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演習という名の移動方法
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「それで……食糧をもって、移動して……なんの訓練なんだ?」
「補給部隊の警護と補給部隊の物資管理であったり、食糧の分配や調理方法などを覚えてもらわなければなりません。私たちの体は、どうやっても食べなければ、力がでませんから、それをきちんと把握できるようにとです」
「……補給物資や食事の用意。近衛といえど、そういうことも身につけないといけないのか」
「まぁ、どこに行っても、口の付いたものとは、行動を共にしますからね。腹が減っては戦はできぬというではありませんか?」
ウィルが説明をしている間、公は自身の知識不足を嘆いている。近衛は、基本的に公やその親族の身辺警護、城を守るが主な仕事ではある。小競り合いの状況により、借りだされることはあるのだが、借りだされるだけと思っていたらしい。とはいえ、ウィルの所属する第13大隊は、遊撃隊なので、基本的にどこからもあぶれることも多い。
ウィルたちの部隊は、基本的に何でもできる器用な隊員の集まりだった。
「今回に関しては、うちの部隊からの派遣する予定です。新しい隊員も入りましたからね。セルビアから、そろそろ、どこかで演習をしないといけないと相談を受けていたので」
「それって……ウィルの隊が徳をするってこと?」
「姫さん、人聞きが悪いな。俺の隊が徳をするんじゃなくて、俺の隊くらいしか、そんな演習に参加したくないんだよ」
「……土木工事を率先してやっちゃう隊だもんね」
「そういうこと。姫さんとこで働いた隊員たち、違う何かに目覚めたものが、多すぎる。まぁ、ぺらっぺらだったやつが、筋肉倍増……5倍増くらいで帰ってきたのを見て、みんな驚いていたり、筋肉自慢とかしてるって……セルビアが物凄く怒っていた」
「筋肉自慢?」
「所かまわず、服を脱いで、どこの筋肉がどうのって……俺なんて、ちょうどいいのに、薄いって言われるんだぜ?理不尽じゃないか?」
みながウィルを見つめるが、決してウィルは薄いわけではない。ウィルと公の護衛としてこの場に同席しているエリックを見比べていた。エリックはどちらかと言えば、力で押すので、体は相当出来上がっている。アンバー領から帰ってきた隊員たちは、こちら側になっているだろう。一方、ウィルはというと、力で押すより技巧派と言われる部類で、体の筋肉もほどよく出来上がっている。
「みんな、見た目でウィルとエリックを見比べて、エリックの方が断然強そうみたいに思っていませんか?」
「違うのか?」
「違いますよ。それぞれ得意なものが違うんです。体の作りも成長に伴って、最適なものを選んで、自身が動きやすいように考えています。ウィルは、今の体型が1番具合のいいものだと思いますよ」
「その心は?」
「手数が多い?」
「手数が多いのは姫さんな。スピード重視だから」
「女なんで、数でねじ伏せるのが1番いいのよ。力では敵わないもの」
ウィルと私の剣の重さは、ほぼ同じ。長さも同じだったりする。腕の長さが圧倒的に違うので、同じ武器を使って戦ったとき、私の方が不利になることも多い。そのぶん、手数の多さでまかなうのだ。
「なるほど。それぞれが考えて体作りまでしているのだな」
「当たり前です。近衛の前に、一人の人間です。自身の命を守るための最適は自身で追求すべきことですから」
「それを言われると、耳が痛い」
公が耳を塞ぐ。付きすぎている肉を見ているのだろう。これでも、体が絞れてきたので、褒めるべきだろう。
「どの体型を目指しても、なんか違う気がするなぁ……」
「まぁ、公はあと少し体を絞ればいいんじゃないですか?守られる側なので、動きやすくしておけば、誰も文句は言わないと思いますよ」
「アンナリーゼ……、ジョージアから聞いたけど、まだ、体を鍛えているのか?」
「公には、負けないくらいは強いですよ?」
「……姫さんはこの国最強の剣士だから……」
「剣士じゃなくて、公爵だけどね?」
「表に出しちゃいけない人物ですよね」
「ひどいな」と呟くと、みなが頷きあっている。私はどこに出しても恥ずかしくないようにと育てられたはずなのに、そうではないとみなに否定されたことに頬を膨らませ、抗議した。
「補給部隊の警護と補給部隊の物資管理であったり、食糧の分配や調理方法などを覚えてもらわなければなりません。私たちの体は、どうやっても食べなければ、力がでませんから、それをきちんと把握できるようにとです」
「……補給物資や食事の用意。近衛といえど、そういうことも身につけないといけないのか」
「まぁ、どこに行っても、口の付いたものとは、行動を共にしますからね。腹が減っては戦はできぬというではありませんか?」
ウィルが説明をしている間、公は自身の知識不足を嘆いている。近衛は、基本的に公やその親族の身辺警護、城を守るが主な仕事ではある。小競り合いの状況により、借りだされることはあるのだが、借りだされるだけと思っていたらしい。とはいえ、ウィルの所属する第13大隊は、遊撃隊なので、基本的にどこからもあぶれることも多い。
ウィルたちの部隊は、基本的に何でもできる器用な隊員の集まりだった。
「今回に関しては、うちの部隊からの派遣する予定です。新しい隊員も入りましたからね。セルビアから、そろそろ、どこかで演習をしないといけないと相談を受けていたので」
「それって……ウィルの隊が徳をするってこと?」
「姫さん、人聞きが悪いな。俺の隊が徳をするんじゃなくて、俺の隊くらいしか、そんな演習に参加したくないんだよ」
「……土木工事を率先してやっちゃう隊だもんね」
「そういうこと。姫さんとこで働いた隊員たち、違う何かに目覚めたものが、多すぎる。まぁ、ぺらっぺらだったやつが、筋肉倍増……5倍増くらいで帰ってきたのを見て、みんな驚いていたり、筋肉自慢とかしてるって……セルビアが物凄く怒っていた」
「筋肉自慢?」
「所かまわず、服を脱いで、どこの筋肉がどうのって……俺なんて、ちょうどいいのに、薄いって言われるんだぜ?理不尽じゃないか?」
みながウィルを見つめるが、決してウィルは薄いわけではない。ウィルと公の護衛としてこの場に同席しているエリックを見比べていた。エリックはどちらかと言えば、力で押すので、体は相当出来上がっている。アンバー領から帰ってきた隊員たちは、こちら側になっているだろう。一方、ウィルはというと、力で押すより技巧派と言われる部類で、体の筋肉もほどよく出来上がっている。
「みんな、見た目でウィルとエリックを見比べて、エリックの方が断然強そうみたいに思っていませんか?」
「違うのか?」
「違いますよ。それぞれ得意なものが違うんです。体の作りも成長に伴って、最適なものを選んで、自身が動きやすいように考えています。ウィルは、今の体型が1番具合のいいものだと思いますよ」
「その心は?」
「手数が多い?」
「手数が多いのは姫さんな。スピード重視だから」
「女なんで、数でねじ伏せるのが1番いいのよ。力では敵わないもの」
ウィルと私の剣の重さは、ほぼ同じ。長さも同じだったりする。腕の長さが圧倒的に違うので、同じ武器を使って戦ったとき、私の方が不利になることも多い。そのぶん、手数の多さでまかなうのだ。
「なるほど。それぞれが考えて体作りまでしているのだな」
「当たり前です。近衛の前に、一人の人間です。自身の命を守るための最適は自身で追求すべきことですから」
「それを言われると、耳が痛い」
公が耳を塞ぐ。付きすぎている肉を見ているのだろう。これでも、体が絞れてきたので、褒めるべきだろう。
「どの体型を目指しても、なんか違う気がするなぁ……」
「まぁ、公はあと少し体を絞ればいいんじゃないですか?守られる側なので、動きやすくしておけば、誰も文句は言わないと思いますよ」
「アンナリーゼ……、ジョージアから聞いたけど、まだ、体を鍛えているのか?」
「公には、負けないくらいは強いですよ?」
「……姫さんはこの国最強の剣士だから……」
「剣士じゃなくて、公爵だけどね?」
「表に出しちゃいけない人物ですよね」
「ひどいな」と呟くと、みなが頷きあっている。私はどこに出しても恥ずかしくないようにと育てられたはずなのに、そうではないとみなに否定されたことに頬を膨らませ、抗議した。
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