ハニーローズ ～ 『予知夢』から始まった未来変革 ～

満足した

　私たちは、学校を後にする。チャコとシークもついてきて、レオを構っている。


「アンナリーゼ様が子どもを連れているのって、珍しいですよね？」
「そう？レオは、結構一緒に出かけることも多いわよ？」
「アンナリーゼ様のおこさまではないですよね？」
「そうね。ダ……ウィルの子ども！」
「ウィルって……あの近衛のですか？」
「……ここでも有名人？」


　シークがウィルの名前に反応したので、そちらを見る。私は、最初ダドリー男爵の子だと言おうとして止めたのだが、誰も、気が付いていないようだ。唯一、レオだけが何か言いたげにこちらを見ていたので、微笑んでおいた。


「まぁ、常勝将軍にかったと言われている方ですからね？」
「……それって真実ではないのだけどね。そういえば、最近、ノクトはこっちに顔を出してる？」
「ノクトさんですか？」
「そう。見かけないなぁーって思ってたのよね」
「ノクトさん、先日、来ていましたよ？確か、薬を購入するために来たとかで……」
「薬？」
「詳しくはわかりませんけど、警備隊の本部に寄ってくれたらしいんです」
「そうなんだ？デリアは何か聞いている？」


　一緒についてきたデリアに話を振ると、少し深刻そうな表情でこちらを見つめ返してきた。何か事情を知っているようで、そういえば、私を追いかけて来た理由を聞いていないことに気が付いた。


「……大変言いにくいのですが」
「何？ノクトに何かあるの？」
「……インゼロ帝国に戻られたのではないかという話が子猫たちのあいだで話題になっています」
「そうなの？知らなかったわ。理由はあるのかしら？」
「そこまでははっきりしないのですが……」
「じゃあ、ノクトが寄ったという薬屋に、視察が終わったらよることにしましょう。チャコ、シーク、ココナ。案内をお願いね？」


　私は真新しい町をひとつひとつ説明を受けながら見渡していく。1年前までは廃屋ばかりが立ち並んでいた町は見事に綺麗になっており、当時なかったパン屋などの食べ物やお店がちらほらと出店している。聞くところに夜と、町の者が、経営しているらしく、順調に経営がされているとのことだ。
　店の管理については、ココナの指導の元、様々な試験をして、出店までこぎつけたらしい。
　町を歩けば、パンのいい匂いがするので、思わず頬が緩んでしまう。そんな私をアデルは見逃さなかったらしく、「甘いパンを買いますか？」と聞いてくるので頷いた。
　焼きたてのパンの香りと、甘いカスタードの香りが、私の心をくすぐっていく。駆けて行くアデルを見送りながら、私はアデルが戻ってくるのをまだかまだかと待っていた。