上 下
1,427 / 1,480

学校運営についてⅢ

しおりを挟む
「収入が上がれば、領主としては税収が増えるっていうのもありがたい話なんだけど、学ぶことで、その人自身の価値が上がるのね?そうすると、例えばなんだけど……今までの
 環境から飛び出して、新しい挑戦をしようと考える人も出てくるのね?」
「自分を試したい、もっと知識を得たいというやつですね?」
「そう。それが、いいほうへいけば、アンバー領にいるような集団になったりするわけ」
「その最たるがヨハン教授ですね!」


 アデルが様当然のようにいうが、どちらかというと、ヨハンは欲の塊すぎて失敗なんじゃないかと思う。あえてそれは口にしないでおくが、苦笑いをしておいた。


「でも、町から出て行ってうまくいかなかったら?夢半ばで諦めてしまったら?」
「そういう人も出てくるでしょうね。その中から、また、立ち上がる人も出てくるとは思うけど……学びから冒険へ、挫折から気付きへと続いて、さらにそこからもう一歩進める勇気のある人は伸びて行く。人生全てがうまくいくわけではないけど、そういうことが大切だってわかるときが来る。やるかやらないかって選択肢があるなら、やる!っていうのが、今、学校に押し寄せてくる大人たち。今回の出来事で、諦めなくていいんだ、やってやるんだ!って気持ちになったから、学校へ来て、子どもたちの時間を奪ってまで学んでるんだよ」
「それじゃあ、子どもたちの時間はどうすれば……?」
「だから、時間や学習内容を分けるのよ。大人向けですってうたうことで、そちらに流れる人も増えるでしょ?より実践的な内容にすれば、子どもたちの学習に混ざる意味が無くなるわ」


 ココナが頷き、チャコは他にも考えているようだった。このチャコという人物……アンバーでいうところのリリーのような存在で私たちと領民とのあいだで良く動き回ってくれる。何より、チャコなりによく考えていることだ。1年前では考えられないことに、きちんとした目標や目的があるだけで、人は変われるのだとこの領地での手本となるような人物でもある。リリーには及ばないが、チャコやシークもまだまだ、成長の余地があるということでもある。


「大人用の学習要領って、どうしたものですか?」
「うん、それは、アンバー領から適切な人を呼び寄せることにするよ。学習要領も、何種類も用意しないといけないだろうから。しばらくは、このままだから、子どもたちを見守ってくれると助かるわ」
「わかりました。アンナ様は、やはり面白い感性の持ち主ですね?」
「私が?」
「はい。貴族だからって知っている知識ではありませんよね?」


 疑うチャコに私は、「みなと同じように学んだわ」と笑いかけると、胡乱目で見つめられる。確かに、私が領地や領民のために勉強しているというのが想像出来ないようであった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

悲恋を気取った侯爵夫人の末路

三木谷夜宵
ファンタジー
侯爵夫人のプリシアは、貴族令嬢と騎士の悲恋を描いた有名なロマンス小説のモデルとして持て囃されていた。 順風満帆だった彼女の人生は、ある日突然に終わりを告げる。 悲恋のヒロインを気取っていた彼女が犯した過ちとは──? カクヨムにも公開してます。

悪役令嬢の去った後、残された物は

たぬまる
恋愛
公爵令嬢シルビアが誕生パーティーで断罪され追放される。 シルビアは喜び去って行き 残された者達に不幸が降り注ぐ 気分転換に短編を書いてみました。

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

婚約破棄の場に相手がいなかった件について

三木谷夜宵
ファンタジー
侯爵令息であるアダルベルトは、とある夜会で婚約者の伯爵令嬢クラウディアとの婚約破棄を宣言する。しかし、その夜会にクラウディアの姿はなかった。 断罪イベントの夜会に婚約者を迎えに来ないというパターンがあるので、では行かなければいいと思って書いたら、人徳あふれるヒロイン(不在)が誕生しました。 カクヨムにも公開しています。

挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました

結城芙由奈 
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】 今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。 「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」 そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。 そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。 けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。 その真意を知った時、私は―。 ※暫く鬱展開が続きます ※他サイトでも投稿中

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

処理中です...