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1章
【19】冒険者登録
しおりを挟む「どうだったの?」
中央広場で待っていてくれたメンバーと合流。
「ああ。ギルドに向かいながら話すは。お前達の馬車に俺も乗れるか?」
「はい。荷物積んでないので大丈夫ですよ」
「僕達も乗れるかい?」
とガイウスさん。
「ええ、大丈夫ですけど」
「お前は自分の馬車があるじゃないか」
「いいじゃないか。僕も乗って見たいんだよ。君に説明任せとくと雑過ぎてちゃんと伝わるか不安だしね」
「同感ね」
とニコラ。他の人も頷く。
「おい、お前。」
「ほら。決まりだね」
「セドリック様、今回は私に操縦させて頂きたいです」
ロジバールさんが申し出る。
「いいですが、どうしてですか?」
「セドリック様も荷台にいらした方が聞き取り易いと存じますので」
「それは良いね。じゃぁ、隣はルーシ君が座ると良いよ」
荷台では教会での成り行きを説明してる。
外に声が漏れないようにみんな小声だ。操縦席の2人もあまり聞き取れていないと思う。
ジークリットさんとガイウスさんが義理の兄弟って件の時はさすがにビックリした声が漏れてたけど。
「それで、わたし達のパーティーに入れる事になったの?リネットはOKしたの?」
「してないわ。返事求められなかったからだけど」
「俺はつもりって言っただけだからな。相談も無しに勝手に決めるつもりはない。なんなら断ってもいいしな」
「でも、あの感じだとメルヴィル様は決定だと思ってるだろうね。司教様の思惑断ると心証悪いんじゃないかな。後見人の僕としても皆さんと一緒なのがベストだしね」
アタシ達からしても断られたらショックよ。
「ヴィオラはいやなの?」
「嫌って訳じゃないけど、これって依頼じゃないのよね?」
「ああ。そうだ」
「それじゃぁ、自分の食いぶち位稼いで貰わなきゃ困るし、最低でも自分の身位は守ってくれないとダメよね」
「それを培う為だって話さなかったか?」
「だから依頼ならともかく、わたし達に他で稼げって言うならダンジョン潜らなきゃならないし、ずぶの素人が急にAランクに入って一緒の行動したら怪我じゃすまないわよって言ってるの」
ジークリットさんの口振りにイラっとしたのかヴィオラは声を荒げる。
彼女が言っている事は正しいと思う。自分達の事もルーシの事もちゃんと考えてて、一番年下なのに一番しっかりしているかもしれない。
言葉はきついけど優しい娘。
「うーん、なら提案なんだけど」
ガイウスさんが一度腕を組んで、それをまたほどいてから言う。
「僕が指名依頼を出すから、それを受けてくれないかい?」
「どんな依頼?」
「そうだなぁ、家のボディーガードと合同訓練をしよう。週末に3ヶ月くらいかな」
「それは良いと思うけど、その成果次第でパーティーに加入させるか決めてもいいかしら」
ニコラが答える。
「それが良いね。その間はルーシを家で預かって毎日特訓させよう」
何となく話が纏まった所でギルドに到着。
「先に長室に行っててくれ。準備してくるは」
側面奥の入口から入る。
そこは小洒落た通路でソファーとテーブルまである。
位の高い人用の入口なのかしら。
そこから中に進むと階段に出た。
ジークリットさんは前に向かったので、アタシ達は先に3階に上がり長室に入って彼を待つ。
待ってる間に依頼内容を打ち合わせしてるみたい。
「待たせたな」
ほどなくしてガイウスさんが入ってきた。
「失礼します‥‥」
彼に続いて入ってきたレイニーがギャラリーの多さに少したじろぐが、知った顔ばかりだと分かると直ぐに落ち着いた。
「みなさんこんにちわ」
「ご足労かけまして申し訳ございません」
ガイウスさんが丁寧にお辞儀する。
「いえ。とんでもないです。ご丁寧にありがとうございます」
ガイウスさんとレイニーは初対面かしら。
「早速だが、彼のギルド登録をしてくれ」
ジークリットさんがルーシの肩を抱いて言った。
そしてそのままルーシを3人掛けソファーに座らせ、自分は対角の1人掛けに座る。
「わかりました」
レイニーは軽く会釈してから、ルーシの前に座った。
同時位にガイウスさんがルーシの横に座る。
「ギルド長、形式通りに進めてもよろしいですか?」
「ああ。そうしてくれ」
「わかりました。では、今回担当させて頂きます、レイニー・ネ
メリンと申します。よろしくお願いいたします」
アリアと比べてだいぶしっかりした娘ね。
「登録にあたって始めに説明させて頂きます」
ギルドは1度登録すれば全国でサービスを受けられる。
サービスって言い方が正しいかはあれだけど、冒険者、就労、日雇いと依頼、募集。全てが利用可能。
ただ、プランによって登録内容が変わるから、目的を絞って登録した方が時間短縮になるとの事。
「もちろん後からでも追加登録で利用可能です。ご希望はございますか?」
「‥‥冒険者」
「‥‥かしこまりました。では年齢確認の為、左手の甲をお見せください」
差し出された手の甲を見てる。紋章を確認してるのね。
「はい。大丈夫です。ありがとうございました。確認ですが、未成年でいらっしゃいますか?」
「はい」
「ですと、後見人を立てる必要がありますが」
「あ、それ僕です」
ガイウスさんが食い気味に名乗る。
彼の名前聞いてレイニーの目が丸くなった。
目の前の人が突然公爵様だって分かったら大体みんな同じ反応ね。
そのまま隣のジークリットを見る。彼が頷く。
「‥‥失礼しました。では、冒険者についてのみのご説明をさせて頂きますので、こちらにご記入しながらお聞き下さい」
登録用紙ね。ちょっとキメの粗い紙と万年筆を渡され、ルーシが名前から書き出す。
大丈夫だろうけど、初めての事だからアタシも用紙を覗いてフォローしてあげなきゃ。
冒険者は主に魔石採集と依頼遂行を行う。
ギルドはパーティー制を推奨しているので、個人の評価は公表せず、パーティーランクのみ公表する。
ランクはS.A.B.C.D.Eとあり、Sランクパーティーは現在存在しないらしい。
死亡リスクが高いので任意だけど、遺書を書いておく事を薦められたわ。
「記入はおすみですか?」
全部は書けてない。
「彼は読み書き慣れてないから、残りは君が代筆してくれるか?」
ジークリットさんがフォローする。
「わかりました」
慣れてないのは確かだけど、書きようがないのよ。
「‥‥お名前は、ルーシ様。名字を教えて頂けますか?」
ルーシに名字は、たぶんない。
サーリエと同じが常かもしれないけど知らないし、同じにしたくないわ。
「ないです」
「ない?分からないって事ですか?」
「彼は辺境出身で、みんな同じだから、名字って習慣がないんですよ。彼はペレグリノ。ルーシ・ペレグリノです。」
ガイウスさんが咄嗟に嘘を付いてくれた。
ルーシ・ペレグリノ。なかなか格好いいんじゃない?
「では、お住まいは宿になりますか?」
「しばらくは僕の家に滞在します」
「では、こちらに記入お願いします。一緒に誓約書の方にもサインをお願い致します」
ガイウスは渡された2枚の用紙に素早く書き込んで返した。
「ガイウス、書面ちゃんと読まないでいいのか?」
誓約書だもんね。
「大丈夫。さっきからこっそり読んで置いたから」
そうなんだ。やるわね。
ジークリットさんも分かってて聞いた節があるわ。
「‥‥後は大丈夫そうですね。では、プレートの製作をしてきますね」
そう言ってレイニーが立ち上がる。
「レイニー」
扉に手を掛けた位でジークリットさんが引き留める。
「なんですか?」
「下で何か聞かれても黙っててくれな」
「‥‥大丈夫です。ギルド長に口説かれたって言っておきますね」
「え?いや‥‥ ちょっと‥‥」
レイニーが冗談言いっぱなしで出ていってしまったのでジークリットさんが困惑している。ちょっと可愛らしいわ。
「ジークリットさん!彼女とそう言う関係だったの?」
「どういう関係だよ!ただの上司と部下だは」
「あれは脈ありな発言でしょ」
ニコラも茶化す。
「貶めようとしてるだろあれは」
「そうでしょうか。広めて既成事実にしようとしているのでは?」
まさかのロジバールさんまで。
「それは良いね。彼女が義理の妹か。良さそうな子じゃない?お兄さん」
「お前らふざけるなよ!」
ジークリットさんの顔が赤くなって、さらに可愛らしいわ
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