ハニーローズ  ~ 『予知夢』から始まった未来変革 ~

悠月 星花

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変わっていくことへの期待Ⅴ

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「どうして?領地のことを考えてくれていたのでしょ?」
「……そうですけど、一介の警備隊員が口を出していいものではないかと」
「そう?ここは、他領とは違い私の領地だもの。領民が何を考え、何をしてほしいのかを知れる機会は多くないわ」
「アンバー領では、そういう領民からの意見みたいなものは、どうやって収拾しているのですか?」


 シークも興味があるらしく、私に問いかけてくる。チャコはシークの質問を止めようと下が、私は首を横に振り、反対にチャコを止めた。


「アンバー領を実際運営しているのは、イチアよ。特殊な経歴の持ち主で、経験も豊富。私の先生役でもあるわ。加えてノクトも同じね。私にも領地への提案はあるけど、私の提案が必ずしも領民にとっていいとは限らないのよ。そこで、領民との間に入ってくれているのが、警備隊の隊長たち」
「警備隊ですか?」
「そう。何か困ったことがあれば、警備隊に連絡するの。あとは、要望があるときなんかね?」
「それって……膨大な情報とか要望数になりませんか?」
「ある程度、警備隊に届くまでに精査されているわ。町や村には代表となるものがいて、その人物を中心に話し合いの場を作るの。農作物で人手がいるから、どうにかならないかとか……ね?」
「えっと……その話し合いでまとまった意見が警備隊に届けられて、それを領主が見る?」
「そんな感じ。全ての意見が通るわけではないのだけど……予算とかいろいろあるからね?でも、拾える意見があるなら参考にして検討することもあるわよ?」


 私の話を真剣に聞くチャコとシーク。自分たちは町を領地を守るだけが仕事だと思っていたというふうで、もちろん、それは間違っていない。ただ、それが全てだとも私は思っていなかった。自身が屋敷から飛び出している時間が多いからというのもあるが、町や村のあちこちで挨拶をして、元気だったかと聞いて回ることもある。領主だとみなが知っているというのもあるが、アンバー領での「ゴミ拾いのアンナちゃん」の印象が強いらしく、受け入れられている。その話もする。


「……たしかに、警備隊は町や村を回る仕事ではあります。不審な人がいれば声をかけることはあるけど、そうか。町の人に声をかけてもいいんですね?」
「うん、慣れ合いはダメだよ?取り締まる側だからね。でも、生活に変わりがないかとか、少し話を聞くだけで、不審者発見ってこともなくもないから」
「あぁ、ありましたね?不審者とっつ構えたこととか」
「アデルは現場にいなかったんじゃないの?」
「取り調べの方法を聞かれたので、一緒に調書とるときにはいましたよ?」


 アデルも警備隊ではないものの、元近衛であるので、何かと私の知らないところで活躍をしているらしい。アデルの話を聞きたそうにしているので、時間を取ろうと言う話になった。
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