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1章
【32】さらに下層へ
しおりを挟む2層目3層目は、1層目と造りが一緒で地図が1枚で済む。
むしろ地図なくても迷ったりしない道程だし、モンスターもゴブリンが少し増えて来るだけで初心者が経験積みやすい安心設計。
3層目で多くて4匹×2組か5匹。例外はあるらしいけどそれは希なので、アタシ達は出会さなかった。
流石のヴィオラだって1人でゴブリン5匹相手すれば引っ掻き傷くらい負う事もあるらしいけど、ルーシは無傷。
本当は食らってもすぐ治っちゃうだけなんだけどね。
それでも危なっかしいって感じではなかったので4層目に行くことが決定した。
ゴブリンがちょっと増えた位じゃ、パーティーで戦うには易しすぎるからって、ルーシには説明してたけど、あの意気った若者にバカにされた影響は大きいと思う。
そんな若さを垣間見せても、根は真面目なしっかり者達なので、とんでもない事にはならないでしょう。
今日のリネットの腰袋ははじめからパンパンだ。
「なに入ってるの?」
ルーシに聞いてもらう。
「桃の木の薪よ。持ってれば3層目まで気楽に進めるし、4層目では焚き火に使えるしね」
4層目は今迄よりもっと地図が必要ない。需要無さすぎて正確な地図が存在しないレベル。
その理由は階段ちょっと下ればすぐに分かった。
「綺麗でしょ」
天井から地面まで12メートル。上層の様な間仕切りは無く、
壁が外周を覆い数十本の柱が不規則に天井を支えてる。
その柱が仄かに青白く光っててダンジョン内をほんわか照らしてる。
「魔光石を水晶が包んで出来た柱らしいわ」
酔狂なお金持ちが観光目的で来るのも頷ける。
壁づたいに階段が伸びていて、踊り場が2箇所。
「降りるのは良いけど、登るの辛いのよね」
とヴィオラ。600段はシビレるわよね。
「あまり進む気は無いんだけど、他の人の邪魔にならない程度には移動しようか」
階段を降りきると方向転換して壁沿いを歩く。
「四方囲まれたら困るから壁際を進むのよ」
リネット、ニコラを囲む様にルーシ、セド、ヴィオラ。
ルーシが先頭で左は壁ね。
「コボルトの攻撃はなるべく受け止めない様にして。もし受けてしまって、それが爪じゃなくて牙だったら迷わず武器を捨てなさい」
4層目は、別名『コボルト狩場』。
数は3層目のゴブリンとおんなじ位らしいけど、ゴブリンよりもチームワークがいいから厄介なんだとか。
アタシの見立てだと、開けてて薄暗い地理も難易度上げてる要因に思えるけど、5層目の『コボルトの巣』に行った事ある人からすれば易しい環境なのだとか。
相手に見つかりやすいけど、こちらも見つけやすいからとか。
モンスターが先にこちらに気付いてるって感覚が上層にはあまり無くて、それだけで精神的に疲れる。
今もジリジリ来てるし。
横に5体。後ろに5体。4足歩行で体を低くして、こちらと歩みを揃えてる。
横の5体は徐々に幅寄せしながら2体だけ前に出た。
大きく曲がってアタシ達の前、30メートル辺りで立ち上がる。
「囲った気ね」
横の3体は50メートル位距離を取ってる。
後ろのは100メートル。前横のとは別グループっぽい。
「リネット、前の1匹射抜いた後こっちの1匹頼めるか?」
とセド。
「任しといて」
「その後は援護で。残りの2匹は俺がやる。ヴィオラとニコラは後ろの警戒宜しく」
「「「了解。」」」
「ルーシは前の1匹任せた。リネットの1射目で向こうから迫って来るだろうからそれを迎え撃つ。来なかったら待機。こっちから攻めには行かない事」
了解。アタシはルーシのフォローしてるわ。
「それじゃ、行くよ」
リネットの矢は頭部に命中。コボルトが煙になる。
それ切っ掛けで全体が襲って来る。前の残り1体も4足に戻って駆けてくる。
リネットが2射目を射る音。横の前側1体が煙になる。
前の1体がルーシ目掛けて飛び込んでくる。
ゴブリンみたいに高く飛んで落ち際に攻撃してくるジャンプじゃなくて、迫り上がってトップで攻撃してくる感じ。速い!
タイミングを合わせられなかったルーシがディアボロスでガードする。
その柄にコボルトが噛みつき、腕をルーシの胸元目掛けて伸ばしてきた。
ディアボロスを手放し後ろに飛んでギリギリ回避。ルーシは膝を付いてしまう。
コボルトがディアボロスを吐き捨てる。
『血の鍵』はモンスターに効果無いみたい。
「ナナチャ『火炎』!」
リネットの声で咄嗟に火ィ吹いた。
調節ミスって強めの炎。コボルトが黒こげになり煙る。
その炎に横のコボルトが怯んだのが見えたけど即座に真っ二つになって煙ってた。
「後ろも迫ってるわよ。セド、ヴィオラの応援。ルーシは武器拾ってその場で警戒。まだ居るかもしれないから見張ってて」
とニコラ。息つく暇もない。
後ろの5体は先頭1体の5角形な配置で迫ってくる。
先頭の1体がヴィオラ側にジャンプ。その瞬間2人が前に出る。
セドは剣を左手に持ち換えて右脇に構え、右手で飛んできた左の1体を突き飛ばしてから剣を両手で持ち直し、奥のもう1体とまとめて薙ぎ切る。
ヴィオラは先頭の1体を逆薙ぎで仕留め、2体目は横にステップしながら薙ぎる。そのまま手首を返さず3体目を突き刺す。
ヴィオラは剣技してるって感じでカッコいい。アタシはセドリックの力押しがタイプだけど、ルーシはヴィオラを参考にして欲しいかな。
また移動して、はじめにリネットが射抜いたコボルトの魔石を拾う。
リネットが一緒に矢も拾って何かを確認してるわ。
「うん。まだ使えるね」
「今日はここで陣取ろうか」
隊列そのままで移動を終了。後は向かって来た奴を倒せばいいのね。
基本、1方向からの敵であれば前衛のみで対応。リネットの矢とニコラの魔力はなるべく温存。
早々に斜め前から1体。横から2体、立ち上がった状態で走って来る。
「ルーシが前の1体。横のは俺が行く」
横のは奥にもう2体居るわ。4足歩行で前の奴に隠れてる。
アタシは見えるけど、人間じゃ暗くて気付き辛いかも。
「後ろに2体隠れてるって!」
「了解。ヴィオラ、左右で分担しよう」
「了解」
ルーシは両手を振り上げたコボルトの胴を裂く。
セドとヴィオラは剣を振り下ろし、前を仕留めて奥のに備える。
だが、奥のコボルトは前の奴が煙る前に、肩借りて高くジャンプしていた。リネット達を狙ってる。
「ごめん!」
ヴィオラが言うが早いか、矢と氷の杭が空中のコボルトに突き刺さる。
「ふう。今のはイレギュラーだったな。ルーシ、ナナチャ、助かったよ」
セドに誉められちゃった。
やったぁ
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