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第1章 シエンナ騎士団

シエンナ騎士団 6

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「お前、幾つだ?」
「そこに、16って書いてあるでしょ?」
「だから読めねえーって言ってんだよ」

 老騎士は汚れた羊皮紙にもう一度目を近づけた。

「そっちのお前は15か」
「はい」
「お前ら、ここで死んでも、その故郷に1通手紙がいくだけだ。そして、ここはどこよりも死が近い。分かってるのか?」
「手紙は要りません」
「手紙はいらない」

 レイとノアの声が重なって問いに答えた。
 レイはノアを見た後、話を続けた。

「祖母が亡くなり、ノースレオウィルにはもう誰も親族はいません」
「それでもな、一応知らせる決まりになってるんだ。誰か知ってるやつぐらいはいるんだろ」
「……それでは、剣術を教えてもらっていた師範の奥さんの元に」
「覚悟はあるのか?」
「はい」

 レイは手を握りしめた。

「そっちのお前は、どうだ」
「ある。ある。おおあり。だからお願いします。受けさせて下さい」
「で、どこにする連絡先は」
「そ、それは…… もう、誰も。一人もいないから」

 身を乗り出していたノアが急に小さくなる。

「うーん?」
 老騎士が怪訝な顔をノアに見せる。

「あ、でも。気にしないんで、手紙はいいです」
「そういう問題じゃないんだ」
「……」

 ノアは下を向いて目を逸らし押し黙っていた。
 レイが、それを見て一歩前に出る。

「その手紙の差し出し場所は、私と同じ所ではダメですか? あるいは自分自身にでもいい」
「……レイ」

 老騎士の視線に耐えながら二人は返答をじっと待った。
 しばらく考え込んでいた老騎士が立ち上がった。
 
「いいぜ行きな。おい、こいつらも試験場へ連れて行ってやってくれ」

 そう言うと、近くに若い騎士が二人やってきて一緒に詰所を出る。出掛けに老騎士に声をかけられた。

「俺の名はヴィベール。頑張んな。あ、そうそう、ここでは簡単に『何でもやる』なんて言うんじゃねえ。本当に何でもやらされるぞ。わかったな」

 レイが会釈をした横で、ノアが「わかった」と陽気に答えた。

行きな生きな。死ぬなよ」

 ヴィベールが呟いた言葉を背に、二人は詰所を後にした。
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