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さて、行きましょうか?
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私はおもむろに立ち上がる。それを見上げているみなはぼんやりとしていた。目的を忘れているようだが、今日は視察だ。
「そろそろ、視察に行きたいのだけど……みんなはここにいる?」
「いえ、すっかり忘れていました」
アデルも立ち上がり、私と視察へ向かう準備をした。そのあと、ココナも続き、他の面々も立ち上がった。
「すっかり、学校のことを話し込んでいたので、それで終わったのかと思っていました」
「そんなわけないわよ?百聞は一見に如かずって遠い国の何かにあるくらい、目で見て確かめたいの。聞くだけじゃ、わからないこともあるでしょ?」
「まぁ、確かに。現場検証は行きますからね?」
「チャコらしい話ね」
クスクス笑いながら、執務室から出る。引き続き案内をしてくれるらしく、チャコが前を歩いてくれた。
「そういえば、シークはどこにいるの?」
「授業ですよ」
「授業?」
「えぇ、警備隊に入りたい、近衛の試験に受かりたいとかで、連日、剣術などを習いに来る領民が一定数いるんですよ。最初は一人二人だったんですけど、今では結構な人数がいるんですよね。警備隊に入りたいっていうのは歓迎なんで、いろいろと指南したり、事務で必要なことを教えたりしているんですけど……近衛となると、またちょっと別じゃないですか?」
「そうね?アデルなら知っているじゃない?」
私はアデルに視線を送ると頷いている。ただ、アデルが近衛であったことを知る人がここにはレオしかいないので、みんなが首を傾げる。
「アデルは、こう見えても、元近衛よ?貴族上がりではなく、ちゃんと試験を突破して、立派な近衛だったんだから!ねっ?アデル」
「……アンナ、そんなに持ち上げないでください。ギリギリ、近衛になれたんですから」
「あっ、そうだったの?でも、入った者勝ちだよね?」
「確かに、それはそうなんですけど……まぁ、入った者勝ちです。はい」
「どうやって入ったんですか?」
「試験受けて……って、私よりアンナの方が知っているでしょ?ウィル様もエリック様ののことも」
「ウィルは……地頭がいいから別だよね?エリックもなんだかんだと頭もいいし、体型も恵まれているから、選ばれやすいよね?」
アデルは私を見ながら納得したというふうだ。もうひとついうなら……ウィルは、もうひとつ理由があるんだけど……と思い浮かべる。
「ウィルは、学生のとき、すでに近衛に入ることは決まっていたわよ?」
「えっ?」
「どういうことですか?アンナ様」
食いついてきたのは、アデルではなくレオだった。
「レオは気になるんだね?ウィルに聞くといいよ?」
「……教えてくれそうにありません。父様、そういう話はあまりしないから」
「なるほど……わかったわ。教えてあげるよ」
「こっちにおいで」とレオを隣に引き寄せ、昔話をすることにした。私たちが無邪気に遊んでいたいられた頃の思い出を。
「そろそろ、視察に行きたいのだけど……みんなはここにいる?」
「いえ、すっかり忘れていました」
アデルも立ち上がり、私と視察へ向かう準備をした。そのあと、ココナも続き、他の面々も立ち上がった。
「すっかり、学校のことを話し込んでいたので、それで終わったのかと思っていました」
「そんなわけないわよ?百聞は一見に如かずって遠い国の何かにあるくらい、目で見て確かめたいの。聞くだけじゃ、わからないこともあるでしょ?」
「まぁ、確かに。現場検証は行きますからね?」
「チャコらしい話ね」
クスクス笑いながら、執務室から出る。引き続き案内をしてくれるらしく、チャコが前を歩いてくれた。
「そういえば、シークはどこにいるの?」
「授業ですよ」
「授業?」
「えぇ、警備隊に入りたい、近衛の試験に受かりたいとかで、連日、剣術などを習いに来る領民が一定数いるんですよ。最初は一人二人だったんですけど、今では結構な人数がいるんですよね。警備隊に入りたいっていうのは歓迎なんで、いろいろと指南したり、事務で必要なことを教えたりしているんですけど……近衛となると、またちょっと別じゃないですか?」
「そうね?アデルなら知っているじゃない?」
私はアデルに視線を送ると頷いている。ただ、アデルが近衛であったことを知る人がここにはレオしかいないので、みんなが首を傾げる。
「アデルは、こう見えても、元近衛よ?貴族上がりではなく、ちゃんと試験を突破して、立派な近衛だったんだから!ねっ?アデル」
「……アンナ、そんなに持ち上げないでください。ギリギリ、近衛になれたんですから」
「あっ、そうだったの?でも、入った者勝ちだよね?」
「確かに、それはそうなんですけど……まぁ、入った者勝ちです。はい」
「どうやって入ったんですか?」
「試験受けて……って、私よりアンナの方が知っているでしょ?ウィル様もエリック様ののことも」
「ウィルは……地頭がいいから別だよね?エリックもなんだかんだと頭もいいし、体型も恵まれているから、選ばれやすいよね?」
アデルは私を見ながら納得したというふうだ。もうひとついうなら……ウィルは、もうひとつ理由があるんだけど……と思い浮かべる。
「ウィルは、学生のとき、すでに近衛に入ることは決まっていたわよ?」
「えっ?」
「どういうことですか?アンナ様」
食いついてきたのは、アデルではなくレオだった。
「レオは気になるんだね?ウィルに聞くといいよ?」
「……教えてくれそうにありません。父様、そういう話はあまりしないから」
「なるほど……わかったわ。教えてあげるよ」
「こっちにおいで」とレオを隣に引き寄せ、昔話をすることにした。私たちが無邪気に遊んでいたいられた頃の思い出を。
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