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突然の謁見Ⅱ
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「ジョージア様、起きてください」
「もう、朝?」
「えぇ、そうですよ。昨夜、遅くに公からの謁見許可がおりました」
「……じゃあ、いかないといけないね。起きるよ」
布団から抜け出したくないくらいようなジョージアは、のそのそと起き上がってくる。朝が弱いジョージアも公からの呼びだしとなれば、起きないわけにはいかない。
「何か他に言伝とかあったの?」
大きなあくびをしながら、問いかけてくるので、私は首を横にふる。準備を整え、朝食を食べるために食堂へ行く。私たちは横に並びながら、公がどういう判断をするのかと話合っていた。
「きっと、行くなって話になるな。公もアンナを危険な場所へ向かわせることはしないだろうし」
「そうですかね?」
「そうだよ。なんで、アンナだけ、危険な場所へ行かないといけないんだい?」
「それはそうですけど、公が動けないのであれば、代わりに出向く人も必要ではないですか?」
「危険じゃなければ、構わないけど……インゼロは別だよ」
大きなため息とともに食堂へ入っていった。朝が早いからか、まだ、誰も来ていなかった。
そんな様子を見ていると、私がこっそり動こうとしていることは、最後まで言えなさそうだ。
朝食を食べたあと、馬車に乗り込み、城へ出かける。昼からとの連絡があったのだが、別件の用事があるとかで、時間が朝に変わった。たぶんだが、セバスから公へ話が伝わったのだろう。私はジョージアと向き合いながら、様子を窺う。何を考えているのかなぁ?と見ていると、視線を感じたようで、こちらを見た。微笑むと不思議そうな表情をしたあと、また、外を見ていた。
城に付き、謁見の間へ通される。私たちだけなので広すぎるのだが、待っていると宰相が「奥へどうぞ」と案内してくれた。その後ろには、セバスとパルマがいた。
公の執務室に入れば、すでにウィルが待機している。朝早くの連絡もうまく伝わったようだと、少し安心する。
「……アンナリーゼは、どこからともなく問題を連れてくるな?」
「私が連れてきたわけではありませんよ?」
「それは、何とも答えられない話だ」
「そうですか?私、ここ数年は大人しく領地改革へ尽力していましたから、然程、表舞台に立っている自覚はありませんよ?」
「……南の領地もエルドアの件も、まだ、記憶に新しいと思うが?」
「それは、私が引き起こしたわけではありませんから。これが、例の手紙です」
私は公に屋敷へ届いた手紙を見せた。まだ、見ていなかった公を始め、宰相にセバス、パルマが覗き込んでいる。招待状であるものを見つめ、公がこれ以上は吐けないというまで、大きなため息をついて、机につっぷした。
「……アンナリーゼ」
くぐもった声で公が私を呼ぶので、返事をすると、しばらく返事がなかった。辛抱強く待っていると、ガバッと起き上がって、もう一度深い深いため息をついた。
「……本当にどんな星の元に生まれたんだ?人生はいろいろあるとはいえ、アンナリーゼほど、複雑な状況が絡み合った人生を歩んでいるものはいないぞ?」
「そうは言われましても、私は生まれてこの方、ただ、ありのままの私で生きてきただけですから、恥ずかしいこともなければ、公に何か咎められるようなこともないと思います」
「確かにそうなのだが、世の危険分子と思われる者たちに好かれすぎる傾向がだな?」
「それは、ゴールド公爵やダドリー男爵、公のことを指しますか?」
「なんで俺が、そこに入る?インゼロ帝国の皇帝だろう?」
「……公にも、言い寄られたことは数えきれないほどあったので、そうかと思いまして」
「なっ、それはだな。ジョージアと離れて生活をしていたから不憫に思ってだな?」
にっこりと公に笑かけ「大きなお世話です」と言い切った。小さな小さな声で「すまなかった」という公には何も答えなかった。
「それで、公よ。アンナは、かの地へ向かわないと行けませんか?」
ジョージアの質問に公がもう一度ため息をついたあと、首を横に振る。
「国の宝をインゼロなんかに出すわけがないだろう?」
「そうですよ。インゼロに行って何かあったらと思うと……御英断だと思います」
ジョージアがやたら力を込めているので、笑いそうになるが我慢をした。そんな私を見て、ウィルの視線が刺さる。みんな私を心配してくれているのは、この執務室の空気を感じればわかる。
「ということで、この話は終わるが、アンナリーゼはそれでよかったか?」
「インゼロには行かないということですか?」
「そうだ。国としても、アンナリーゼを失う訳にはいかない。他に行ってくれる者を探せばいいだろう」
「誰かには行かせるのですか?」
「内情視察が出来る絶好の機会だからな」
「そうですか」と納得のいかない返事をした。代わりの者が決まったら、教えてもらうことになった。ジョージアと共に帰ろうとしたが、少し公と話がしたいと、ジョージアを先に帰すことにした。渋々帰っていくジョージアの後ろ姿に「ごめんね」と謝った。
「もう、朝?」
「えぇ、そうですよ。昨夜、遅くに公からの謁見許可がおりました」
「……じゃあ、いかないといけないね。起きるよ」
布団から抜け出したくないくらいようなジョージアは、のそのそと起き上がってくる。朝が弱いジョージアも公からの呼びだしとなれば、起きないわけにはいかない。
「何か他に言伝とかあったの?」
大きなあくびをしながら、問いかけてくるので、私は首を横にふる。準備を整え、朝食を食べるために食堂へ行く。私たちは横に並びながら、公がどういう判断をするのかと話合っていた。
「きっと、行くなって話になるな。公もアンナを危険な場所へ向かわせることはしないだろうし」
「そうですかね?」
「そうだよ。なんで、アンナだけ、危険な場所へ行かないといけないんだい?」
「それはそうですけど、公が動けないのであれば、代わりに出向く人も必要ではないですか?」
「危険じゃなければ、構わないけど……インゼロは別だよ」
大きなため息とともに食堂へ入っていった。朝が早いからか、まだ、誰も来ていなかった。
そんな様子を見ていると、私がこっそり動こうとしていることは、最後まで言えなさそうだ。
朝食を食べたあと、馬車に乗り込み、城へ出かける。昼からとの連絡があったのだが、別件の用事があるとかで、時間が朝に変わった。たぶんだが、セバスから公へ話が伝わったのだろう。私はジョージアと向き合いながら、様子を窺う。何を考えているのかなぁ?と見ていると、視線を感じたようで、こちらを見た。微笑むと不思議そうな表情をしたあと、また、外を見ていた。
城に付き、謁見の間へ通される。私たちだけなので広すぎるのだが、待っていると宰相が「奥へどうぞ」と案内してくれた。その後ろには、セバスとパルマがいた。
公の執務室に入れば、すでにウィルが待機している。朝早くの連絡もうまく伝わったようだと、少し安心する。
「……アンナリーゼは、どこからともなく問題を連れてくるな?」
「私が連れてきたわけではありませんよ?」
「それは、何とも答えられない話だ」
「そうですか?私、ここ数年は大人しく領地改革へ尽力していましたから、然程、表舞台に立っている自覚はありませんよ?」
「……南の領地もエルドアの件も、まだ、記憶に新しいと思うが?」
「それは、私が引き起こしたわけではありませんから。これが、例の手紙です」
私は公に屋敷へ届いた手紙を見せた。まだ、見ていなかった公を始め、宰相にセバス、パルマが覗き込んでいる。招待状であるものを見つめ、公がこれ以上は吐けないというまで、大きなため息をついて、机につっぷした。
「……アンナリーゼ」
くぐもった声で公が私を呼ぶので、返事をすると、しばらく返事がなかった。辛抱強く待っていると、ガバッと起き上がって、もう一度深い深いため息をついた。
「……本当にどんな星の元に生まれたんだ?人生はいろいろあるとはいえ、アンナリーゼほど、複雑な状況が絡み合った人生を歩んでいるものはいないぞ?」
「そうは言われましても、私は生まれてこの方、ただ、ありのままの私で生きてきただけですから、恥ずかしいこともなければ、公に何か咎められるようなこともないと思います」
「確かにそうなのだが、世の危険分子と思われる者たちに好かれすぎる傾向がだな?」
「それは、ゴールド公爵やダドリー男爵、公のことを指しますか?」
「なんで俺が、そこに入る?インゼロ帝国の皇帝だろう?」
「……公にも、言い寄られたことは数えきれないほどあったので、そうかと思いまして」
「なっ、それはだな。ジョージアと離れて生活をしていたから不憫に思ってだな?」
にっこりと公に笑かけ「大きなお世話です」と言い切った。小さな小さな声で「すまなかった」という公には何も答えなかった。
「それで、公よ。アンナは、かの地へ向かわないと行けませんか?」
ジョージアの質問に公がもう一度ため息をついたあと、首を横に振る。
「国の宝をインゼロなんかに出すわけがないだろう?」
「そうですよ。インゼロに行って何かあったらと思うと……御英断だと思います」
ジョージアがやたら力を込めているので、笑いそうになるが我慢をした。そんな私を見て、ウィルの視線が刺さる。みんな私を心配してくれているのは、この執務室の空気を感じればわかる。
「ということで、この話は終わるが、アンナリーゼはそれでよかったか?」
「インゼロには行かないということですか?」
「そうだ。国としても、アンナリーゼを失う訳にはいかない。他に行ってくれる者を探せばいいだろう」
「誰かには行かせるのですか?」
「内情視察が出来る絶好の機会だからな」
「そうですか」と納得のいかない返事をした。代わりの者が決まったら、教えてもらうことになった。ジョージアと共に帰ろうとしたが、少し公と話がしたいと、ジョージアを先に帰すことにした。渋々帰っていくジョージアの後ろ姿に「ごめんね」と謝った。
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