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運命の・で・あ・い!?
第10話 拡散されたBL展開?
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外が騒がしい。売れないアイドルを追いかけるほど、マスコミはヒマな時間なのかとため息をつきたくなった。
いつの間にか、嬉しくない形で、また、SNSのトレンドに上がっている『如月湊』が、どうしようもなく切ない。ついでといってはなんだが、『BL』もトレンドに入っている。
「大変申し訳ございません。このような写真が出回るようなことがないように、一般の生徒には注意深く説明をしていたのですが……」
「それでは困ります。こちらとしましても、如月のイメージというものがありますから、どうするか、今後、社長との話し合いもした上で、なにかしらの報告をさせていただきます。今回の写真の相手は一般の生徒さんです。こちらも、問題はあったかと思いますが、信頼してこの学校へ通わせていますので」
例の写真が出回ってから、1時間もしないうちに小園は学校へ副社長を連れて来た。僕らは応接ソファにかけて、それぞれのスマホを見ている。どんどん拡散されていく写真。
すごいな……。僕があげても、コレほどの反応はないのに。
悔しいような何とも言えないもどかしさに、モヤモヤとしていた。隣でずっと黙ったままの陽翔を盗み見ると、なんだか笑っている。何がおもしろいのだろう。わからないが、本人が気にしてないのなら、いいのかもしれない。
もう一度視線を戻して、大人たちの話合いをぼんやり聞いていた。ときおり「一般の生徒」や「一般人を巻き込むのは」というのが聞こえてきて、ハッとした。
「あぁーっ!」
「なんだ、湊! 煩いぞ?」
小園に注意され「悪い!」と謝り、続けてと手で合図した。それを見て、副社長も怖い顔をしていたが、学校との話合いに戻っていく。
視線を感じてそちらを向けば、陽翔がこちらを見上げていた。
「そういえば、話があるって言ってたな? こんなことになって、すっかり忘れてたけど……」
「そう、そうなんだ! 僕も忘れてたけど……葉月くん!」
「改まって、なんだよ? 何? 変な頼みごとは勘弁な?」
少し距離を取ろうとする陽翔に詰め寄った。まさに、BL展開と言えるほどに、距離を縮めるとさらに逃げる陽翔が、ソファからズルっと落ちかける。落ちないように脇に腕を回したところ、ソファで押し倒したような格好になってしまった。
「みーなーとぉー!」
小園の声が聞こえてくるが、下にいる陽翔の瞳から目が逸らせなかった。吸い込まれるようなその瞳に、胸が高鳴る。
「歌ってくれないか? 僕のために。陽翔の歌、聞きたい」
「……歌?」
「あぁ、僕と一緒に……東京のドームを目指してほしいんだ」
見つめ合って話していると、急に襟首をつかまれ、陽翔との距離が開いていく。僕を見ていた瞳は天井を見て、考えるようにしていた。
そんな陽翔を見つめるだけで、それ以上何も言えなかったが、あの歌声が僕の歌を歌ってくれるなら……と、熱いものを感じずにはいられなかった。
「湊! 今、お前がしでかしたことを話し合っているのに、何をしているんだ!」
「ごめん、ちょっと……」
思いふけっていたのにゴチンと頭を小突かれ一気に目が覚めたような感覚になる。
……僕、今、何をした?
覆いかぶさってなかったか? と、恐る恐る視線のピントを合わすと、いきなり陽翔は笑いだす。それも、さも、おかしそうに。それを僕も含め、小園や副社長、校長を始め学校側の何人もがポカンと見てしまう。
「如月のために歌うのか? 俺が?」
「……あぁ、嫌か?」
「おもしろすぎて、腹いてぇ!」
「……そんなにか? 僕は、葉月くんとなら、東京のドームも夢じゃないって」
「あはっ、無理だろ? 俺、素人だし、そんな夢は追いかけないって」
「……そっか、そうだよね」
「そんなしょぼくれんなって。そういえば、今SNS見てて知ったんだけど、売れないアイドルなんだってな?」
陽翔に「売れないアイドル」と言われ、唇を思いっきり噛んでしまった。たくさんの人にもファンにすら言われることがある「売れないアイドル」の一言がこんなにも傷つく言葉だとは思いもよらなかった。
「……そうだよ。新曲だしても、いいところ122位だ」
「122位? それでも諦めずに、トップのwing guysだっけ? 追いかけたいの」
「追いかけたいわけじゃないっ!」
「へぇー」っと、こっちを覗き込むように、挑戦的な視線を送ってくる。だが、今しがた、「売れないアイドル」と言われたばかり。落ちた視線の先で、陽翔がにぃっと笑う。
「I think about you. I just wanted to tell you」
「……それ」
「俺、この曲だけは知ってるわ。如月が歌ってるんだな。今、見ててビックリした」
新曲の1フレーズが陽翔の少し高い声で校長室に響く。聞きなれたはずの歌詞に思わず涙が零れた。
いつの間にか、嬉しくない形で、また、SNSのトレンドに上がっている『如月湊』が、どうしようもなく切ない。ついでといってはなんだが、『BL』もトレンドに入っている。
「大変申し訳ございません。このような写真が出回るようなことがないように、一般の生徒には注意深く説明をしていたのですが……」
「それでは困ります。こちらとしましても、如月のイメージというものがありますから、どうするか、今後、社長との話し合いもした上で、なにかしらの報告をさせていただきます。今回の写真の相手は一般の生徒さんです。こちらも、問題はあったかと思いますが、信頼してこの学校へ通わせていますので」
例の写真が出回ってから、1時間もしないうちに小園は学校へ副社長を連れて来た。僕らは応接ソファにかけて、それぞれのスマホを見ている。どんどん拡散されていく写真。
すごいな……。僕があげても、コレほどの反応はないのに。
悔しいような何とも言えないもどかしさに、モヤモヤとしていた。隣でずっと黙ったままの陽翔を盗み見ると、なんだか笑っている。何がおもしろいのだろう。わからないが、本人が気にしてないのなら、いいのかもしれない。
もう一度視線を戻して、大人たちの話合いをぼんやり聞いていた。ときおり「一般の生徒」や「一般人を巻き込むのは」というのが聞こえてきて、ハッとした。
「あぁーっ!」
「なんだ、湊! 煩いぞ?」
小園に注意され「悪い!」と謝り、続けてと手で合図した。それを見て、副社長も怖い顔をしていたが、学校との話合いに戻っていく。
視線を感じてそちらを向けば、陽翔がこちらを見上げていた。
「そういえば、話があるって言ってたな? こんなことになって、すっかり忘れてたけど……」
「そう、そうなんだ! 僕も忘れてたけど……葉月くん!」
「改まって、なんだよ? 何? 変な頼みごとは勘弁な?」
少し距離を取ろうとする陽翔に詰め寄った。まさに、BL展開と言えるほどに、距離を縮めるとさらに逃げる陽翔が、ソファからズルっと落ちかける。落ちないように脇に腕を回したところ、ソファで押し倒したような格好になってしまった。
「みーなーとぉー!」
小園の声が聞こえてくるが、下にいる陽翔の瞳から目が逸らせなかった。吸い込まれるようなその瞳に、胸が高鳴る。
「歌ってくれないか? 僕のために。陽翔の歌、聞きたい」
「……歌?」
「あぁ、僕と一緒に……東京のドームを目指してほしいんだ」
見つめ合って話していると、急に襟首をつかまれ、陽翔との距離が開いていく。僕を見ていた瞳は天井を見て、考えるようにしていた。
そんな陽翔を見つめるだけで、それ以上何も言えなかったが、あの歌声が僕の歌を歌ってくれるなら……と、熱いものを感じずにはいられなかった。
「湊! 今、お前がしでかしたことを話し合っているのに、何をしているんだ!」
「ごめん、ちょっと……」
思いふけっていたのにゴチンと頭を小突かれ一気に目が覚めたような感覚になる。
……僕、今、何をした?
覆いかぶさってなかったか? と、恐る恐る視線のピントを合わすと、いきなり陽翔は笑いだす。それも、さも、おかしそうに。それを僕も含め、小園や副社長、校長を始め学校側の何人もがポカンと見てしまう。
「如月のために歌うのか? 俺が?」
「……あぁ、嫌か?」
「おもしろすぎて、腹いてぇ!」
「……そんなにか? 僕は、葉月くんとなら、東京のドームも夢じゃないって」
「あはっ、無理だろ? 俺、素人だし、そんな夢は追いかけないって」
「……そっか、そうだよね」
「そんなしょぼくれんなって。そういえば、今SNS見てて知ったんだけど、売れないアイドルなんだってな?」
陽翔に「売れないアイドル」と言われ、唇を思いっきり噛んでしまった。たくさんの人にもファンにすら言われることがある「売れないアイドル」の一言がこんなにも傷つく言葉だとは思いもよらなかった。
「……そうだよ。新曲だしても、いいところ122位だ」
「122位? それでも諦めずに、トップのwing guysだっけ? 追いかけたいの」
「追いかけたいわけじゃないっ!」
「へぇー」っと、こっちを覗き込むように、挑戦的な視線を送ってくる。だが、今しがた、「売れないアイドル」と言われたばかり。落ちた視線の先で、陽翔がにぃっと笑う。
「I think about you. I just wanted to tell you」
「……それ」
「俺、この曲だけは知ってるわ。如月が歌ってるんだな。今、見ててビックリした」
新曲の1フレーズが陽翔の少し高い声で校長室に響く。聞きなれたはずの歌詞に思わず涙が零れた。
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