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第1章 シエンナ騎士団
シエンナ騎士団 1
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東の大街道沿いの要塞都市シエンナには、国境の街道を守るシエンナ騎士団があった。騎士団とは言っても名ばかりで、ここ東の要所シエンナで汚れ仕事をやらされる、傭兵隊に毛の生えた程度の集団だ。ここを治める領主トラヴィス直属の騎士団でもないし、もちろん強大な力を持っている中央、国王直属の騎士団とは何の関わりもない。
それでも、シエンナ騎士団に入れれば、身分が保障され、衣食住に困ることはなく生きていくことはできる。この時代、それが目当てでここシエンナにやって来る者も多かった。
辺境の北の地からやって来たレイもその一人だった。まだ少し幼なさの残る顔立ちながら、鍛え上げられた体と身のこなしからは剣術を修練して来た者の姿勢が窺えた。
賑やかな街道を抜け、東の一角、要塞内の空間を南北に切り分けている重々しい石造りの壁沿いを歩いていく。やがて見えて来たシエンナを印象付けるオレンジ色の巨大なアーチ門。開け放たれたこの門の向こうはシエンナ騎士団の領地となっていた。
レイは力を込めて入り口に立ち空を見上げた。
胸にかけた形見である輝星石のペンダントを握りしめると、気持ちに呼応する輝星石が黄蘗の光を鈍く放った。レイは昂る気持ちを落ち着け、「強く生きなさい」と祖母が残してくれた言葉を噛み締めていた。
不意に、背後に鋭い視線を感じ身を交す。
「あんた強そうだね」
見ると小柄な少年が樹木に身を預け細身の剣を片手にニヤニヤとこちらを見ていた。いや女か? 乱雑なクシャクシャの髪が少年を思わせるが、よく見ると整った目鼻立ちは少女の面影を残している。
彼女は剣を簡素な装飾が施された鞘に収めると、こちらに近づいてきた。革製の可動域の広い軽装な鎧にブーツ。下手をすると盗賊の様な出立ちにも見える。
お小遣いでもねだって来るのかな?
レイはゆっくりと剣の柄に手を置いた。
「子供に用はない」
彼女は止まり、まるで品定めでもするかの様にジロジロとレイを眺めたあと溜息をついた。
それでも、シエンナ騎士団に入れれば、身分が保障され、衣食住に困ることはなく生きていくことはできる。この時代、それが目当てでここシエンナにやって来る者も多かった。
辺境の北の地からやって来たレイもその一人だった。まだ少し幼なさの残る顔立ちながら、鍛え上げられた体と身のこなしからは剣術を修練して来た者の姿勢が窺えた。
賑やかな街道を抜け、東の一角、要塞内の空間を南北に切り分けている重々しい石造りの壁沿いを歩いていく。やがて見えて来たシエンナを印象付けるオレンジ色の巨大なアーチ門。開け放たれたこの門の向こうはシエンナ騎士団の領地となっていた。
レイは力を込めて入り口に立ち空を見上げた。
胸にかけた形見である輝星石のペンダントを握りしめると、気持ちに呼応する輝星石が黄蘗の光を鈍く放った。レイは昂る気持ちを落ち着け、「強く生きなさい」と祖母が残してくれた言葉を噛み締めていた。
不意に、背後に鋭い視線を感じ身を交す。
「あんた強そうだね」
見ると小柄な少年が樹木に身を預け細身の剣を片手にニヤニヤとこちらを見ていた。いや女か? 乱雑なクシャクシャの髪が少年を思わせるが、よく見ると整った目鼻立ちは少女の面影を残している。
彼女は剣を簡素な装飾が施された鞘に収めると、こちらに近づいてきた。革製の可動域の広い軽装な鎧にブーツ。下手をすると盗賊の様な出立ちにも見える。
お小遣いでもねだって来るのかな?
レイはゆっくりと剣の柄に手を置いた。
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