ハニーローズ ～ 『予知夢』から始まった未来変革 ～

買いたいものⅣ

「いいのは見つかって？」


　声をかけると困った表情で私を見てくるダリア。候補は見つかったけど、最後の決めてに悩んでいるようだった。


「アンナ、どれがいいと思いますか？わかっているようでわかっていないようで……ここまで選んだけど、絞り切れません」


　目の前には10着の服が並んでいた。どれもこれもセバスに似合いそうな服ばかりで、私は思わず笑ってしまう。
　そんな私を少し睨むようにダリアは見てくるが、隣のアデルも私と同じように思っていたらしい。


「セバス様にはどれもお似合いの服ばかりですね？個人的には、特にこれが似合いそうだと思いますが、アンナはどう思う？」
「私もアデルと同じよ。どれもこれも似合うでしょうね」


　クスクス笑うと、真剣に悩んでいるのにというふうなダリアが少し諦めた表情をする。私はダリアに向けて、この中から、ダリアのお気に入りを5着買ったらどうかと提案をしてみた。1着をと考えていたらしく、何着も買うという発想がなかったようだ。


「言われてみれば、そうですね？私は、これとそれ……あと、こちらのが特に気に入っています。アデルの言ってくれたのもいいと思います。アンナはどれがいいと思いますか？」
「そうね。あまり着ない色だけど、ダリアのセンスが光る、そのグレー服がいいと思うわ！」
「本当ですか？では、それで……」


　ダリアは、店員に5着買う旨を伝え、包装してもらう。その待ち時間のあいだ、私もプラプラと店内を歩き回った。アデルを呼ぶと私の後ろについてくる。


「どうかしましたか？」
「アデルにも服を買ってあげるわ」

「いえ、いいですよ？」
「……そろそろ、同じ服ばかりで見飽きたのだもの。たまには、冒険をしてみましょうか？」


　私はアデルを見つめて、服のイメージをしていく。普段、私とお忍びに行くときは、私の選んだ服を着て来てくれるのだが、そろそろ同じ服ばかりで見飽きてくる。組み合わせを変えるようなことをしないので……買ったときのまま着ているのだ。


「……アンナの冒険は、正直怖いのですけど？」
「服を選ぶセンスは悪くないと思うわよ？今、着ているのも私が選んだものでしょ？」
「アンナの好みに合うようにと着ているので、そうですね？」
「私のあげた服で組み合わせを変えて着てくれればいいのに……マネキンのままだもの。おもしろくないわ」
「面目ないです」
「と、いうことで……決定ね！」


　私はアデルを見ながら、服を見ていく。どれもこれも、ハニーアンバー店へ納品されるものと同じように作られているので、布地も縫い目もｇとても綺麗だ。
　んーと唸りながら、結局3セットの服をアデルに渡して、あててみる。水色など淡い色と濃い色の服を見て、苦笑いしているアデルだが、口元は上がっているので、嬉しいのかもしれないと思うと、贈り物のしがいがあるなとほくそ笑んだ。