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インゼロ帝国からの手紙Ⅱ
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「……これには、どういう意図があると思いますか?」
「さぁ?何を考えているかは、俺にはわからないよ。アンナがわからないなら、なおのこと」
覗き込んだ手紙を読み進めて行くと、そこに書かれていたのはエルドア国での事件への関与や南の領地での病の件、それと戦争屋の幹部でもあったヒーナのことについて、事細かく書かれていた。インゼロ帝国として、知らぬ存ぜぬで通すものであるこれらの事柄について、ここまで赤裸々に書いてもいいものかと、逆に心配をしてしまうほどである。
「宰相とあろうものが、なんだか信じがたいね。事件等への謝罪だけでなく、見事に収めてしまったアンナへの敬意や謝辞まで書いてある」
「……これ、本当にインゼロ帝国の宰相が書いたことなのかしら?」
3枚にわたる手紙を順に読んでいて、3枚目に差し掛かったところで、この手紙の確信が書いてあった。
「アンナをインゼロ帝国へ招待したいだって?」
思わず叫んでしまったジョージア。耳元でいきなり大きな声を出されたのでとても驚いた。
耳がキーンとしてしまう。
「……ジョージア様、耳が……」
「ごめん、アンナ。あまりにも驚きすぎて、大きな声が出てしまって」
「……いいですけど、少し待ってくださいね?目がチカチカしています」
私は目を瞑って軽く首を振る。ジッとしていると、落ち着いてきたようだ。目をパチッと開けると、ジョージアが心配そうにこちらを覗き込んでいた。目が合った瞬間に微笑んだ。
「……大丈夫?」
「えぇ、大丈夫ですよ。目がチカチカしてましたけど、戻ってきました」
「よかった。ごめん」
「気にしないでください。ジョージア様が叫ばなければ、私が叫んでいましたから」
優しい蜂蜜色の瞳を見つめると、2度ジョージアは頷く。まだ、心配はしてくれているようだが、大丈夫だと判断したのだろう。
視線をもう一度、手紙に戻すように促すと、二人とも同じ文章を読み返す。
「……私がインゼロ帝国へ行くことで、何か向こうの国としていいことがあるのでしょうか?」
「そりゃあるでしょ?人質とか処刑とか……、アンナに今後、表舞台に立たないようにっていう警告のようなものではないの?」
「確かに考えられますが、あまりにも直接的過ぎるお誘いに、正直驚いています」
二人で話していてもらちあかないということで、私たちはウィルとセバスを交え、公への謁見をすることに決めた。社交の季節が終わりを向かえる今、領地へ帰る貴族たちからの挨拶で公も暇ではないことはわかっているが、気になるものを見れば、放っておくわけにもいかない。
インゼロ帝国の宰相といえば、皇帝の右腕と言われ、ノクトやイチアとも肩を並べるくらいの権力を持っているそうだ。元々は平民出身だったはずだが、どこかの貴族経由で出世したという情報くらいだ。
今は、ノクトともイチアとも離れているため、私の持つ情報でしか判断出来ないのだが、それはごく少ないものだ。
まさかの人物からの招待に、内心焦りもある。
……やはり、私を捕らえるか、殺すつもりでこの手紙を送ってきたのかしら?ウィルたちも、きっと、同じ意見に辿り着くと思うけど……、さてさて、どんなものかしらね?
手紙を見れば、女性が書いたような柔らかな線の文字。何度もそれを見ながら、私はこの手紙の真意を考えてみるが、やはり、辿り着けそうにない。
……この招待にあえてのるというのもひとつなのよね。現状があまりわからないからこそ、飛び込むっていうのも。
万が一っていうものは、いつどんなときでもありえることだわ。ジョージア様は、反対するかなぁ?ジョージア様だけでなく、みなが反対しそうよね。
公への謁見の手紙を書いているジョージアを見つめると、愛おしさが溢れてくる。少し頼りないジョージアは、心の底から私を愛してくれていた。それを知ってもなお、危険な場所へ行くのかと強く反対されそうなことは、聞かなくてもわかる。
「手紙を送るようにディルへ渡してくるよ」
「行ってらっしゃい」
部屋を出ていくジョージアを見送って、私はちゅんちゅんと呟いた。その後、ジョージアが書いていた便箋を使い、サラサラと書いていく。
……あなたは、何のために私に会いたがっているの?
私は立ち上がって、半分に折った便箋を窓辺に置く。ジョージアが戻ってくる前に席へと戻り、何事もなかったかのように座り直した。
ジョージアは、メイドと一緒に戻ってきたので、お茶の用意をしてもらうようだ。
「公への謁見はすぐに叶うと思うよ」
「わかりました。ウィルたちにも連絡をしないといけませんね」
「さっきまでいたから、まだ、帰っていないんじゃない?」
「そうですね。アンジェラが何か話したそうにしていたから、いるかもしれません」
メイドに呼んできてと伝えると、お茶の用意だけ済ませて、ウィルを呼びに行ってくれる。しばらくの間、ジョージアと謁見で何を話すか纏めていると気の抜けた「姫さん、なんかよう?」とこの場の空気にそぐわない雰囲気で、その人物は執務室へと入ってきた。
「さぁ?何を考えているかは、俺にはわからないよ。アンナがわからないなら、なおのこと」
覗き込んだ手紙を読み進めて行くと、そこに書かれていたのはエルドア国での事件への関与や南の領地での病の件、それと戦争屋の幹部でもあったヒーナのことについて、事細かく書かれていた。インゼロ帝国として、知らぬ存ぜぬで通すものであるこれらの事柄について、ここまで赤裸々に書いてもいいものかと、逆に心配をしてしまうほどである。
「宰相とあろうものが、なんだか信じがたいね。事件等への謝罪だけでなく、見事に収めてしまったアンナへの敬意や謝辞まで書いてある」
「……これ、本当にインゼロ帝国の宰相が書いたことなのかしら?」
3枚にわたる手紙を順に読んでいて、3枚目に差し掛かったところで、この手紙の確信が書いてあった。
「アンナをインゼロ帝国へ招待したいだって?」
思わず叫んでしまったジョージア。耳元でいきなり大きな声を出されたのでとても驚いた。
耳がキーンとしてしまう。
「……ジョージア様、耳が……」
「ごめん、アンナ。あまりにも驚きすぎて、大きな声が出てしまって」
「……いいですけど、少し待ってくださいね?目がチカチカしています」
私は目を瞑って軽く首を振る。ジッとしていると、落ち着いてきたようだ。目をパチッと開けると、ジョージアが心配そうにこちらを覗き込んでいた。目が合った瞬間に微笑んだ。
「……大丈夫?」
「えぇ、大丈夫ですよ。目がチカチカしてましたけど、戻ってきました」
「よかった。ごめん」
「気にしないでください。ジョージア様が叫ばなければ、私が叫んでいましたから」
優しい蜂蜜色の瞳を見つめると、2度ジョージアは頷く。まだ、心配はしてくれているようだが、大丈夫だと判断したのだろう。
視線をもう一度、手紙に戻すように促すと、二人とも同じ文章を読み返す。
「……私がインゼロ帝国へ行くことで、何か向こうの国としていいことがあるのでしょうか?」
「そりゃあるでしょ?人質とか処刑とか……、アンナに今後、表舞台に立たないようにっていう警告のようなものではないの?」
「確かに考えられますが、あまりにも直接的過ぎるお誘いに、正直驚いています」
二人で話していてもらちあかないということで、私たちはウィルとセバスを交え、公への謁見をすることに決めた。社交の季節が終わりを向かえる今、領地へ帰る貴族たちからの挨拶で公も暇ではないことはわかっているが、気になるものを見れば、放っておくわけにもいかない。
インゼロ帝国の宰相といえば、皇帝の右腕と言われ、ノクトやイチアとも肩を並べるくらいの権力を持っているそうだ。元々は平民出身だったはずだが、どこかの貴族経由で出世したという情報くらいだ。
今は、ノクトともイチアとも離れているため、私の持つ情報でしか判断出来ないのだが、それはごく少ないものだ。
まさかの人物からの招待に、内心焦りもある。
……やはり、私を捕らえるか、殺すつもりでこの手紙を送ってきたのかしら?ウィルたちも、きっと、同じ意見に辿り着くと思うけど……、さてさて、どんなものかしらね?
手紙を見れば、女性が書いたような柔らかな線の文字。何度もそれを見ながら、私はこの手紙の真意を考えてみるが、やはり、辿り着けそうにない。
……この招待にあえてのるというのもひとつなのよね。現状があまりわからないからこそ、飛び込むっていうのも。
万が一っていうものは、いつどんなときでもありえることだわ。ジョージア様は、反対するかなぁ?ジョージア様だけでなく、みなが反対しそうよね。
公への謁見の手紙を書いているジョージアを見つめると、愛おしさが溢れてくる。少し頼りないジョージアは、心の底から私を愛してくれていた。それを知ってもなお、危険な場所へ行くのかと強く反対されそうなことは、聞かなくてもわかる。
「手紙を送るようにディルへ渡してくるよ」
「行ってらっしゃい」
部屋を出ていくジョージアを見送って、私はちゅんちゅんと呟いた。その後、ジョージアが書いていた便箋を使い、サラサラと書いていく。
……あなたは、何のために私に会いたがっているの?
私は立ち上がって、半分に折った便箋を窓辺に置く。ジョージアが戻ってくる前に席へと戻り、何事もなかったかのように座り直した。
ジョージアは、メイドと一緒に戻ってきたので、お茶の用意をしてもらうようだ。
「公への謁見はすぐに叶うと思うよ」
「わかりました。ウィルたちにも連絡をしないといけませんね」
「さっきまでいたから、まだ、帰っていないんじゃない?」
「そうですね。アンジェラが何か話したそうにしていたから、いるかもしれません」
メイドに呼んできてと伝えると、お茶の用意だけ済ませて、ウィルを呼びに行ってくれる。しばらくの間、ジョージアと謁見で何を話すか纏めていると気の抜けた「姫さん、なんかよう?」とこの場の空気にそぐわない雰囲気で、その人物は執務室へと入ってきた。
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