【禁術の魔法】騎士団試験から始まるバトルファンタジー

第３章 特別任務

特別任務 ４３

　空が白み始め夜が開ける頃、トーブと共に８人のシエンナの騎士がやってきた。昨日、小屋で挨拶したカーディや、カルハイム隊の隊長の髭の濃いブレスもいた。トーブが小屋の中に駆け込んで来る。

「レイ、ノア！　無事か？」
「ああ……だが、すまないディック班長は……」

　レイはゆっくり立ち上がると目を伏せた。入ってきた皆がディックの遺体に気付き、目を背ける。ブレスが、レイとノアの前まできて「よくやった。そしてよく無事で」と労いを言ったあと、ディックに向き直り敬礼をした。皆もそれに倣い敬礼をする。とても長い敬礼だった。

　それからの事はカルハイム隊の皆が、手分けして作業を行なった。シエンナ本部への伝令。広場で回収作業、そしてディックはカルハイムに運ばれ、先日亡くなったカルハイム隊のルドンとワールと共に、共同墓地に丁寧に埋葬された。

　レイとノアは病院にて手当を行いシエンナの本部からの伝令を待った。トーブもやってきてお互いの無事を改めて確認しあったが、その後は口数少なくトーブですら黙りこんだ。レイは、ここにディックがいない事が、いまだに信じられなかった。今にでも入口の扉が開いて「何してる帰るぜ！」と顔を出してくれるんじゃないかという感じがしていた。

「俺たちを守ってくれたんだな」

　トーブが呟いた。

「ああ」

　レイは窓の外を見ながら、ディックは「そういう勇敢な男だ」と改めて思った。窓の外はレイたちの気持ちとは裏腹に、雲ひとつなく晴れ渡っていた。



　昼過ぎには伝書鳩がやってきた。こちらにソルトを含む隠密部隊のものが３人やってくる旨、そしてレイとノア、トーブはすぐに帰還するよう書き記されていた。その日の晩にはコーブ農園に、次の日には北の詰所を目指して馬を走らせた。風が強く借り物のマントがはためいた。

　そして途中の丘でソルトの一団と出会った。