ハニーローズ  ~ 『予知夢』から始まった未来変革 ~

悠月 星花

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お出かけ日和Ⅴ

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 馬車の中は和気あいあいと話をしていた。レオをからかったり、エルドア国の話をダリアから聞いたりと話は盛り上がる。


「いつか、エルドア国にも行ってみたいです」
「本当?」
「はい!あとは、トワイス国にも。父様は王都に行ったことがあると言っていました」
「学園があるからね。レオももう15歳になれば行くところよ?」
「本当に行ってもいいのでしょうか?」
「もちろんよ!ウィルはダメとは言わないでしょ?むしろ、ミアも含めて二人ともを学園へ行かせるつもりよ?」


 心配しているような表情のレオに笑いかけると、少し安心したように微笑んだ。ウィルの養子であることに遠慮をしているのかもしれないが、そんな必要はどこにもない。なんだかんだと、レオにもミアにもウィルはたくさんの愛情を注いでいる。
 ウィル自身、子どもは少し苦手だと思っていたようだが、何のこともない。とても可愛がって大事にしている。うちのおてんば娘も漏れなく大事にしてくれているのだ。ウィルもとても驚いていた。


「レオは何も心配はいらないのよ?」
「……でも」
「大丈夫。ウィルは二人のことをとても愛しているから。もう、あなたたちがいないなんて、考えられないほどよ?」
「アンナ様への想いと同じですか?」
「……私?」


 子どもは意外と大人を見ている。ウィルの想いなんて言い出すレオに微笑みながら、手を握った。初めて会ったときの小さな柔らかい手から、少し大きくなり剣を握っているしっかりした手に変わっている。


「レオ、よく聞いて。ウィルの気持ちは、友人として仲間として背中を預けられる相棒としての信頼だよ?愛情ではないわ」
「でも!」
「ふふっ、もう少し大きくなれば、わかるわよ。ダリアもおもしろい表情をしているけど、私とウィルのあいだに、恋愛感情はないわよ?」
「……そうですか?」
「みんな、私とウィルとのあいだを疑う人がいるけど……違うのよ?お互い想い合っているのは、恋愛ではなく仲間だから!」
「ずっと、疑っていたんです。とても距離が近いようなので……」
「確かに、ジョージア様と一緒にいる時間は長いけど、違うから。学園にいた頃からの友人」
「そうだったのですね。疑ってしまって申し訳ありません」
「いいのよ。よく言われるし、ウィルの未だに『姫さん』なんて呼ぶから誤解されるんだから」
「外でもそんな呼び方なのですか?」
「外では、名前だよ。貴族の集まるような場所では『アンナリーゼ様』だし、領地外では『アンナ』だし、領地と公都と知り合いしかいないようなときは『姫さん』だね」


 なるほどと納得したのかしないのかわからないが、ダリアもレオも頷いた。今頃、ウィルは公都でくしゃみをしているのではないだろうか?と想像したら、自然とクスっと笑ってしまった。
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