代償【リレー小説】

緑井 藻猫R

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1/2 海の化物

I-1

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 僕の切迫した気持ちとは裏腹に老人は卑しい引き笑いをするばかりだ。

「おい、なぜ答えない」
「まずは、ご自分の眼で確かめてくると良い。鱗を煎じて飲め。さすれば……ひっひっ」

 そこまで言うと老人はくるりと背を向けて寝転んだ。

「おい待て。僕には時間がない。その海へはどう行けばいい?」

「この納屋を出て東へ歩くとすぐに海に出る。だが気をつけろよ? 夜の海ほど怖いものは無い」
「……行ってみてくるだけだ」

 僕はコートを身に纏う。荷物をここに置いてこうか迷ったがこの老人に触られたくはない。結局来た時と同じ格好で納屋を出た。

「じゃぁのぉ」

 老人の黄色い歯が笑った。
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