代償【リレー小説】

1/7 シモーネ

Ｉ-３

　僕は舌舐め吊りしながらその匂いに近づいていく。

　ああ。もう、我慢の限界だ。早く、出てこい。

　僕がじッと獲物を待ちわびていると、中にいる女性はそっとドアを開く。か細い手がドアにかかった瞬間僕はその手を強引につかんで引っ張り出した。

「きゃぁ！！」

　引っ張り出された女の子を見る。

「な、なんで……ここに、いるんだ」
「ごめんなさい！　お兄ちゃん！！」

　そこに隠れていたのは最愛の妹シモーネだった。

　途端、止まらなくなる涎。僕はシモーネを突き飛ばして花を探した。なりふりなど構っていられないほど急を要していた。

「お兄ちゃん、どうしたの？　らしくないよ？」