ハニーローズ ～ 『予知夢』から始まった未来変革 ～

眠れないですか？

　明日のことを考えて、夕飯を食べたあと、早めに休むことにした。私にしても早い時間であった。ベッドに潜り込んでみたものの、あっちに向いてみたりこっちに向いてみたり……ゴロゴロとしていたら、部屋にデリアが入ってきた。カーテンを閉めに来たようだ。


「アンナ様、眠れないですか？」
「……ちょっと早くベッドに入ってしまったから、眠れなくて」
「いつもは、まだ、執務されていますからね」
「そうね。でも、明日も早いから眠った方がいいのはわかっているんだけど」
「では、ホットミルクをお持ちしますか？」
「お願いできる？」


「少しだけお待ちください」とデリアがカーテンだけ閉めて部屋を出ていく。私は暗くなった部屋で、ぼんやりジョージアのことを思い浮かべた。いつもは、思い浮かばないのになんて失礼なことを思うとクスっと笑ってしまう。


「ジョージア様は何をしているかしら？」
「そうですね……」


　戻ってきてデリアが答えてくれたので驚いた。蝋燭に火を入れて、部屋を少し明るくしてくれる。ホットミルクを渡してくれる。カップに口をつけると、蜂蜜を入れてくれたのか、少し甘みがありホッとする。


「この時間なら、アンジェラ様に振り回されているじゃないでしょうか？」
「あぁ、ありそうね……アンジェラも夜型だから、ジョージア様も大変だよね」
「アンナ様もですからね。旦那様は女性陣に振り回されていますよね」
「……なんとも言えないわ」
「愛情があるからいいと思いますよ。旦那様は、お二人のことをとても大事にしていますから、振り回してあげたらいいと思いますよ」
「ふふっ、そうだといいけど。ジョージア様は優しすぎるんだよね……」
「それは、アンナ様だけですよ？」


　私は首を傾げて、「それはないなぁ？」と呟いた。紳士的なジョージアは、無下にできないところがあるので、ダンスのお誘いなんて断らない。それは、私も同じなので、特に問題にしていないが、新婚当初の香水事件は記憶に残っている。あれは、公に連れまわされていたという事実があっても、腹立たしかった。


「アンナ様って、意外と嫉妬しますよね？」
「……意外とは余分だよね。今の夢のような生活があるのだから、嫉妬は普通にするよ？ジョージア様のこと、ちゃんと愛しているから。あまり、伝わっていないような気がするけど」
「それは、大丈夫じゃないですか？見てるこちらが恥ずかしいくらいですから」


　デリアが、飲み終わったカップを持ちに来てくれた。体が暖まったことで、程よい眠気がきたので、シーツのあいだに潜り込む。「おやすみなさいませ」とデリアが微笑んで、蝋燭の火を消した。私はそのまま眠りについた。
　その晩、夢にはジョージアが出てきたきがした。