ハニーローズ ～ 『予知夢』から始まった未来変革 ～

第1383話 新しい風

　布工場の見学会も大成功に終わった……はず。ナタリーが作っていたコルセットもどきをステイは今日も付けていた。
　私は朝食を食べるためにステイの席に近寄った。


「おはようございます、ステイ様」
「おはよう、アンナリーゼ」
「そのコルセットもどき、気に入りましたか？」
「えぇ、とっても。私はコルセットをしていないけど、これならおしゃれとしてつけていられるでしょ？」
「確かに……コルセットは見せるものではないですからね」


　その点、このコルセットもどきは、見せるためのものだし、さりげなく、ウエストのあたりを引き締めてくれているようにもみえなくもない。なんだか、とても画期的なものにも見えてきたが、私は、やっぱり遠慮したい代物だった。


「ステイ様は、今日出発でしたか？」
「えぇ、そうよ。視察にでると、あっという間の時間だったわ」
「確かに……領地で動き回っていると、時間ってすぐに過ぎてしまうんですよね」
「それは、アンナリーゼが忙しく動き回っているからでしょ？」
「そうとも言うんですが、私の仕事のうちじゃないですか？領地を回ってみるのって」
「この国の領主の内、どれくらいの人数がアンナリーゼのように出歩いているか、わかったものじゃないわ！」
「そうでもないですよ？若い領主に変わっているところは、積極的に領地を出歩くようにと公から話があったので、それなりに出歩いていると思いますよ？」
「なるほど、それもアンナリーゼがもたらした新しい風と言うことね。支援が必要な場所へ物資が届くようにと考えられているのね」


　ステイはため息をついた。さっきまでのはしゃいでたステイが身を乗り出しているのを見て、「おかしいわね」と笑うと、ステイも笑い始めた。


「変ですか？」
「アンナリーゼらしくていいんじゃない？」
「そうですか？ならよかった。一応、これでも、アンバー領の領主様は～みたいな話をチラ聞いてくれるんですよ。少し恥ずかしくて」


　頬を押さえながら、恥ずかしがっていると、料理が運ばれてきた。


「アンナリーゼ」
「何ですか？」
「この領地のこと、知れてよかったわ。あなたについてきて正解だった。次もこんなふうに視察をすればいいのかってわかったから助かったわ！」
「ステイ様、ここでしたお話は、化粧と一緒に彼女らに忘れていきますから、あまり深く考えず、いい勉強になったなと確認ください。他の領主が協力敵だとは言い切れませんから」
「わかったわ。そんな気遣いまでありがとう。じゃあ、そろそろ準備をしないといけないようだから、席を外すわ」


　あっさり私の意見に頷いた。荷物は明らかに増えていませんか？と訪ねると、大丈夫だとはいえ、大変だなと私は惨めな白鳥の水有為を探さないといけない……。返ってきた仏壇だけ掃除したら帰るよとだけ伝えた。