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運命の・で・あ・い!?
第5話 トップアイドル様のおなーりぃー?!
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「可哀想じゃないか? 凛。122位の湊に朝から絡んで」
「えぇーいいじゃん! 俺は湊のこと、すっげぇー昔のこぉーんなちっちゃいときから好きだから、いいんだよ! なっ? 湊」
「なっ? じゃねぇーよ! トップアイドル様がわざわざ下民に話しかけてくるなっていう話だ」
憐れむ目で僕を見る五人に耐えられなくなりそうだ。悪態をついてはみたが、ランキング1位のアイドル様に見下されるこの時間が苦痛で仕方がなかった。
同い年であるwing guysの凛と僕は、比べられることが多い。養成所もデビューも同期でもあるから、なおのこと。
「顔よし、歌よし、ダンスよしで売れないって、何がダメなのかぁ? 王子様キャラで売っているけど、まぁ、世間様はその胡散臭い張りぼてに騙されないってことだよな?」
声の方を睨むと「あぁ、怖い怖い」と、睦月千尋は、体の大きな卯月煌の後ろに隠れてしまう。
「もう、喧嘩しないでくれる? 俺のダチなんだからさ!」
「あぁ、はいはい。出た、凛の『俺の友達』。きっと、そこの底辺には、胸糞悪い言葉にしか聞こえてないぜ?」
轟長月は、凛に大きなため息をついて呆れている。そんな長月を「凛ちゃんを虐めちゃめっ!」と可愛く窘めている三国カンナ。
二人を振り返り、オロオロしたあと、僕の方にもう一度向き直る凛。
「……本当?」
潤んだ瞳で、こちらを覗き見る凛に、答えることはできなかった。笑って誤魔化せばいいだけなのに。多くの人目がある場所で、何か凛を否定するようなことを言ったら、すぐにニュースになってしまう。拳を軽く握り、グッと我慢をする。
……笑え、笑えっ! 笑えっ!! 笑うんだっ! 悔しいからって、感情をむき出しにするな。僕だってアイドルだ。今、この瞬間だって、僕のことを応援してくれているファンの子が回りにいる。その子たちをがっかりさせるわけにはいかないんだ!
……演技は、得意じゃないんだけどな。さっきも、素がでちゃってたし。
紺の学ランの青年を思い浮かべた。思いっきり拒絶されたことを思い出せば、自然と笑えてきた。
……名すら、教えてもらえなかったな。それなりにテレビも雑誌も出ているはずなんだけど。こいつらと違って……こいつらの足元にも及ばないからだろうな。
でも、いつか……東京のドームに立つ夢だけは諦めない。
「んだよ、笑いだした?」
「とうとうおかしくなったのか?」
「おかしくなんて、なってねーよ」
……そうだ。僕の夢は、東京のドームでのコンサート。こいつらからしたら、ちっさな夢かもしれないけど、笑いたければ笑えばいい。追いかけるんだ。夢を。
俯き加減だった僕は笑い、真正面から凛を見た。驚いたようにこちらを見返したあと、怖いような真剣な視線をぶつけられる。まるで、ライバルでも見るかのように。この僕を気にしているかのように。
僕は、今の凛と同じような目をしているのだろうか?
獲物を狩るような鋭い視線は、体に刺さって痛い。いつものちゃらけた雰囲気も凛につられるようにグループ全員から消えていた。
スッと腕を伸ばし、人差し指で凛を指す。沸き立つような感情が自然とそうさせているようだ。
「凛、僕は友達だなんて思ったことない、いつもライバルだと思っている」
「そう、俺は湊のこと、大事な友達だと思っていたんだけどな?」
薄ら笑いすらしている凛の表情は、トップアイドルそのもの。自信に満ち王の貫禄すら持っている。実際、この音楽業界で、王冠をかぶっているのは、他ならない凛だろう。
子犬がライオンに噛みつこうとしているみたいで、足が震えそうだ。
「それで、何かな? 王様に逆らおうとでもしているの?」
「あぁ、そうだ。その綺麗な顔ををいつか苦痛で歪ませてやる! アイドルとして、王になるのは、この僕だ!」
「やれるものなら、やってみなよ? 俺たちはいつでも君を待っているんだ。全力でそのときは、潰してあげるから!」
「行こうか」と凛が他のメンバーに声をかければ、僕の横をスッと通り過ぎていく。その圧だけで、どうにかなりそうなくらい怖かった。
……ここで下がるわけにはいかない。僕にだって、プライドはある。
振り返り、去っていく五人の後ろ姿を睨んだ。一瞥もしないやつらに向け、手を銃のようにして撃つ。
「絶対、抜いてやるからな!」
今は、あがくことすらできていない状況に悔しさがあっても、俯かないように唇をキュッと結ぶ。凛が向かった先の同じ教室へ、聞こえないほどのため息をついて、歩き始める。
「えぇーいいじゃん! 俺は湊のこと、すっげぇー昔のこぉーんなちっちゃいときから好きだから、いいんだよ! なっ? 湊」
「なっ? じゃねぇーよ! トップアイドル様がわざわざ下民に話しかけてくるなっていう話だ」
憐れむ目で僕を見る五人に耐えられなくなりそうだ。悪態をついてはみたが、ランキング1位のアイドル様に見下されるこの時間が苦痛で仕方がなかった。
同い年であるwing guysの凛と僕は、比べられることが多い。養成所もデビューも同期でもあるから、なおのこと。
「顔よし、歌よし、ダンスよしで売れないって、何がダメなのかぁ? 王子様キャラで売っているけど、まぁ、世間様はその胡散臭い張りぼてに騙されないってことだよな?」
声の方を睨むと「あぁ、怖い怖い」と、睦月千尋は、体の大きな卯月煌の後ろに隠れてしまう。
「もう、喧嘩しないでくれる? 俺のダチなんだからさ!」
「あぁ、はいはい。出た、凛の『俺の友達』。きっと、そこの底辺には、胸糞悪い言葉にしか聞こえてないぜ?」
轟長月は、凛に大きなため息をついて呆れている。そんな長月を「凛ちゃんを虐めちゃめっ!」と可愛く窘めている三国カンナ。
二人を振り返り、オロオロしたあと、僕の方にもう一度向き直る凛。
「……本当?」
潤んだ瞳で、こちらを覗き見る凛に、答えることはできなかった。笑って誤魔化せばいいだけなのに。多くの人目がある場所で、何か凛を否定するようなことを言ったら、すぐにニュースになってしまう。拳を軽く握り、グッと我慢をする。
……笑え、笑えっ! 笑えっ!! 笑うんだっ! 悔しいからって、感情をむき出しにするな。僕だってアイドルだ。今、この瞬間だって、僕のことを応援してくれているファンの子が回りにいる。その子たちをがっかりさせるわけにはいかないんだ!
……演技は、得意じゃないんだけどな。さっきも、素がでちゃってたし。
紺の学ランの青年を思い浮かべた。思いっきり拒絶されたことを思い出せば、自然と笑えてきた。
……名すら、教えてもらえなかったな。それなりにテレビも雑誌も出ているはずなんだけど。こいつらと違って……こいつらの足元にも及ばないからだろうな。
でも、いつか……東京のドームに立つ夢だけは諦めない。
「んだよ、笑いだした?」
「とうとうおかしくなったのか?」
「おかしくなんて、なってねーよ」
……そうだ。僕の夢は、東京のドームでのコンサート。こいつらからしたら、ちっさな夢かもしれないけど、笑いたければ笑えばいい。追いかけるんだ。夢を。
俯き加減だった僕は笑い、真正面から凛を見た。驚いたようにこちらを見返したあと、怖いような真剣な視線をぶつけられる。まるで、ライバルでも見るかのように。この僕を気にしているかのように。
僕は、今の凛と同じような目をしているのだろうか?
獲物を狩るような鋭い視線は、体に刺さって痛い。いつものちゃらけた雰囲気も凛につられるようにグループ全員から消えていた。
スッと腕を伸ばし、人差し指で凛を指す。沸き立つような感情が自然とそうさせているようだ。
「凛、僕は友達だなんて思ったことない、いつもライバルだと思っている」
「そう、俺は湊のこと、大事な友達だと思っていたんだけどな?」
薄ら笑いすらしている凛の表情は、トップアイドルそのもの。自信に満ち王の貫禄すら持っている。実際、この音楽業界で、王冠をかぶっているのは、他ならない凛だろう。
子犬がライオンに噛みつこうとしているみたいで、足が震えそうだ。
「それで、何かな? 王様に逆らおうとでもしているの?」
「あぁ、そうだ。その綺麗な顔ををいつか苦痛で歪ませてやる! アイドルとして、王になるのは、この僕だ!」
「やれるものなら、やってみなよ? 俺たちはいつでも君を待っているんだ。全力でそのときは、潰してあげるから!」
「行こうか」と凛が他のメンバーに声をかければ、僕の横をスッと通り過ぎていく。その圧だけで、どうにかなりそうなくらい怖かった。
……ここで下がるわけにはいかない。僕にだって、プライドはある。
振り返り、去っていく五人の後ろ姿を睨んだ。一瞥もしないやつらに向け、手を銃のようにして撃つ。
「絶対、抜いてやるからな!」
今は、あがくことすらできていない状況に悔しさがあっても、俯かないように唇をキュッと結ぶ。凛が向かった先の同じ教室へ、聞こえないほどのため息をついて、歩き始める。
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