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ぷろろーぐ
第1話 くそっ、どこいったんだよ!
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「このままの売り上げだと、芸能界引退も考えてもらった方がいいかもしれないね?」
マネージャーの小園は、CD売り上げランキングを見ながら、ため息をついた。発売したばかりのCDの売り上げ集計が出たのだ。覗きこめば、122位と堂々と書かれている僕の名前に言い訳も思いつかない。
いつもなら「これから」と言えただろうが、『芸能界引退』という現実を突きつけられて、とうとう返す言葉も見つからない。
「湊はさ、歌もうまいし、パフォーマンスもいいと思うんだ」
「思うけど? 何かが足りないっていいたいんだろ? 僕だって、アイドル3年もしてれば、この世界のことは、わかってきてる。wing guysが今週も1位をとれば、お荷物な僕はお払い箱」
「……それは否定できないね。お芝居には興味ないんだよね?」
下唇を噛み、両手をグッと力任せに握れば、どちらにも痛みが走った。小園に返事もせず、置いてあった荷物とジャージの上着を持って部屋を出た。
「待って! 湊!」
小園の静止も聞かず、そのまま走って事務所を出る。有名であっても、CDの……歌の売れないアイドル。
それが、僕。如月湊であった。
「くそっ、売れない売れないって、僕だけの問題なのか?」
胸のうちに燻るどす黒い感情から逃れるように走り出す。川沿いの道を全速力で走れば、散歩に来ている人たちが振り返ったり、指を指して笑っているのがわかる。
「僕だって……僕だって、売れたいって本気で思ってるんだ!」
いつの間にか河口まで走ってきていたのか、海が目の前にある。体の中にあったものを流してしまいたい……そう願ったからか、一筋の涙が流れた。ジャージの袖でグッと拭い、「上手くなりてぇー! 僕を日本一のアイドルにしてくれーっ!」と声の限り叫んだ。ハッとして俯く。
「日本一にしてくれ……か。なる! じゃないのかよ」
自分の言葉に諦めたように苦笑いをする。もう一度、叫ぼうとしたとき、風に乗って微かに歌が聞こえてきた。透き通るような高音域の男性ボーカル。うっとりするような声に聞き入っていて気が付かなかったが、まさかの音楽の教科書に載っているような歌だ。
どんな人が歌っているのか気になり、声の方へ走っていく。全速力のあとに叫んだため、酸欠ではあったが、声の主と話したい。そんな衝動だけで駆けている。荒い息を吐きながら、声がしただろう場所にたどり着いたが、既に歌声は消え、それらしい人は誰一人いなかった。
「くそっ、どこいったんだよ!」
近くを探したが、どこにもおらず、スマホの着信が鳴る。小園からだったので、一瞬、出ないでおこうかと思ったが、受話ボタンを押す。
「……はい」
「帰っておいで。話があるんだ」
小園に返事をして、元来た道を戻る。夕暮れだった空は、日が落ちて、一番星が夜空に輝いていた。
マネージャーの小園は、CD売り上げランキングを見ながら、ため息をついた。発売したばかりのCDの売り上げ集計が出たのだ。覗きこめば、122位と堂々と書かれている僕の名前に言い訳も思いつかない。
いつもなら「これから」と言えただろうが、『芸能界引退』という現実を突きつけられて、とうとう返す言葉も見つからない。
「湊はさ、歌もうまいし、パフォーマンスもいいと思うんだ」
「思うけど? 何かが足りないっていいたいんだろ? 僕だって、アイドル3年もしてれば、この世界のことは、わかってきてる。wing guysが今週も1位をとれば、お荷物な僕はお払い箱」
「……それは否定できないね。お芝居には興味ないんだよね?」
下唇を噛み、両手をグッと力任せに握れば、どちらにも痛みが走った。小園に返事もせず、置いてあった荷物とジャージの上着を持って部屋を出た。
「待って! 湊!」
小園の静止も聞かず、そのまま走って事務所を出る。有名であっても、CDの……歌の売れないアイドル。
それが、僕。如月湊であった。
「くそっ、売れない売れないって、僕だけの問題なのか?」
胸のうちに燻るどす黒い感情から逃れるように走り出す。川沿いの道を全速力で走れば、散歩に来ている人たちが振り返ったり、指を指して笑っているのがわかる。
「僕だって……僕だって、売れたいって本気で思ってるんだ!」
いつの間にか河口まで走ってきていたのか、海が目の前にある。体の中にあったものを流してしまいたい……そう願ったからか、一筋の涙が流れた。ジャージの袖でグッと拭い、「上手くなりてぇー! 僕を日本一のアイドルにしてくれーっ!」と声の限り叫んだ。ハッとして俯く。
「日本一にしてくれ……か。なる! じゃないのかよ」
自分の言葉に諦めたように苦笑いをする。もう一度、叫ぼうとしたとき、風に乗って微かに歌が聞こえてきた。透き通るような高音域の男性ボーカル。うっとりするような声に聞き入っていて気が付かなかったが、まさかの音楽の教科書に載っているような歌だ。
どんな人が歌っているのか気になり、声の方へ走っていく。全速力のあとに叫んだため、酸欠ではあったが、声の主と話したい。そんな衝動だけで駆けている。荒い息を吐きながら、声がしただろう場所にたどり着いたが、既に歌声は消え、それらしい人は誰一人いなかった。
「くそっ、どこいったんだよ!」
近くを探したが、どこにもおらず、スマホの着信が鳴る。小園からだったので、一瞬、出ないでおこうかと思ったが、受話ボタンを押す。
「……はい」
「帰っておいで。話があるんだ」
小園に返事をして、元来た道を戻る。夕暮れだった空は、日が落ちて、一番星が夜空に輝いていた。
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