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人様の迷惑だなんて

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 私は呆れているデリアにニコニコと笑いかけながら反論することにした。デリアはいつものことなので、慌てることなく次の言葉を待ち構えている。


「人様の迷惑だなんて、考えていないわ!私、公にお願いをするだけだし」
「……公も人様には含まれないのですか?」
「含まれないでしょ?私たちは運命共同体。どちらかが倒れたら、立ち行かなくなるわ!」
「アンナ様がいうことではありませんよ?」
「わかっているわ。それまでに、公も一人でなんとかできるようになってもらうから、大丈夫よ?」
「……私は、アンナ様の未来が続くほうがいいのですけど?」


 デリアは困惑した表情で私を見て、小さなため息をついた。私の未来を知るデリアに取って、努力を積み重ねているが、そのときがきたとき、無力で終わることは、私は知っている。


「それより、聞いて!」
「今度は何を考えたのですか?」
「仮面舞踏会をね?どうかなって……。たまには、自分が誰かを忘れて、朝まで踊りあかすの!」
「……アンナ様は健全な方ですからね。そうですよね?」
「……全く考えていないわけじゃないのだけど、そういうのは、もういい大人なんだから、自分で対処してくれればいいわ。私の目的は、今手に入れたい情報があるかどうか」
「それは、アンナ様じゃないとダメですか?ただただ、おもしろそうなだけで動こうとしていませんか?」


 デリアに指摘されて、私は考える。楽しいことをしたいが大幅に勝ってはいるが、下級貴族からの情報集めをしたいのは本当だった。特に南の領地以外のものの考えを聞いてみたかったのだが、筆頭公爵になった時点で、余程自分に自信があるものか、下心があるものしか私の周りに集まらなくなった。私は、そのあたりを改善したいと考えていた。男爵位
 はゴールド公爵が任命しており、なかなか近づきにくい。こういった催し物で、近づくしかないのだ。


「仕事熱心なのはいいですが、きちんと、将来のことも考えてください」
「考えているからこそ、今、今何じゃない?」
「アンナ様は唐突すぎます」
「そうかしら?まぁ、準備に余念がないのはおもしろいけど、そこで本音は聞けないと思います」
「そっか……そうよね。でも、私が動こうとすれば、弊害があるのも事実ですから」
「なるべく迷惑にならないように、きちんと準備はしておきます」


 デリアが子どもにするように、大きく二回頷いたので、まずは当たって砕けろと言われているようで、早速準備に取り掛かろうと思った。
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