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1章
【11】教会とホテルとトイレ
しおりを挟むマディナは、王都に近くて、牛の産地も近いから行商が多く立ち寄るらしい。
行商が王都に着く前に売ってしまいそうな掘り出し物とか、新鮮な牛を求めて偉い人がプチ旅行に来たりするらしいわ。
この街の教会は大きくて立派だ。
教会と言うよりは神殿ぽいけど、アタシがそう思うだけでこの国の教会はみんなこんな感じなのかも知れない。
白くて大きな柱が三角屋根を支えてる。
派手な装飾はなく壁の1番高い場所に刻まれてるシンボルは、正三角形とダイヤモンドみたいな五角形が合わさった模様で六芒星に似てる。
教会の正面には大きな扉が2つあって左が押しで、右が引きで開かれてて、左から入って右から出る流れが出来上がってる。
人も多いけど、鳩がやたら出入りしてるわ。
中に入ると奥に祭壇があって、その更に後ろに三体の大きな像と五体の像。
大きい三体が人の2倍位で五体の方が等身大ってところかしら。
神様と偉人って感じかな。
祭壇の前にはベンチが並んでいて、座って祈る人がちらほら。
それ以外のほとんどの来訪者は左右どちらかのの壁際に並んでる。
その先にある長テーブルが目当てみたい。
左右のテーブルの奥には棚があり、右側のにははさっきから入ってくる鳩が止まってて、左側はポーションが入ってたのと同じ小瓶が並んでる。販売所かしらね。
鳩も売り物?
「皆で並ぶ必要はないですし、混んでてルーシ殿も疲れてしまうでしょう。座って待ってて頂けますか?」
「分かりました。そうさせてもらいます」
セドリックは早々にルーシを連れてベンチに座った。
護衛任務はいいのかしら。一応は右の壁際に並んでるロジバールさんを目でおってるけど。
そもそも剣も鎧も宿に置いて来ている。
街で兵士以外が武器を携帯するのは禁止なんですって。
治安的にそりゃぁそうよね。
リュックや鞄に入れたり、布で包んで直ぐに取り出せない様にすれば、荷物扱いで持ち歩きOKとか言うガバイ規則だけど、それでも教会内ではかなり厳しいらしいわ。
だから教会内だから少し離れても大丈夫って事なんでしょうね。
それにしても丸腰のセドリックを初めて見たけど、捲った袖から伸びる腕が引き締まってて、いい血管さてるのよね。
見とれちゃうわ。
ロジバールさんを待つ間、セドリックが八体の像について話してくれたわ。
アタシ達って無知な知りたがりだから、ある意味話題に事欠かないわね。
大きい三体の像はやっぱり神様だった。
真ん中の地面まで届きそうな長いお髭の像が主神で、右の巨乳が母神。左のツインテールが妹神の像。
神様の事を名前で呼ぶ事はないらしい。
長い髭が叡智、巨乳が愛情、ツインテールが無垢さを表してるんですって。
特に胸の大きさと愛情の深さは比例しないと思うんだけど‥‥
セドリックもそう思ってるみたいで、あくまでも分かりやすい表現だと小さな声で言ってた。
「この三柱を崇めているので三神教と言うんだよ」
国と名の付く所のほとんどがこの三神教を国教としてる。
それ以外の宗教も三柱の内の一柱だったり二柱を崇めているのが大抵らしい。
「両親を敬うか、片親だけか、兄弟で違うのと大差無い」
セドリックは教えに対して客観的なのかしら。
丁寧に説明してくれるけど、冷めた感じがするわ。
「前の五体はみんな似てるけど、教祖から四代目教皇までの姿を表している」
確かにちょいちょい違うけど、一体づつ見せられたら区別出来ないかも。
五体の立ち位置で判断出来るらしいわ。
真ん中が教祖グリンデラ。開祖ね。
右が初代教皇プォイプス。全世界に教えを広めた人で、左が二代目教皇カトー。この人が長さとか重さとか、物差しの基準を定めた。
両端の右が三代目トリトダ。左が四代目ツェシュフレイン。特にこの二人が有名らしい。
なんでも、四代目のスキルで三代目のスキルを教会自体のスキルに置き換えたから本人達が亡くなっても加護は残ってて、教会に属する者は三代目のスキルを使う事が出来るとか。
それは凄い事で、教会の権威の一辺を担ってる。
その三代目のスキルってのが、ポーションの生成と『伝書鳩』。
ずっと気になってた大量の鳩がそれで、教会間なら全世界何処でも手紙を届けてくれるらしいわ。
宛先の教会と宛名を祈れば一っ飛び。着いた先で相手が宛名を祈れば鳩が寄ってきて手紙を渡してくれる。
スキルで出来た言わば魔法の鳩だから鷲等に襲われる心配もなく、2、3日で届くからこれが世界の主な連絡手段になってる。
届いてるかどうかは教会でしか分からないから、自ずと教会に通う様になる。
教会からしたら凄いメリットなんでしょうね。
五人も馴染みの無い人の名前とか覚え切れないなぁとか考えてる内に、ロジバールさんの用が済んだみたいなので宿に戻った。
途中、出店で夜ご飯を買って帰る。
豚の串焼き1本、鉄銭1枚。牛の串焼き2本で鉄銭1枚と半鉄銭1枚ってお値段。
大銀貨1枚が小銀貨10枚で、鉄銭100枚。半鉄銭200枚と同じ価値。だいたい月収大銀貨20枚なんだったら‥‥ いつの時代も出店は割高ね。
「おかえり」
部屋では女性陣がソファーでぐだってた。
「部屋風呂って幸せね。気兼ねなく入れるし。湯船も広いから3人で長風呂しちゃった」
ゆで上がってるのね。
「串焼き買ってきたよ」
「わぁ、ありがとう。この街のお肉は美味しいのよね」
「ご飯食べたら、ルーシもお風呂入って来たら?スッゴいから」
串焼きは絶品だった。移動中も村でも干物をふやかしたお肉しかなかったから、ルーシも感激してたわ。
お風呂前におトイレ行っとこっと。
「ナナチャって、ちゃんと躾られてるなぁって思ってたけど、トイレ使うってすごくない?」
何にも考えずにドア開けてトイレに入ったけど、言われて見れば不自然よね。でも、だからって動物みたいにその辺でおトイレするとか出来ないわ。
それだけは無理。
ジャー
タンクの横の紐を引いて水流して、タンク上にある石ころ触るとまた水が貯まる。
檻のトイレも同じで、全然気にしてなかったけど、この石ころって魔石じゃない?
そもそも魔石に触れると水溜まるってのも不思議よね。
お風呂もそう。浴槽にある蛇口の上に魔石があって、触るとお湯が出たり、別のもう1つからは水が出る。
シャワーヘッドは握るとお湯が出てくるし、どんな仕組みなのかしら。
とルーシにシャンプーして貰いながら考えてたけど、湯船に浸かったらどうでも良くなってきちゃった。
お風呂を上がると、片方の寝室のベッドをくっつけてる所だった。
女3人、川の字で寝るんですって。
もう1つの部屋はルーシとロジバールさんが使って、セドリックはソファーで寝るらしいわ。
男性陣もベッドくっつけて寝ればいいのに。
「あら、ルーシ、もう寝るの?」
ご飯食べてお風呂入ったらそりゃ眠いわよね。
「うん。おやすみ」
ふかふかのベッド、アタシも脇に潜り込む。
彼の寝つきの良さは半端無いわ。もう寝息かいてる。
「中央広場から西に進んむか、西門から入って西町公園に行って頂ければ、その後は道案内致します」
大人たちの話声が聞こえる。
「王都に着いたら2人ともお別れね」
「寂しくなるわね」
「ルーシ殿はその後どうなさるのですか?」
「ギルドに引き渡した後の事は分かりません」
「そうですか‥‥」
そうよね。なんだかんだ楽しい旅だったから忘れてたけど、王都に着いたらアタシ達どうなるか分からないのよね。
一旦成り行き見るしかないけど、いざと言う時の事も考えなくっちゃね。
次の日、みんなが起きたのは昼過ぎだった。
「ベッドが良すぎて寝坊しちゃった」
「私も気が緩んでしまいました」
まさかの全員寝坊でみんな笑ってる。
「せっかくだから昼食食べてから出ますか」
「それでしたらオススメのランチがございますよ」
「それは楽しみね」
和やかな雰囲気。残りの旅路はこんな感じで行けたらいいなぁ
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