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2章
【37】ベネル
しおりを挟むガイウスさんの依頼が終了してから早3カ月。
王都付近は気温の変化があまり無いらしいけど、それでも日が落ちると肌寒い。マント羽織る程度でしのげるけれど。
北に行くともっと寒いんだとか。
そんな話をしてる時のセドの感じからして北出身なのかもしれない。
ガイウス邸での稽古も後半は平日ダンジョン行って休日稽古になって、今もそれが続いてる。依頼では無いし、前ほど稽古稽古してはいないけど。
ルーシは顔出した方がいいってのと、テルティアがニコラに魔法教わったり、加護の事相談したりしてるみたいだけど、1番の理由はお風呂だわきっと。
あの日からカシウスは素直な子になった。
ガイウスさんが「反抗期開けた」って笑ってたから元々そうだったんでしょうね。
ルーシにとても懐いて、「おれも冒険者になる」とか言い出す始末。
それでもお風呂は一緒に入らないのよね。
ツインブレスは、拠点を王都に置いて主にギルド本部から依頼を受ける様にしてるので、1番近い東のダンジョンに隔日、日帰りで行くのが定番になっている。
朝から向かえば昼には着いて、4・5時間潜って帰ればその日には寝られる。
2層目でも北西のクロンのダンジョンの5倍はゴブリン湧いて出るから十分稼げちゃう。
練習に丁度いい距離なので、行きはセドに見て貰いながらルーシが馬車を操縦して、帰りはセドがってのが最近の習慣。
ルーシは隣でただ乗ってるだけの時より凄く楽しそうなの。
北東のベネルのダンジョンは街の入口の反対側にある。
全長2キロ程度の街だけど、四方をレンガ塀で囲まれてて、入口は1つしかない。
しかも入口にあるギルドに馬車を預けなきゃならないのがダルいわね。
街のルールだから従わなきゃだけど。
たぶん治安の為なんだろうし。
と言うのも、ギルド付近は娼館が並んでて、ダンジョンに向かう道のりを進むに連れて街娼が立ち並ぶ。
要は色街なのね。
昼まっから客取ってる女性は少ないし、公娼なんだろうから悪くはないけど、ウチは女性が多いから好まない街色ね。
日帰りなのはこれも理由なんだと思う。
セドに色目使って来る勇者もいるしね。
ダンジョンの入り口は勾配の効いた下り坂。一応転落防止程度に柵で覆われている。
降りると1層目。ここの1層目は6畳位しかなくて、先の下り坂まで鳥居の横棒1本足りない感じの門が4本並んでる。
これも桃の木なんでしょう。
2層目の入り口にも1本門が建っていて絶対ゴブリンが上がって来ない様になってるからダンジョンの入り口の直ぐ側で街が発展したらしい。
2層目はクロンの4層目に似てる。
あんなに綺麗じゃないけど。
このダンジョンの灯りは魔素に反応して光る石じゃなくて、苔なんですって。光り苔って言うらしい。
壁や柱に苔以外にも蔦とかがチラホラ生えている。
「今日は結構、人居るね。」
普段の倍はいるかな。ウジャウジャ沸くからそれでも大丈夫なんだけど、採集で揉めても嫌なのでもっと下る事にした。
2・3・4層目までは大して変わらないし、明日は昼間にガイウス邸に行く日だから帰りが少し遅くなっても大丈夫ね。
そんな時間に余裕があるもんだから、結局5層目まで下りて来ちゃった。
このダンジョンの4層目まではクロンの様に折り返し下って行くタイプではないので、入り口から直線で6キロは離れちゃったかな。
ここまで来ちゃうと帰りも時間掛かるからそんなに狩れないわね。
5層目は、今までの洞窟見たいな階層と違って迷宮っぽい仕様。
行き止まりは無いから迷宮ではないけど。
外周の通路を通って反対側まで行くと中心の広場に出れるらしい。
そこまで行くと時間も掛かるので、通路に幾度かある広間を2ヶ所行ったら上に戻って、帰りしなに出くわしたゴブリン狩って帰ろうって事になった。
通路と最初の広間ではホブゴブリンが現れた。
ゴブリンのおっきいバージョン。人間の大人位の大きさがあるだけで他にゴブリンとの違いは分からなかった。
沸く数も大したこと無かったので楽勝だったけど、『武器持ち』が沸く確率がゴブリンより高いらしいから注意が必要なんだとか。
『武器持ち』ってのは、素手で沸くモンスターの中でたまに武器を持って現れるモンスターの事。
武器も体の一部見たいなモノなので倒しら消えちゃうけど、武器分魔石が重くなるとか。
ただ、デュラハン位、高レベルのモンスターになると武器持って無い方が珍しいらしい。
ギルドが提示している、『単体におけるモンスター危険度レベル』。基準が1体での話だから複数体出現するダンジョンじゃ信頼度が低い。
それによると、ホブゴブリンはレベル3。
ゴブリンが1で、コボルトが4。デュラハンはレベル8。
コボルト大多数と戦ったんだから、それより格下で数も少ないホブゴブリンじゃ余裕に思えるのも無理ないか。
アタシ程じゃないにしても、みんな其なりに余裕ぶっこいてたんだと思う。
そう言う時ってイレギュラーが起こりがちよね。
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