ハニーローズ ～ 『予知夢』から始まった未来変革 ～

学びの場は騒がしいⅡ

「他にいますか？相手になって欲しい方がいれば、相手になりますけど？」


　デリアが部屋を見渡すと、何やら顔を見合わせて黙り込む大人たち。騒がしかった大人たちを力でねじ伏せてしまったことを叱らないといけないのだろうが、子どもたちを思えば、褒めるべきなのだろうか……？私は迷いながら部屋に入って行く。町娘風の格好といえど、去年の出来事を知っている人も多いので、私を見た瞬間、その場に膝をついて頭を下げた。
　この騒ぎを知っていると言うよりかは、騒ぎを聞きつけてやってきたというふうに装う。


「この騒ぎは一体何？デリア、一体何をしているの？」


　デリアは私の言葉を聞いて、しっかり把握しているようで余裕の笑みを浮かべた。さすが、デリア。察してくれるところが、私との関係の良好さが窺える。


「子どもたちの学びの場で大人が騒いでいたから少々懲らしめただけです」
「……そうはいっても領民よ？力で押さえつけるのは良くないわ」
「そうですね。失礼いたしました」


　男の上から立ち上がり、お仕着せをパンパンと払う。下にいた男は私を見て少し後ろに下がった。


「さて、状況の把握をしたいわ。今の状況はどうなっているの？」
「……」
「何も誰も言わないの？私は確か、子どもたちの教育を任せていたはずよね？」
「……それは」
「いいのよ。別に。ここに大人がいたとしても、一緒に机を並べて学ぶ意識がちゃんとあればいいのよ」


　私の声は怒っているわけではなく、静かに諭すように話すと、聞いているものたちも静かに聞いている。


「私は学びの機会を大人にも与えたいと思っているの。大人たちが学ぶ姿勢は子どもたちにもきっといい影響を与えると思うし。でも、今の状況は違うわよね？」


　問いかけると、言葉に詰まる大人たち。自覚があるようだ。


「大人には大人の授業を用意しようと考えているから、少しだけ待っていてちょうだい。先生は虐めないで大人しく授業を聞くのなら、大人の参加も許可しましょう。質問があるなら、授業が終わったあとにして？いいかしら？」


　周りを見渡すとうんうんと頷くので、これでとりあえずの脅しにはなっただろう。何も怒鳴ったり力技でどうにかするだけが脅しではない。優しく諭すことで、出来ることもあるのだ。ただ、今回はデリアが先行して力技にでているので……私の諭しの効果は半分以下だろうが、領主と言う立場でみなが頷くしかないと言うことも自覚はしている。


「仲良く勉強してちょうだいね？そうじゃないと、学ぶ場所すら与えられなくなるから」


　微笑みながら最後に念押しをすると、聞いていたアデルが「アンナが怖い」と呟いていた。