ハニーローズ ～ 『予知夢』から始まった未来変革 ～

変わっていくことへの期待Ⅳ

「それにしても、本当に綺麗ですね？」
「うん。アンバー領を手本としているのなら、いろいろな決め事があるはずよ？ゴミを出す日とか、ゴミを集める人がいたりとか……町を綺麗に保つにはそれなの努力が必要だからね」
「そうなんですか？私は、全く知りませんでした」
「他の領地では、なかなかそこまで手の回っているところはないんじゃないかしら？」
「確かに、公都ですらゴミの課題はありますからね……」


　アデルが唸るようにいうので、私たちはみな頷きあう。店舗の前などは、店側が掃除をするのだが、他のところは住人が気が付いたときにしたり、余程気の利く人がいない限り酷いものだったりする。公都はまだ、月に1度、近衛の予備隊が掃除に回るので、まだ、綺麗なほうだ。それでも、長く住んでいたものからすれば、アンバー領での生活が快適なのはわかる。私は公都の居住区にいくことがほとんどないので、正直わからないのだが、酷いところは酷いらしい。トワイス国の王都は、そのあたりはきちんと整備されていて、綺麗な町並みの景観を損なわないようにとある程度の汚さであった。


「どうして、公はそのあたりの整理をしないのでしょうか？」
「……あまり自分で公都を歩くことがないから、わからないのだと思うよ。店のある区画しか、いかないでしょ？」
「……確かに。放蕩してたときもそうだったって聞いています。誰か上奏すればいいのに」
「したとしても、多大なお金がかかるから、税収入からの支払いで賄うんだけど、そこにさける予算があまりないのじゃなくて？」


　国の財政は、あまり詳しくは知らないので、はっきりしたことは言わないでおく。それでも、ダリアが目を見開いて驚いている表情を見れば、わかる人にはわかるし、アデルあたりは話を逸らそうとし始める。


「でも、コーコナ領もアンバー領に倣っていくという意思があるなら、領地全体的に取り組んでほしいわね。それで、病気になる確率も改善されるから」
「たしか、ここの町の改修前、全体的に消毒なんかをしてましたね？」
「そうね。清潔な町を維持するには努力とお金が必要なのよ。それで、領民が健康でいられるなら、私たちは歓迎するけど」


　チャコが私の話を聞きながら、さっきからブツブツと呟いている。何か考えているようで、いい考えが浮かんだと思えば、首を振っている姿は領地のことをチャコなりに考えている証拠で、いずれ、資金提供の話を持ってくるのではないだろうか？と見つめた。その試行錯誤を辞めないでほしいとチャコに笑いかけると、無意識で考えていたらしく、「滅相もないです！」と少し大きめな声で返事をして、みなが声の主であるチャコを見た。