ハニーローズ ～ 『予知夢』から始まった未来変革 ～

お忍び視察Ⅳ

「どこへ向かう？」
「まずは食堂へ向かいましょ！」
「どうして？」
「食堂はいろんな人が集まってくるから、話を聞くにはいいのよ」
「アンナは、話に混じらず、ずっと耳をそばだてている感じだよね？」
「そうね。それでも結構な情報が入ってくるから」


　ダリアが感心したように私を見ている。私と関わりが少ないダリアに取って、私はビックリ箱のような存在なのであろう。


「どこで、そんなことを学ぶのですか？」
「……ダリアさんは、知らない方がいいと思いますよ」
「どうして？」
「アンナは、一筋縄ではないということです。昔から、きっとこんな感じで、出歩いていたのでしょ？」
「うん、そうよ？公爵令息を引き連れて、街を練り歩いていたわ。私、すごく有名なおてんば娘だったのよ」
「……想像が出来てしまうことが怖い」


　アデルがブルっと体を震わせるので、睨んでおく。ダリアは驚いた後、にこやかに笑っていた。ダリアの方も、私の小さいころをぼんやりと想像が出来たようだ。そんなに、想像しやすいだろうか？と思って考えたが、アンジェラが私の小さいころとそっくりなので、想像しやすかったようだ。


「アンジェラちゃんが、アンナにそっくりなのね。旦那様と一緒にいるところをよく見ていたけど、そっか……アンナの方にね？」
「ダリアさん、それ以上は……。将来が怖すぎて……」
「どうして？アンナのような人になるなら、素敵じゃない？」
「きっと……もっとすごい逸材になるに決まっています。なんたって……」
「あぁ、なるほど。厄災と繁栄の象徴だからか。アンナはどう思っているの？」
「私は、元気にすくすくと育ってくれればいいなって思っているわ。何にも囚われず、何にも邪魔されず。強い子になって欲しいの。どんな未来が待っていようとも」


　アンジェラを想いながら話すと、二人とも頷いている。『ハニーローズ』の存在や過去の功績などは知る人も多いだろうが、アンジェラの身に起こる出来事を知る人は少ない。そして、私の身に起こることも。
　いつまでも、守ってあげられたらいいのにと、心の中ではずっと思っているが、そのときが来るまではわからない。
　願わくば、アンジェラを始め、たくさんの人の幸せだが、黒い影はいつまでも付きまとう。この先のことを思えば、心配が尽きることはないが、それでも、少しずつ強くなっているアンジェラが頼もしい。
　それと同時に、アンジェラの周りが少しずつ強くなっていっていることも同時に感じていた。国を守るアンジェラやその周りに期待をしていた。