代償【リレー小説】

緑井 藻猫R

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1/7 シモーネ

M-4

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 シモーネが僕に近付いてきた。花を口に含んでいても、この香り。

「近付くな」

 もう突き放そう。もう嫌だ、食べたい、あっちへ行け、こっちにおいで。

 矛盾する二つの想いが僕の中で綱引きをする。

「お兄ちゃん、お願い、一緒に行こう」
「無理だ、無理なんだ!」
「大丈夫だよ、一緒に」

 シモーネの手のひらに滲んだ血が目に飛び込んできた。

 もう、勘弁してくれ。

 僕は何もしていない、なのに何故こんな目に遭わなければならないのだろう。あんまりだった。

「その血を舐めさせてくれ」

 口が滑った。

 シモーネは、訳がわからないという顔をしていた。

「僕は、悪魔になったんだ」
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