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ニマニマと
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「すみません、これを包んでもらえますか?」
店員が近くまでやってきて、アデルが指さしたネックレスと私を見比べている。そのあと、隣にいたダリアを見て、もう一度、ネックレスを見た。
店員からいえば、アデルが選んだネックレスは一緒に店に入ってきた私とダリアには似合わないものだ。明らかに恋人のように振る舞っている私へ贈るものではないと気が付いただろう。
少し困ったようにアデルへ違うものを勧めようかと店員が困っているのを見て、助け船をだすことにした。
「ねぇ、アデル。私にあのネックレスを買ってくれるの?」
一瞬、アデルがえっ?という表情をしたが、私の目を見て店員が別の物を勧めるだろうことに気が付いたようで、「そうだよ」と返事をした。すかさず、店員が止めに入ろうとしたところで、私は店員の口を開かせないように甘える。
「本当!私、あのネックレスが欲しかったの!さすが、私のアデルね?とても、私の気持ちをわかってくれているわ!嬉しい!」
「……そりゃ、アンナの好みは……わかているさ。ハハハ……もちろんだよ!」
ちょっと演技っぽい感じではあったが、私が気に入っていたというのを主張すれば、店員もそれ以上は強く言えない。アデルが欲しいといったネックレスを包んでくれるらしい。そのネックレスを持って首を傾げて店の奥へと消えていく。
「よかったね?リアンの好みのものが買えて」
「えぇ、アンナが気を利かせてくれたから」
「いいのよ。アデルにはいくらでも協力してあげるわ!リアンにも幸せになってほしいから」
「私で本当にいいのかと悩まない日はないですけどね……」
「それは大丈夫じゃない?男爵のことを考えているなら、気に病むこともないでしょ?」
「……それはわかっているつもりです。そういえば……受け取りですけど」
にまっと笑いかけると、アデルが若干引いている。お願いしたいことは、わかっているので、うんうんと二回頷いた。
「みなまで言わなくても、アンナちゃんにお任せあれ!こういうのは、メチャクチャ得意だから!」
胸を張ってトントンと二回叩くと、アデルは「はぁ……」と歯切れの悪い感じで返事をし、ダリアはクスクスと笑い始めた。私たちのやりとりがよほどお気に召したらしい。
「二人といるととても楽しいわ。ぜんぜん飽きない。今度、セバスチャン様とも、こんなふうに外へお出かけして見ようかしら?」
「それはいい案ね!セバス、きっと喜ぶわよ。ここしばらく、公宮に入り浸っているんでしょ?」
「えぇ、そうなんです。屋敷に帰ってくるんですけど、すぐに仕事へ向かわれて……」
「屋敷に帰ってくるだけ、セバスも成長したと思うわよ?」
「昔のセバス様なら、屋敷に帰りませんでしたからね?寝泊りは執務室でしたし」
アンバー領を立て直しているとき、そういうセバスを何度も見ていた。ダリアと結婚する前までは、それが日常茶飯事だったのだから、ダリアの顔をみたいと思って屋敷へ戻るセバスに人間味が出てきたのだと笑う。
「お待たせしました!」
店員に声をかけられ、私はパッとアデルの恋人役へと切り替え、大袈裟に喜んで用意してくれた物に手を伸ばした。支払いはアデルがするので、私はただただ嬉しそうに包まれたネックレスをダリアと二人でニマニマしながら見たのであった。
店員が近くまでやってきて、アデルが指さしたネックレスと私を見比べている。そのあと、隣にいたダリアを見て、もう一度、ネックレスを見た。
店員からいえば、アデルが選んだネックレスは一緒に店に入ってきた私とダリアには似合わないものだ。明らかに恋人のように振る舞っている私へ贈るものではないと気が付いただろう。
少し困ったようにアデルへ違うものを勧めようかと店員が困っているのを見て、助け船をだすことにした。
「ねぇ、アデル。私にあのネックレスを買ってくれるの?」
一瞬、アデルがえっ?という表情をしたが、私の目を見て店員が別の物を勧めるだろうことに気が付いたようで、「そうだよ」と返事をした。すかさず、店員が止めに入ろうとしたところで、私は店員の口を開かせないように甘える。
「本当!私、あのネックレスが欲しかったの!さすが、私のアデルね?とても、私の気持ちをわかってくれているわ!嬉しい!」
「……そりゃ、アンナの好みは……わかているさ。ハハハ……もちろんだよ!」
ちょっと演技っぽい感じではあったが、私が気に入っていたというのを主張すれば、店員もそれ以上は強く言えない。アデルが欲しいといったネックレスを包んでくれるらしい。そのネックレスを持って首を傾げて店の奥へと消えていく。
「よかったね?リアンの好みのものが買えて」
「えぇ、アンナが気を利かせてくれたから」
「いいのよ。アデルにはいくらでも協力してあげるわ!リアンにも幸せになってほしいから」
「私で本当にいいのかと悩まない日はないですけどね……」
「それは大丈夫じゃない?男爵のことを考えているなら、気に病むこともないでしょ?」
「……それはわかっているつもりです。そういえば……受け取りですけど」
にまっと笑いかけると、アデルが若干引いている。お願いしたいことは、わかっているので、うんうんと二回頷いた。
「みなまで言わなくても、アンナちゃんにお任せあれ!こういうのは、メチャクチャ得意だから!」
胸を張ってトントンと二回叩くと、アデルは「はぁ……」と歯切れの悪い感じで返事をし、ダリアはクスクスと笑い始めた。私たちのやりとりがよほどお気に召したらしい。
「二人といるととても楽しいわ。ぜんぜん飽きない。今度、セバスチャン様とも、こんなふうに外へお出かけして見ようかしら?」
「それはいい案ね!セバス、きっと喜ぶわよ。ここしばらく、公宮に入り浸っているんでしょ?」
「えぇ、そうなんです。屋敷に帰ってくるんですけど、すぐに仕事へ向かわれて……」
「屋敷に帰ってくるだけ、セバスも成長したと思うわよ?」
「昔のセバス様なら、屋敷に帰りませんでしたからね?寝泊りは執務室でしたし」
アンバー領を立て直しているとき、そういうセバスを何度も見ていた。ダリアと結婚する前までは、それが日常茶飯事だったのだから、ダリアの顔をみたいと思って屋敷へ戻るセバスに人間味が出てきたのだと笑う。
「お待たせしました!」
店員に声をかけられ、私はパッとアデルの恋人役へと切り替え、大袈裟に喜んで用意してくれた物に手を伸ばした。支払いはアデルがするので、私はただただ嬉しそうに包まれたネックレスをダリアと二人でニマニマしながら見たのであった。
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