代償【リレー小説】

1/3 食欲

Ｍ-１

　海の中は暗い。それでも僕の目には色彩が鮮やかに映って見えた。

　魚の群れに飛び込み1匹口で捕まえそのまま食してみる。海水が口の中に入ってくるが、違和感はない。
くるりと上を向くと、遥か先には水面に映る月が揺らいでいた。

　この快適さに僕は微笑む。

　手のひらに握りしめる、残りの鱗。

　水の中にいる限り、僕の肌にはもう刺さらない。

　これを家族に飲ませるのだ。そして、僕の肉の一部を食べさせればいい。先程の化け物は僕を食べ物と認識いていた。であれば、僕の肉にも今はもうあの力が備わっている筈だった。

　他者を完全な不老不死の化け物に変容させる力が。