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学びの場は騒がしいⅢ

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「一件落着ですか?」


 私が部屋から出るとチャコが心配したようにこちらを窺ってくる。私は肩を竦めて「どうだろう?」と返事をした。


「……少しでもルールを守る大人が増えたり、注意をきいてくれる人がいれば、助かるんですけどね」


 ふだん、チャコも教壇に立つことがあるらしい。シークと同じく警備隊用の訓練を兼ねているらしく、教壇に立つ辛さがわかるらしい。無法地帯と化している学びの場の整備は急務のようだが、ここにメスを入れられるのは、デリアのようなはっきりした者がいいのだろう。みんな、領民に対して優しすぎる帰来がある。それは仕方のないことだ。同じ領地で育ったと思えばこそ、強く出にくいこともあるのだろう。そう考えると、自分のことにしか興味を示さないヨハンなんて、ある意味最強の先生になりうる。特殊過ぎて、この場に投入は難しい人材ではあるので、他をあたらなければならない。


「いつから、こんな状態なの?」
「町が出来上がったくらいからですかね?時間が出来たのでという理由だと思います。全員が全員、あぁではないんですけど……学ぶことが悪いわけではないのに、なんとも言えない状況ですね」


 チャコがため息をついていると、授業終わりのシークが私たちの騒動を聞きつけやってきた。


「あっ、」
「ごきげんよう、シーク。どう?ここの生活は」
「……こんにちは、アンナリーゼ様。チャコに聞いているかもしれませんが、ひっちゃかめっちゃかしてますよ。飽きはしませんが、御せないところがあって、けが人が出たり……正直、警備隊としての自信を喪失しそうです」


 チャコと同じく深いため息を聞けば、シークも苦労していることがわかる。今まで、楽をしてきたのだから、少しぐらいの苦労はいいのではないかと思ったが、この苦労はしなくてもいいものなのかもしれない。多少の同情を感じながらも、上に立つものの苦労も感じてほしいとも思う。ゆくゆくはこの二人が、コーコナ領の警備隊の隊長格になることは間違いないのだから。


「副隊長だって、図々しく振る舞ってきたのだから、少しくらい苦労もした方がいいわよ?人の上に立って、教える側になって、気付くことも多いはず。あなたたちの学びの場でもあるわ。出来ることなら、この難局を乗り越えるための知恵を絞るのもあなたたちの役目ではあると思うけど……その部分は、私も手伝いをするから安心しなさい」


 チャコとは今まで話をしていたので、面目ないと肩を落とすだけに留めていたが、シークは私の話を聞いて青ざめたり不安がったりと表情を変えていた。最後は少しだけホッとしたような表情になる。
「頑張りなさいよ?」とチャコとシークの背中をぽんぽんと叩くと小さく頷いた。
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