ハニーローズ  ~ 『予知夢』から始まった未来変革 ~

悠月 星花

文字の大きさ
上 下
1,471 / 1,513

1468. インゼロ帝国へ

しおりを挟む
「なんか、ジョージア様って姫さん甘いよね?」
「いいでしょ?甘くても。甘やかしてくれる人も必要よ?」
「えっ?俺、かなり甘やかしていると思うんだけど?」


 驚いた表情でこちらを見るウィルに、こちらもきょとんとしてしまった。

 私、ウィルに甘やかされいるの?

 そんな素振りも感じていなかった私は、「嘘だぁ!」と反論する。すると、少し拗ねたような表情を一瞬したあと、前を向いてしまった。


「ウィル?」
「どうかした?」
「えっと……甘やかしてくれてるの?」


 心配そうに覗き込むと、すごく神妙な表情で、ずっと遠くを見たまま、こちらに見向きもしない。仕方がないので、小さくため息をついたあと、元の距離に戻ろうとした。その瞬間、いつもの飄々としたウィルに戻って、にぃっと人懐っこい笑顔を向けてくる。この笑顔は、私たち友人だけが見れるものだそうだが、してやったりというものも見えたので、やっぱり、騙されたのだろう。


「姫さんを甘やかしたら、暴れ馬の如く、どっか行ってしまうじゃないか。誰がその暴れ馬の面倒をみるんだよ?」
「ひどいわ!暴れ馬だなんて!認めるしかないじゃない!」
「自覚はあるんだね?ジョージア様の前だと大人しく出来るのに、どうしていなくなったらこんなことになるのか。そうはおもわないか?」


 私に問われているわけではないので、私は後ろを向いた。後ろにいたのは、ナタリーとセバス、ヒーナがいた。セバスは、若干、馬にしがみついているようなので、馬が迷惑そうだ。


「思いますわ。私たちもしっかり手綱を握っておかないと……」
「……アンナリーゼ様、本当、敵地に行くんだから、ちゃんとね?」
「それより、セバスは大丈夫?顔色悪くない?」
「……セバスはいつになったら、馬に乗れるようになるのかしら?」
「ナタリー、それは言わないであげてよ?」
「……本当、やめて。早く馬車に乗りたい。気持ち悪いんだけど」


 顔色の悪いセバスを見て、みながため息をついた。馬に乗る練習はたびたびしているが、未だに慣れないようだ。短い距離ならなんとかなるみたいだが、公都からここまでは結構な距離だ。二人の護衛にヒーナをつけていたのだが、セバスを見て呆れているようである。


「ヒーナ、もう少しセバスにも優しくしてあげてちょうだい?」
「わかっています、アンナリーゼ様。ただ……、時間にも遅れていますから、もう少し頑張ってほしいところです」
「だ、そうだけど、セバスはあと10キロほどの道のり、大丈夫そう?」


 みなが心配しながらセバスを見る。若干厳しい視線を送っているヒーナがいるが、コクンと頷くセバス。限界が近いのだろう。


「少し先に水飲み場があるから、そこまで頑張りなさい。休憩をしましょう」
「アンナリーゼ様!」
「ヒーナ、口答えは許しません。元々日程には余裕があるから、少し休憩を入れたからって大丈夫なの。それより、先に水飲み場の安全確保してきてくれるかしら?」
「わかりました」


 次の瞬間には、ヒーナは飛び出して行ってしまう。軽やかな馬術のヒーナを羨ましそうに見つめるセバス。


「……僕もあれくらい、馬に乗れたらなぁ」
「ますます酷くなっていますわね?学生の頃は、まだ、乗れていたきがしますけど」
「……座りっぱなしの仕事をしているからね。だから……」
「やはり、もう少し、馬に乗れた方がいいですから、練習あるのみですわ」
「……ナタリー、それは……」
「セバスが馬に慣れないから、アンナリーゼ様が苦労するの。忘れてはダメよ?」


 そういうと、ナタリーも馬を前に歩かせる。どう見ても、馬に乗りなれていますという雰囲気に、私たちはコーコナ領などへの移動で相当、馬に乗っている様子がわかる。


「まぁ、セバスもナタリー見習って、ちゃんと乗れた方がいいぞ。俺たちには、お嬢を助けるという役目があるんだから、足を引っ張るわけにはいかないから」


 セバスの背中をぽんぽんと軽く叩いてから、ウィルは馬に前進するように指示をする。その場に残った二人は、先を歩くウィルとナタリーの背中を見つめながら、それぞれの想いを考えるのであった。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

『伯爵令嬢 爆死する』

三木谷夜宵
ファンタジー
王立学園の中庭で、ひとりの伯爵令嬢が死んだ。彼女は婚約者である侯爵令息から婚約解消を求められた。しかし、令嬢はそれに反発した。そんな彼女を、令息は魔術で爆死させてしまったのである。 その後、大陸一のゴシップ誌が伯爵令嬢が日頃から受けていた仕打ちを暴露するのであった。 カクヨムでも公開しています。

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持

空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。 その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。 ※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。 ※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

五歳の時から、側にいた

田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。 それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。 グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。 前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!

ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」 ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。 「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」 そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。 (やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。 ※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。

あなたを忘れる魔法があれば

美緒
恋愛
乙女ゲームの攻略対象の婚約者として転生した私、ディアナ・クリストハルト。 ただ、ゲームの舞台は他国の為、ゲームには婚約者がいるという事でしか登場しない名前のないモブ。 私は、ゲームの強制力により、好きになった方を奪われるしかないのでしょうか――? これは、「あなたを忘れる魔法があれば」をテーマに書いてみたものです――が、何か違うような?? R15、残酷描写ありは保険。乙女ゲーム要素も空気に近いです。 ※小説家になろう、カクヨムにも掲載してます

もう、いいのです。

千 遊雲
恋愛
婚約者の王子殿下に、好かれていないと分かっていました。 けれど、嫌われていても構わない。そう思い、放置していた私が悪かったのでしょうか?

最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません

abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。 後宮はいつでも女の戦いが絶えない。 安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。 「どうして、この人を愛していたのかしら?」 ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。 それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!? 「あの人に興味はありません。勝手になさい!」

処理中です...