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お出かけ日和とお昼ご飯Ⅲ

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「おいしそうだね?」


 運ばれてきた料理を手前に引けば、ふわっとおいしそうな匂いにお腹がぐぅっと鳴る。どうやら、それは私だけではなかったようで、照れたようにダリアが苦笑いをしていた。お昼には少し早いが、この香りを嗅げば、誰だってお腹が空くだろう。


「あったかいうちに食べようか」


 それぞれのまえに置かれた食べ物を見て頷きあう。どうやら、みなが早く食べたかったようだ。ただし、私は、すぐに口には出来ないので、アデルを呼び寄せた。


「……早く。私もお腹が空いたから」
「わかっていますよ。腹の虫が聞こえてきましたからね?」
「……もぅ!そんなこと言うから、リアンに嫌われるんじゃないの?」
「嫌われてはいませんよ!嫌われてわ!」
「母様に嫌われているの?アデルは」
「そんなことない!そんなことないよ、レオ。どうして、アンナは意地悪をいうかな?」
「……意地悪だった?」


 私の方をチラッと見た後、何も言わずに席に戻る。どうやら、毒味は何もなく終わったようだが、意趣返しのつもりか、私に食べてもいいという許可を出してこない。


「レオもっと言ってあげて!リアンの息子からの言葉は重いから!」
「やめて、アンナ!本当、レオに何を言わせようとしているんですか?」


 焦るアデルにニコニコと笑いかけると「食べてもいいですよ!」と返事が返ってくる。でも、それで私が満足するはずもない。またされたのだから。私は、レオを引き寄せ、耳打ちをした。レオはその言葉を聞いて思わず笑うと、アデルは微妙な表情でこちらを見ている。


「アンナ様、それくらいにして差し上げたらどうですか?」


 心配になったダリアが、私を窘めるが首を横に振る。こんな機会、滅多にないので、私はレオに実行するように伝えると、アデルは身構えた。


「アデルさん!」
「……何かな?レオ。アンナに変なこと吹きこまれていない?」
「全然。アデルさんに伝えておかないとって僕も思っていたから」
「……な、なにかなぁ?伝えて置かないといけないことって……」


 アデルの挙動不審がおもしろくて、私は笑いをグッと堪えた。答えを知っているのは、私とレオだけだ。他の三人は知らないので、ダリアとココナはアデルのことを気の毒そうに見つめていた。


「僕、アデルさんのこと好きですよ?」
「へっ?レオが?」
「はい。そうです。母との関係も知らないわけではありません」
「……子ども、恐るべし」
「まぁ、リアンがきちんと話しているからね?知っていて当然だと思うけど」
「そうなのですか?」
「えぇ、そうよ?ねぇ、レオ」
「はい、そうです。ミアはまだ小さいですから伝えられていませんけど、父様と僕は聞いています。母様のこと、よろしくお願いします!」


 レオがアデルに笑いかけると、何を言われたのかわからないというアデル。固まったアデルにみなで微笑みかけるのであった。
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