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運命の・で・あ・い!?
第7話 見つけた! 僕だけの……
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「はぁーるのぉ~う~」
あぁ、あの声だ! 昨日の夕方聞いた……なんだよ、また、教科書の歌ってるのか?
微かに聞こえてくるその歌声に、僕の脳だけが覚醒したようで、聞きほれていた。ただ、不満もある。不満は、歌っている曲だ。僕の歌を歌って欲しいと衝動に任せるまま、声の主に言ってしまう。
僕の歌、歌えよ!
「僕の歌、歌えよ!」
寝ている間の衝動が覚醒と同時に、机をバンっと叩いて叫んでしまい、教室に残って昼食を食べているクラスメイトから注目を浴びる。幸い、僕に感心のないものばかりだったのか、訝しまれはしたが、何も言われなかった。苦笑いをして回りを見渡し、耳に残ったままの歌声を探した。教室では誰も歌っていない。耳を澄ませば、小さな歌声は、風に乗って外から運ばれてくる。思わず、窓にしがみつき、めいいっぱい身を乗り出した。
「危ないっ! 湊。落ち着けよ!」
僕は後先考えず、急に窓から上半身を出したので、何かを感じた未彩が慌てて駆け寄ってきた腰を抱いてくれる。
「何やってるんだっ! ここ4階だぞ!」
すごい剣幕で叱ってくる未彩には悪かったが、聞こえてなかった。僕の様子を見て、拳骨で頭を小突かれた。が、それどころではなかった。
「いたっ! 僕が探してたヤツが、今、いたんだ! あの方角なら、焼却炉か?」
乗り出したとき、後ろ姿がチラリと見えた。僕は、未彩の腕の中からスルリと抜け出し、教室から一目散に飛び出す。
「あっ、おいっ! 湊っ! まだ、話は――っ!」
後ろから未彩から呼ばれているが、お構いなしに廊下を走る。
アイツ、この学校の生徒だったんだな。今まで、あんなヤツがいたなんて、知らなかったけど……? いたのか、興味がなくて知らなかっただけか? ユニット組むなら、あの声の持ち主がいいっ!
女性のハイトーンを思わせるような綺麗で柔らかく優しい歌声。かと思えば、青年らしい色気のあるバリトンもしっかり聞こえていた。
階段をすっ飛ばして、目的の場所まで足早に行ったが、さっきの場所には、もう、その姿はなかった。
「どこに行った? まだ、そんなに遠くには行ってないはず」
周りを見渡し、探すように走る。はぁはぁ……と、僕の上がった息だけが聞こえ、また、見失ってしまうんじゃないかと焦りだけが大きくなっていく。
いたっ! あの後ろ姿のヤツだ。
「おいっ、そこのっ! 待てっ!」
未だ、好き勝手に童謡やらを歌っているその生徒は僕の呼びかけに振り返った。
前髪は鼻の上くらいまで伸ばして、さらに大きなメガネで顔を隠している。僕より背の小さな不機嫌な青年には見覚えがあった。
…………コイツ、今朝の!
「何かよう? 俺、初日からゴミ当番頼まれたんだよ。用がないなら行くけど」
「な、名前を教えてくれ」
「名前? 名前を聞くなら、そっちから普通、名乗らない? それって、礼儀だろ?」
ふんっと、鼻を鳴らし、イラついた声でこちらを威嚇する。見た目は、ヤバそうな感じだし、今朝、ぶつかった転校生だしで、声をかけたほうも、冷静になると困惑する。ただ、言われたことは、的を得ていた。
……なんで、僕。
今朝のこともあり、正直関わりたいヤツではなかった。ため息とともに、何も言わずに教室へと歩き始めた。
「何? 呼び止めといて、正論言われたからって、謝罪も名乗りもなし? 本当、今朝のヤツといい、もっと他にまともな生徒はいないわけ?」
不満そうな転校生に向き直り睨んだ。向こうも、僕の態度にイラついているようで、怒っている雰囲気が伝わってくる。
あぁ、あの声だ! 昨日の夕方聞いた……なんだよ、また、教科書の歌ってるのか?
微かに聞こえてくるその歌声に、僕の脳だけが覚醒したようで、聞きほれていた。ただ、不満もある。不満は、歌っている曲だ。僕の歌を歌って欲しいと衝動に任せるまま、声の主に言ってしまう。
僕の歌、歌えよ!
「僕の歌、歌えよ!」
寝ている間の衝動が覚醒と同時に、机をバンっと叩いて叫んでしまい、教室に残って昼食を食べているクラスメイトから注目を浴びる。幸い、僕に感心のないものばかりだったのか、訝しまれはしたが、何も言われなかった。苦笑いをして回りを見渡し、耳に残ったままの歌声を探した。教室では誰も歌っていない。耳を澄ませば、小さな歌声は、風に乗って外から運ばれてくる。思わず、窓にしがみつき、めいいっぱい身を乗り出した。
「危ないっ! 湊。落ち着けよ!」
僕は後先考えず、急に窓から上半身を出したので、何かを感じた未彩が慌てて駆け寄ってきた腰を抱いてくれる。
「何やってるんだっ! ここ4階だぞ!」
すごい剣幕で叱ってくる未彩には悪かったが、聞こえてなかった。僕の様子を見て、拳骨で頭を小突かれた。が、それどころではなかった。
「いたっ! 僕が探してたヤツが、今、いたんだ! あの方角なら、焼却炉か?」
乗り出したとき、後ろ姿がチラリと見えた。僕は、未彩の腕の中からスルリと抜け出し、教室から一目散に飛び出す。
「あっ、おいっ! 湊っ! まだ、話は――っ!」
後ろから未彩から呼ばれているが、お構いなしに廊下を走る。
アイツ、この学校の生徒だったんだな。今まで、あんなヤツがいたなんて、知らなかったけど……? いたのか、興味がなくて知らなかっただけか? ユニット組むなら、あの声の持ち主がいいっ!
女性のハイトーンを思わせるような綺麗で柔らかく優しい歌声。かと思えば、青年らしい色気のあるバリトンもしっかり聞こえていた。
階段をすっ飛ばして、目的の場所まで足早に行ったが、さっきの場所には、もう、その姿はなかった。
「どこに行った? まだ、そんなに遠くには行ってないはず」
周りを見渡し、探すように走る。はぁはぁ……と、僕の上がった息だけが聞こえ、また、見失ってしまうんじゃないかと焦りだけが大きくなっていく。
いたっ! あの後ろ姿のヤツだ。
「おいっ、そこのっ! 待てっ!」
未だ、好き勝手に童謡やらを歌っているその生徒は僕の呼びかけに振り返った。
前髪は鼻の上くらいまで伸ばして、さらに大きなメガネで顔を隠している。僕より背の小さな不機嫌な青年には見覚えがあった。
…………コイツ、今朝の!
「何かよう? 俺、初日からゴミ当番頼まれたんだよ。用がないなら行くけど」
「な、名前を教えてくれ」
「名前? 名前を聞くなら、そっちから普通、名乗らない? それって、礼儀だろ?」
ふんっと、鼻を鳴らし、イラついた声でこちらを威嚇する。見た目は、ヤバそうな感じだし、今朝、ぶつかった転校生だしで、声をかけたほうも、冷静になると困惑する。ただ、言われたことは、的を得ていた。
……なんで、僕。
今朝のこともあり、正直関わりたいヤツではなかった。ため息とともに、何も言わずに教室へと歩き始めた。
「何? 呼び止めといて、正論言われたからって、謝罪も名乗りもなし? 本当、今朝のヤツといい、もっと他にまともな生徒はいないわけ?」
不満そうな転校生に向き直り睨んだ。向こうも、僕の態度にイラついているようで、怒っている雰囲気が伝わってくる。
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