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変わっていくことへの期待Ⅱ

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「うっまっ!」
「おいしい!」


 口に入れた面々が、思わず零れ出た感想に私もパンを頬張りながら頷いた。

 ……確かにおいしい。ココナが指導したとか聞いたけど。

 チラリとココナの方を見ると、パンを見ながら微笑んでいた。嬉しいのかおいしいのか……どちらかわからないけど、いいことのようだ。


「ココナ」
「はい、アンナリーゼ様」
「ここのパン屋さんはココナが指導したって聞いたんだけど……本当かしら?」
「えっと、それは、まずかったのでしょうか?」
「いいえ。とてもおいしいパンだから聞いてみたの」
「……よかった。ここのパン屋は夫婦で営んでいます。妻の方が昔からの知り合いで、相談に乗っていただけです。指導した……だなんて」
「でも、お店を開けるくらいの知識は、与えたのではないの?」
「それは、その……」
「ダメだとか言うつもりはないのよ。私は、ココナが変わっていくこの町の手伝いをしてくれているのなら、大歓迎だから」
「……アンナリーゼ様」


 不安そうな表情になっていたココナは、ホッとしたように微笑んだ。

 ……私に何か言われると思うと、怖いのかしら?

 考えてみたけど、思い当たることは何もない。ただ、私の回りには遠慮する人がいないからであって、実際は爵位で畏怖を感じているのかもしれない。


「この町にこんなお店が何店舗も続くといいなって思っただけだから、怖がらないでほしいわ。まだ、お店って、パン屋さんと数軒くらいだって聞いているから」
「確かに、店はそうですね。まだまだ、基盤が出来ていないから、難しいのだと思います。他の町からの参入で店がありますが、この町の人が店を出したのは、あのパン屋が初めてですね」
「少しずつ希望が持てる町になっていけば……」
「あの意欲が次は店を構えるや新しい事業を始めるなんてことに繋がるんじゃないですかね?」


 私たちは、パン屋を見ながら、そんな未来に思いを馳せる。まだまだ、この町は新しくなって1年くらいのものだ。人の意識を変えるところから始まり、町を整え、これから少しずつ発展していくだろう。それには多くの手が必要だということはわかっている。


「……ここは、これからですからね。ゆっくり、子どもの成長を見守るように温かく支援をしてくださると助かります」
「そうね。ひとつの町が発展すれば、自ずと他の町も、負けじともう少し活気づくのよね」
「アンナ、悪い顔をしているから……その表情は、隠しておいて!」
「あら?そうだった?」


 アデルに指摘され、私がきょとんとするとみなが笑う。穏やかな日々がこの町にも、早く訪れることを願わずにはいられなかった。
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