすめた。
あれ喰らってたらアタシ粉砕してたかも。
オーガは諸に炎を喰らったのにダメージが無い。
ディアボロスの刃が当たった所がわずかに緑色になっているくらい。
これは確かに魔法も弓矢も効かなそう。
一瞬アタシに目標が移ったけど、ルーシがこの間に立ち上がったので、またルーシに顔を向けた。
オーガの振り下ろしには横に大きく飛び、横振りは後ろに飛んで避ける。
その間にちょこちょこディアボロスを振ってるので、オーガの腕に緑色が増えてる。
それが煩わしのか、どんどんルーシにのめり込んで行くので、振り上げた所でまた『火炎』を喰らわす。
効かないけど、隙を作れた。
ルーシがそれを見逃さずに右脇にディアボロスの小刃を薙ぎる。
grrr!
今のは効いた見たいね。
オーガが唸る。まるで雷みたい。
脇が弱点かも。
「脇弱いみたい!」
ルーシが声を張る。
「「了解!」」
前衛2人が返事する。
「関節も弱点みたいよ!」
ルーシが弱点見つけて、幾らかしてからヴィオラが言う。
「わかった。ニコラ、こいつが振り下ろすタイミングで足止めてくれ!」
「分かったわ」
セドと対峙するオーガは今まさに木刀を振り上げている。
「『氷牙』!」
木刀を振り下ろすオーガの両足首に氷の虎挟みが食らいつく。
そのままバランスを崩し、木刀はセドの頭をそれて肩に当たる。
鎧のショルダーを破壊しながら倒れ込んだオーガに、セドが剣を振り下ろし首が飛ぶ。
「ルーシ、膝狙って。」
とニコラ。
「ナナチャ、オーガこっちに向かせられないかしら」
リネットがそう言うので、彼女とオーガと間に降り立ち『火球』を6発連続で撃ち込む。
全て顔に当たり、流石にこちらを向いた。
ggiar!
リネットの放った矢が右目に刺さり少し左にのけ反ったオーガの左膝の裏をディアボロスの大刃が振り切る。
重心の乗った方の膝から下を切り落とされたオーガは踏ん張る事も出来ずに後ろに倒れ込んだ。
振り切った勢いで1回転したルーシが、その勢いのまま大刃を振り上げ、オーガの自重も相まって首が飛ぶ。
「ナイス!」
駆け付けようとしていたセドがそう言って、ヴィオラの方に方向転換した。
ヴィオラは持ち前のスピードで反撃の機会も与えず削っている。
傷は浅いのかもしれないけど、赤かった体が緑に見える程オーガは傷を負っていて、指を落とされたのか手には木刀が握られていない。
やっぱりスゴいわあの娘。
オーガが膝を着くと、首と頭を集中攻撃。オーガは首を手で守ってる。
後一息ね。助太刀要らないかも。
gwoOO-!
オーガがキレたのか怒号を放つ。
凄い振動波が広間の壁に反射して一瞬三半規管がやられた。
ヴィオラの動きも止まる。その場所が悪い。
オーガは両手で彼女の腕ごと体を掴み、振り上げたかと思うと、スローインみたいに投げ付けた。
50メートル位離れたルーシのそば迄吹っ飛ばされる。
頭は庇ったみたいだけど、全身挫傷で動けない。
「「「ヴィオラ」」」
ルーシがディアボロス手放して駆け寄る。
駆け寄りながら指を噛むのが見えた。
「ルーシ駄目よ!!」
彼が血を飲ますつもりなのを止める。
「なんでまたダメなの!?ヴィオラは僕の大事な仲間だよ!」
「分かってるわ。でも死ぬ様な怪我じゃない」
遅れてリネットが到着し、ルーシに抱き抱えられてるヴィオラにポーションを飲ませた。
「ポーションで間に合うならそれに頼りましょ」
「‥‥間に合わなかったらどうするの‥‥」
「その時考えるわ」
「それじゃぁ、助けられないかもしれないじゃないか!」
「ええ。そうね‥‥」
「僕は助けたいの‥‥」
「分かってるわよ。でも、アタシはルーシの事を1番に考えるから」
「うん‥‥ 分かってる」
「彼女が死にそうだったとしても止めたかも知れない。それでもどうしてもって思ったらアタシの言うことなんか聞かなくていいわよ」
「‥‥」
「その代わり、どうしてもって時まで我慢して頂戴。アタシ、今の生活が好きで無くしたくないから」
「‥‥わかった。ボクも今の生活好きだよ」
最後の1体はセドが喉元を突き刺して終わった。
「みんなお疲れ」
「まさか3体も倒せるとわね」
「ルーシも頑張ったわね。凄かったわ」
「うん。ねぇ、セド、ちょっとしゃがんで?」
そう言ってセドをしゃがむませると、ルーシは彼の鎧を触り、スキルを発動させた。
潰れたショルダーがみるみる元通りになる。
「ルーシありがとう。助かるよ」
「うん。どういたしまして」
人の役に立てる事が嬉しいのね。笑顔がキラキラしてる。
「戻って、この事ギルドに報告してから帰ろうか」
「そうね。帰りはワタシとリネットがメインで戦うわね」
「ああ。そうしてくれると助かる」
「私達、あんまり活躍してなかったものね」
「そんな事ないわよ」
ヴィオラが言う。
確かに前衛の負担は大きかったけど、後衛は大事な所でちゃんと活躍してたと思う。むしろアタシが1番役に立ってなかったんじゃないかしら?
帰りはアタシも貢献しなきゃ。
「ナナチャが帰りは先頭に立って全部焼き付くすって」
「あら、頼もしい」
ルーシ、そこまで気合いの入ったセリフは言ってないわよ?
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